陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「トータル・リコール」

2011-04-04 | 映画──SF・アクション・戦争
屈強なタフガイと女性が赤茶けた砂漠に放り出されて、目を灼かれて悶絶する。子どもながらに恐ろしいと思ったシーンでした。その映画のタイトルも結末も知らぬままにいましたが、今回、はじめてそのすべてを観ることが叶いました。

1990年のアメリカ映画「トータル・リコール」(原題: Total Recall )は、アーノルド・シュワルツェネッガー主演のSFアクション。火星へのヴァーチャルトリップをした男がたどる悪夢のような冒険の日々を描いてます。

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八年連れ添った妻と暮らす建築技師のダグ・クエイドは、毎晩、同じ夢にうなされていた。謎の女と火星旅行をし、砂漠に放り出されて窒息死するという悪夢。夢の正体を知りたいと願い、クエイドは記憶を模造して旅行させるというリコール社のパッケージツアーに応募する。しかし、旅行は失敗し、クエイドに隠されていた記憶が蘇ってしまう。

主人公に驚くべき能力と記憶が埋め込まれていて、というのはいまでは珍しくないパターンなのですが、とにかく本作は一歩先がまったく見えないジェットコースター展開の連続。スーツケースのビデオモニタに映るかつての自分から、自身がハウザーという名の凄腕諜報員だったと知ったクエイドは、一路、火星へ。しかし、妻であったはずのローリーや、ハウザーの上司であった火星植民地の支配者コーヘイゲン長官の手下どもに命を狙われます。
やがて、夢のなかの運命の女メリーナと巡り会い、植民地支配に抵抗するレジスタンスの頭領にも引き合わされるのですが…。

とにかくどれが味方でどれが敵なのかまったく分からない。
クエイド本人もこれが捏造された夢なのか現実なのかが分からなくなる。SFにありがちな黒幕との対決が、あっさりとした肉弾戦で終わってしまうのがお約束とはいえ、最後まで目が離せない映画ですね。主人公は仕組まれた記憶に従わず、虐げられた者に共感し行動に出ようとする。安易にハッピーエンドが掴めない。夢オチだとも匂わせない。90年代のSFらしい雰囲気もいいです。
それにしても近年のSFはミュータントは廃れた感があるけれど、異形の者に対する寛容は、独立戦争、南北戦争を経たアメリカならではの発想といえたのでしょうか。

監督は「氷の微笑」「インビジブル」のポール・ヴァーホーヴェン。
共演はシャロン・ストーン、レイチェル・ティコティン、ロニー・コックス。
原作は「ブレードランナー」で知られるフィリップ. K. ディックの小説『追憶売ります』

(2011年4月3日)

トータル・リコール - goo 映画



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3 Comments

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リメイク版 (iina)
2014-01-06 13:12:24
万葉樹さん宅は、ブログのカテゴリーが豊富です。
去年に、リメイク版が公開されました。
やはり、オリジナルのシュワルツェネッガー主演『トータル・リコール』にかないません。
http://blog.goo.ne.jp/iinna/e/6e29b9f17b130ffcc0d11af38412cfa8

gooもgaiax系簡易ホームページを後発で開設したのですが、いまは閉鎖してブログにしています。
当然にgooサイドも、コメントが自動的に双方に残る機能を承知であり提案しましたが、使う意思はないとの回答でした。
返信する
名作はなぜリメイクされるのか? (万葉樹(陽出る処の書紀))
2014-01-07 07:35:19
おはようございます、iinaさま。
古い記事を探し出してのコメントありがとうございました。URLもアクセスしやすくて助かります。

シュワちゃんにはサスペンス、アクションが似合いますよねえ。「ローマの休日」はオードリーなくして成り立たず、三船敏郎なかりせば「七人の侍」はなく。名作は名優の代名詞みたいなものですね。それ抜きにしては語れませんよといったところ。

「トータルリコール」の新作リメイクははじめて知りました。内容も書き替えですか? ひょっとしたら旧作を知っていた視聴者の記憶も書き替えするため? リメイクというより翻案みたいなものでしょうかね。昔のよいものをリスペクトするあまりに、次世代の享受者が表現者となり、その時代の価値観を加味しながら、二次創作小説のようにカスタマイズするのはよくあること。

旧作がディスク世代の記憶の切り売りをするビジネスの時代のしろものならば、新作版はさしづめ、いくらでも情報が流れ、時々刻々、更新され変容していくネット時代のメディアに即したものであろうか、と邪推します。人類は火星にいくより、宇宙に行くより、どこまでも広がる仮想空間を開拓してしまったのでありますから。

にしても、あの恐怖の顔面分裂シーンがない「トータルリコール」なんて、「トータルリコール」じゃあありませんよね。お怒りごもっとも。

>もし、記憶が買えたら、夢みたいなことではなく、六法全書や世界の論文を総て記憶してみたいiina~。

それほんと、そう思いますね。
でも受験ビジネスは全滅でしょうし、教師は職を失い、威厳も失います。でも、憶えていることとと、それをどう受けとめ、行動につなげるかは別もの。コンピューターは膨大な世界数々の名画を記憶し、その色彩やタッチ、画家のデータを瞬時に検索し引き出すことができます。それでも、見知らぬ子どもの絵をみて、それいいね、と言えるのは人間だけの能力です。

SFが古くなっても、作家の想像力のままの未来が実現されていなくても、いまなお魅力的なのは、そのような荒唐無稽な世界を編み出す創造を、ロボットがまだなし得ないからではないでしょうか。

こんなことイイナ、できたらイイナ、のドラえもん世界があったらいいですけど、いいな、の状態でとどめておくほうが、人間ってがんばれそうですね。


http://blog.goo.ne.jp/yorozu-haki/e/7c639022fe30407e3744dac2cf5a1b21


ところで、「アーティスト」は未見ですが、知人によるとなかなかの注目作だそうで。機会あれば観てみたい一品です。では。

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コンビニのようなブログ (万葉樹(陽出る処の書紀))
2014-01-07 07:44:24
ネットはブログがすでに浸透してからのデヴューでしたので、ブログ前時代にそんな歴史があるとは知りませんでした。いまではホームページも少ないですかね。

ブログのジャンルが豊富なのは、専門店を出すより、コンビニで浅く広くのほうが管理しやすいからです。多くの方にふらりと立ち寄ってもらいたいように、入口を広くしてるつもりですが。基本的にガレッジセールのようなマニアックなネタから発生してますので、記事によって温度差が激しいのはご愛嬌ということで。
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