「かなりやる気がなさそうだね。このお嬢さんたち」
「やっぱり、そう思います? 」
カズキは眉をしかめて、液晶モニタの向かって右端を指さした。
「ああ、そう思うよ。この右隣の女性は、一巻しかまだ観てない、観てない、とさかんに強調してるし。隣のふたりの巫女服のコンビは、おたく男子向けの萌えアニメだけど、女の子には…と、くすぐったげに言葉を濁しているじゃないか。宣伝する気がまるでないだろう」
ユキヒトはおおげさに肩をすくめて、皿を載せでもしているように両手のひらをあげた。
「まあ、常識ある人には、例の八話あたりがネックなんじゃないですかねぇ~。精神のハードル高いですよねぇ、あれは。う~ン、かなりねぇ~。規制にひっかかりそうですねぇ~」
「…あれがマニアには、辛抱たまらんというのに、残念だな(こそっ)」
「え?いま、なにかおっしゃいましたか?」
「いや、なんでもない」
「ま、たしかにね。ちょっと、理解されにくいですよね~。いくら好きだからって、好きな娘の唇うばっちゃったり、寝顔盗み見したり、盗聴したり、自分の衣裳(パジャマ、ワンピース、メイド服、巫女服)でお着替えごっこコスプレさせたり、裸にひん剥いたり、髪留め盗んだり、ライバルの男のロボ奪ったうえに射殺そうとしたり。何名かを石にしたり。あげくの果ては、うっかり地球まで壊したり。最後にゃ、刀ぶんぶん振り回して恥ずかしい台詞で大告白しちゃうんですもんね~(詳しくはこちら参照(笑))」
「君ね、さりげなく姫宮くんを愚弄してないか?」
「いやだなぁ、先生。僕は最強ヒロインとして姫宮さんのことは応援してるんですよ。なにせ、彼女ががんばってくれないと僕だって困ります。幼なじみに心揺れちゃう、瞳うるうるのかわいい仔犬ちゃんを繋いでおいてくれないとね」
たくらんだような笑みをこぼす青年である。ユキヒトの匂わせた気持ちについては、神主は聞かなかったことにした。いつも、さんざんことあるごとに口にしている想いだったから。
「しかし、姫宮くんの印象はそんなに悪いのかい?」
「一部の熱狂的なファンには大ウケですけどね。海外の視聴者でも、免疫ない人は、姫宮さんの行動が理解できないそうです。こういえば失礼ですけどね、どうみても、彼女、犯罪者ですよ。暴行罪、窃盗罪、傷害致死罪。そして、国家転覆罪。破壊活動に従事したわけですから、服役してもおかしくはないな~。まぁ、どうせ姫宮家の権力でバカ高い保釈金はらったり、裁判員を裏で買収したりして逃れてそうですけどね」
「たしかに刑法に照らせば、いけないことはしているが…」
「そうですよねー。それに比べたら、僕のしてるおちゃめな冗談なんて、かわいいモンですよねー」
「いや、君のは、シャレにならんくらい、もはや重罪だよ(真顔で)」
ユキヒトは鼻歌をはずませて、聞かぬふりだ。のれんに腕押しした、その腕をこれ以上絡めとられるのも嫌な気がして、カズキも言葉は継がない。
「姫宮くんの罪かね…しかし、彼女たちは、もう辛い思いはしているだろう?」
「そうですね…たぶん百年も千年も前から」
「それにぬきさしならぬ運命あって、したことだ」
「たしかに誰も彼女を裁くことはできないかもしれないですね。彼女自身が、自分を裁いてるわけですから」
「だとしたら、我々が動かねばならんな。姫宮くんの身の潔白を知らしめねば。彼女だって、理由があって闇に堕ちたのだと教えてあげなければ」
「ということは、先生。もしや?」
「彼女たちにかわって、ぜひとも販促活動に乗り出そうじゃないか」
「おお、先生がやっとこさ本気になりましたね~。いい傾向です。すばらしい」
「ま、半分乗せられたような気もするがね」
苦笑して腕組みする師匠を、弟子は爽やかな笑みをうかべてみあげた。
「ま、でも。姫宮さんの最大の罪といえば」
「なんだい、まだ彼女に責めがあるのかい?」
「いいえ。とんでもない。ただ、美しさはつ~み~。微笑みさえつ~み~♪ですよねー」
「そのネタ、いつか言うんじゃないかと思ってたよ(ガックリ)」
【目次】神無月の巫女二次創作小説「大神さん家のホワイト推薦」