陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「記憶の棘」

2014-01-23 | 映画──社会派・青春・恋愛


2004年のアメリカ映画「記憶の棘」(原題:Birth)は、亡き夫の生まれ変わりとされる少年と、美しき未亡人との恋の顛末。

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十年前に最愛の夫ショーンを失って以来、独り身のアナはすでに三十路。
何年も婚約を待ってくれていた男性ジョセフのプロポーズを受諾。その婚約パーティーで、なんとショーンの生れ変わりだと名乗る、十歳の少年が現れる。少年はジョゼフと結婚しないで頼み、以後、アナの周囲にまとわりつく。夫しか知り得ないはずのことを語る見ず知らずの少年に、アナは戸惑いを隠せない…。

転生した年の差カップルという設定、べつだん珍しくはないわけですよね。
年齢差だけでなく、経済格差もある。少年の家族は貧しい。ゆえに逆玉の輿を狙った少年の狂言かもしれない。でも、女がそれを信じてしまうのは、子供の純真さにほだされてか、それとも再婚に迷いがあるためか。

アナはショーン少年に夫の面影を重ねはじめ、想いを深めていく。
そんな態度に業を煮やしたジョセフとの関係もついに破綻。アナの家族も使用人も誰も信用していないのに、アナだけがその愛に本気になって溺れていってしまう。それはあきらかにやっと第二の幸せを掴みかけた彼女にとってはマイナスの選択であったはずなのに。正直、このあたりからかなりヒロインに危険な香りが付きまとう。

結末をどう解釈するかによって感動が分かれるかと思いますが、最愛の伴侶をうしなった人間のペーソス、その心の傷を癒そうとしても癒し切れない婚約者の呻き、どう考えても釣り合わない、法律にさえ抵触する禁断の恋愛に気を揉む周囲の視線、などなど人間の心理状態をていねいに追ったものとしては見る価値があるかと。あえて説明に頼らずに言葉を少なくしたために叙情を想像させるつくりになっています。女と男の、少年と女の純愛ともいえるし、歪んだ愛情ともいえます。輪廻であったのかどうかも、あいまいなまま。前世の記憶抜きにしても、障害があっても結ばれるというならそれは美しい愛に高まっていくはずなのですが、最後はあまりにも現実に落ちていく。

監督はジョナサン・グレイザー。
出演は「めぐりあう時間たち」のニコール・キッドマン、名子役と呼び声高いキャメロン・ブライト、「ナイロビの蜂」のダニー・ヒューストン。
筋書きはあまりひねりがないですが、主演のキッドマンを愛でて楽しい映画ですね。もう少し髪が長い方が好きでしたけど、その分、彼女のささいな表情に表れる心の揺れがよく見てとれますね。オチはともかくとして、非常に静謐な穏やかな音楽が流れるだけに、感情の冷静さと情熱がひたひたと押し迫っていく良作。

(2011年9月28日)

記憶の棘 - goo 映画



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