陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「ミュージック・オブ・ハート」

2009-11-21 | 映画──社会派・青春・恋愛
1999年の映画「ミュージック・オブ・ハート」は、スラム街で子供にヴァイオリンを教える女性音楽教師の起こした奇跡の物語。実話に基づくものはたいがい、事実を淡々と並べただけでおもしろみに欠けるのですが、これは感動しました。
特に女性に観てもらいたい作品ですね。

夫に捨てられて傷心のロベルタ・ガスパーリは、知人のブライアンの紹介で、イーストハーレムの臨時教員職を得る。
スラム街の子供たちにヴァイオリンを教えるのが彼女の役目。教え子たちはとうしょ反抗的で、親も音楽に理解を示してくれない。だが、複雑な家庭環境に育った子供たちは、ロベルタの指導のもと、音楽でひとつになっていく。

彼女の音楽クラスは十年続き、三校で入学者を争うほど人気を集めるほど。だが、市の予算削減のあおりを受けて、クラスは閉鎖、ロベルタも解雇の危機に。
ロベルタは知人に働きかけて、資金を募るための救済コンサートを開こうとする。一流の演奏家が参加してくれるまとない機会だったが、なんと会場が使用できなくなってしまった…。

と、実話とは思えないほど、波瀾万丈な女性音楽教師の辿った道のり。
子供とのレッスンの大変さも去ることながら、彼女のシングルマザーとしての苦しみも相当なものです。夫は親友と浮気して家出。幼い息子ふたりは、離婚のせいで荒れる。そして、職を紹介してくれたボーイフレンドのブライアンは、遊び人で彼女と本気で結婚しようとなんてしない。
しかし、終盤に、ロベルタを理解してくれそうな再婚相手の男性も登場(このあたりはご都合主義的ですが…)

そして、頓挫していたコンサートも、大物音楽家の助力によって、カーネーギーホールで実現。
かつて反抗的だった教え子が立派な大人になって再会したり、二人の息子もぐれずに成長し長男はチェリストにもなっている。
指導の際はひじょうに手厳しく、とても嫌な女性の印象が漂いますが、音楽のレッスンを知っている人ならばあたりまえのこと。ロベルタは遅刻者を叱責して追い返したりはしますが、鞭でひっぱたくなど暴力的なことはしません。むしろ、いま日本でこういう教え方をすれば、保護者がどなりこんでくる状況が信じられないですね。
むしろ、夫やボーイフレンドなどにひどい仕打ちをされ裏切られているのに、酒や他のことに溺れないで、臨時教師という不安定な立場で意志を全うした強さに惹かれます。

主演は「めぐりあう時間たち」「カーサ・エスペランサ~赤ちゃんたちの家~」のメリル・ストリープ。失礼ながら男を魅了するような美人顔ではないですが、逞しい生き方をする女性を演じたら逸品のアカデミー賞常連の女優。「クレイマー、クレイマー」もそうですが、男運がない女性役が多いのかな?
ジャネット校長役の黒人女性は、アンジェラ・バセット。「コンタクト」で、大統領の秘書官で、ジョディ・フォスターが夜会用のドレスがないと相談するシーンが印象に残っています。

監督は「エルム街の悪夢」のウェス・クレイヴン。

アイザック・スターン、アーノルド・スタインハート、イツァーク・パールマン、マーク・オコーナー、ジョシュア・ベル等の著名な演奏家が出演していることにも、注目。

ミュージック・オブ・ハート(1999) - goo 映画

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