陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

アニメの殿堂、その賛否(三)

2009-06-11 | テレビドラマ・アニメ

国立メディア芸術総合センターの擁護論者の著名漫画家は、いわば御用聞き文化人で、国家におもねっているような気がしてならない。(下世話な憶測だが、賛成派は館長にでもなりたいのだろうか)
かつ、すでに指摘されているが、この国立メディア芸術総合センターなるものの建設は、01年12月に施行された文化芸術振興基本法(平成13年法律第148号)に発し、07年2月9日に閣議決定された「文化芸術の振興に関する基本的な方針」に基づいて、始動した企画である。
これと抱き合わせなのが、児童ポルノ禁止法案や改正案で、ポルノコミックやアダルトゲームの単純所持も規制対象とする動向。紀伊国屋書店などはこの施行を危惧して、十八歳未満の性描写、裸があるコミック(『バカボンド』『ベルセルク』『あずみ』)を店頭から撤去したことが話題にもなった。

要するに政府は国の文化のお選別を図ろうとする腹づもりだ。なにせ、児童ポルノや女性を陵辱するアダルトゲームに関する規制の波は世界的に高まっている。

「社説:児童ポルノ 世界の批判を聞こう」(毎日jp 09年6月9日)

記事にもあるようにこの規制強化は、単純所持の濡れ衣をかけられる可能性、表現規制のデッドラインをどこまで設けるか、など課題を多く残している。
自分もアニメは好きなので規制強化を危ぶむが、かといって無碍に反対もできない。
たしかに性犯罪、児童虐待、DVの元凶をサブカルチャーに求めるのは酷だと思う。とはいえ、犯罪者とそうした文化のつながりが一概に否定できないのは、たとえば児童や女性への暴力が愛情の裏返し、のような作品に慣れっこになった人間が、犯罪は犯さずともそれを容認するような風潮を生み出しているからだ。ついでにいうと強熱的な作品ファンに命の危険を脅かされるような言動をされて、アニメや漫画に嫌な偏見をもってしまった者もあるのではないか。
かつて、この児童ポルノ法には表現・思想の自由という点で反対だったが、私はいま全面否定できなくなった。

マンガ 無自覚の刷り込み 子供の意識に大きな影響(MSN産経ニュース08年8月28日)

記事にあるように、犯罪を助長するような漫画と児童の発達との関連性が、学術的に明らかにされ承認されれば、瞬く間に教育的配慮(この言葉は某教育大学の事件で悪くつかわれてしまったが)によって、規制の網は広がるだろう。子どもたちは身近な大人よりも、漫画やアニメのキャラクターに人間関係の縮図を見るようになったからだ。
だが、これについての結論を下すのはやめにしておく。誰しも自分の好きな作品を有害コミック呼ばわりされるのは嫌だろうし、愉しみを国家に奪われるのは無念でならないだろうから。

ところで、国立メディア芸術総合センターには反対の意を変えることはないが、こうした施設はやはり民間団体や企業法人で運営するのが好ましく思われる。しかも先例があるので、次回はそれを紹介しよう。


【関連記事】
「アニメ美術館=国立漫画喫茶?」(5月15日)
「アニメの殿堂、その賛否(一)」(6月10日)
「アニメの殿堂、その賛否(二)」(6月10日)



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