陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「友だちのうちはどこ?」

2012-04-30 | 映画──社会派・青春・恋愛
子どもの頃、ささいな過ちが重大な罪のように思われて苦しんだことはなかっただろうか。
そんな気持ちにさせてくれるのが、1987年の映画「友だちのうちはどこ?」

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イラン北部の寒村の小学校。
ノートがなかったため宿題を紙切れに書いてきた少年が、先生にこっぴどく叱られた。従兄の家に置き忘れていたのだと訴えても聞く耳持たない先生は、今度ノートに書いてこなかったら退学だと脅す。少年は泣き出してしまう。
その少年の隣だったアハンマドは、その日の帰り、なんと間違ってその子のノートも持って帰ってしまったことに気づく。友だちのために、ノートを返しに行こうとするアハンマドだったが、好事魔多し。

純粋な少年の行く先をじゃまするのは、すべて理解のない大人たち。
母親や祖父は用事を言いつけ、友だちが困るからと理由を話しても、口答えを許さない。とちゅうでノートを破られそうになったり、道もきちんと教えてくれなかったり。道案内を買って出たいっけん人の良さそうなおじさんは、じつは自分の製作したドア自慢を聞かせたいだけだった。
けっきょく、日がとっぷり暮れて辿りつけなかった彼は、どうするのか。あきらめたのか?
答えはなぁんだ、そんなこと、と思うような結果。けれども、主人公にしてみたら、たいへんなことだったはず。
それにしても、この先生も、けっこういいかげんに採点してるんだなと思わざるをえない。

淡々とすすんでいくなにげない物語であるが、裏表のない子供の優しさがしみじみと伝わってくる良作。子供の目線に降りて、その心情をつぶさにとらえることに成功している希有な作品。ラストのカットがなんともしゃれていて、先生に叱れるのではと脅えていた少年を、さぞや笑顔にしたことだろう。

監督は「明日へのチケット」「桜桃の味」のアッバス・キアロスタミ。デビュー作「パンと裏通り」を思わせるシーンもあり。
1987年テヘラン映画祭で最優秀監督賞など受賞。また89年には、ロカルノ国際映画祭で五つの賞を受賞するなど、イラン映画界の巨匠の名をあたえた代表作。

(〇九年八月二十六日)

友だちのうちはどこ?(1987) - goo 映画

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