やおよろずの神々の棲む国でⅡ

〝世界に貢献する誇りある日本″の実現を願いつつ、生きること、ことば、子育て、政治・経済などについて考えつづけます。

公立小見聞録23 K小3~学力が高かった理由2~

2011年04月25日 | ~h27 教育/小学校

K小学校 その3
■学力が高かった理由 2
※「学力」の考え方や種類はいろいろあるので、過去記事:「子どもの学力は落ちているのか?」を参照してください。

 前回は「1安心できる安定した環境」について説明した。これから順次「小規模校の短所を克服した学校づくり」「小人数学級での効果的な学習~総合的な学習の充実~」「教職員の自覚」について述べる。

2 小規模校の短所を克服し、長所を生かした学校づくり ~「縦割り班」の徹底活用~

・小学校の小規模校とは・
・・佐賀県で「小さな学校」と言っているのは、全校で普通学級が6学級以下の学校のこと。(「特別支援学級」をいれると7学級の学校もある)
 6学年あるのに「6学級以下」とは不思議に思われだろうが、学年児童が1ケタの場合などに複数の学年をまとめて作る「複式学級」という制度があるので、例えば「全校で3学級」という学校もあるということ。
 ちなみに、佐賀県でも小規模校の多い唐津地区(唐津市+玄海町)の「小さな学校」は、最近の統廃合で減ってはきたが、昨年度は、43校(分校も含んで)のうち半分以上の26校にのぼる。

・小さな学校の短所(傾向)・・・毎年の「学級編制変え」がないので6年間同じ学級集団で過ごす。人間関係が固定化(序列化)しがちなので、《競争意識が働きにくい》《児童間の学びあいや刺激が少なくなる》傾向があるとよく言われている。その場合には、学力向上には不利な条件になる。
 特に、k小のような《学年平均10人ほどの学校》ではなおさら要注意。

・固定化の弊害を予防し、個々人の成長を促すために、20数年以上前から「子供主体の縦割り班活動」を徹底活用しつづけた。

《4つの縦割り班(例)》・・・各班約14名。各学年から2~3名。編成の観点:高学年(5・6年)のリーダーシップ・男女比率・走力などについて班間の相違を少なくする。指導教員は各班2名ほど。

《活用場面》・・・毎日の掃除、運動会(実行委員会+班対抗方式)、創作劇発表会(台本創作から、稽古、道具作成などほとんど子供たち自身で行う)、共遊の時間(班で計画して集団遊びをする)など…要するに、全校でなにかするときにはほとんどこの班を単位に活動した。

《効果》
 
高学年児童のほぼ全員の《人格的成長》・・・学級単位のなかではいわゆる《目立たない子》《浮かばれない子》であっても、班の中ではみんな《お兄さん・お姉さん》として頼られるし、各人の大事な役割もある。高学年の子はみんな活躍が保証(強制)されている。ぼやぼやできないから、自主性、創造性、リーダーシップなどが鍛えられていった。また、小さな子供たちのこともよく理解しないと活動がうまくいかないので「思いやり」も育った。
 交流の活発化・・・いわゆる「学級王国」「閉鎖的学級」にならず、休み時間や放課後、あるいは休日などでも、学級・学年のわくを超えたさまざまな交流が活発に行われていた。子供どおしでかなり刺激し合っていたと思う。

《指導者の役割》・・・班活動の原則は《計画作成段階から最後まで、できるかぎり子供を活かす》こと。したがって「支援」が多かったが、当然状況により「指導」もした。

 ※「子供が自主的に動くから教員は楽だな」と思われる方もいらっしゃるかもしれないが、実は、この方法は、「教師主導の方法」に比べると3~4倍の活動時間と指導者の手間がかかる。例えば「活動計画」を教師が作る場合と高学年の子供が作る場合の違いを考えてほしい。
 子供主体の場合、活動の最初は「班のリーダー(高学年児童)に活動計画をたてさせる」ことから始まる。しかし、訓練されていない普通の子供は《ちゃんとした計画》を立てることはできない。計画を完成するには、まず目的・目標を設定し、それを達成するための方法を決め、人・物・情報などの動きを組み合わせた段階的行動計画を作らねばならない。
 慣れた教師が自分でするとすぐできるだろうが、この子供主体の方法の場合は、まず《子供に「活動計画とはどんなものか」教える》ことから始めなければいけない。
 今の中・大規模学校の現状からみればおそらく《気が遠くなるような仕事》だろう。子供は毎年変わるのだから。

 このような「子供主体の活動」は昔から中・大規模校では難しかったし、今年度から新指導要領(「知識詰め込み学習」復活の可能性が高い)の実施が始まった今の学校ではなおさらだろう。
 この小規模校でもなかなかできなかったことがK校で20数年継続できたのは、初期に、とても粘り強い教師たちが努力して受け継ぎ続けたからだ。そして、3、4、5年と続けていくうちに校風となって、子供たち自身が受け継ぎ始め、地域で支持されたからだ。(残念だが、子供が減りすぎて、K校は昨年度から隣の学校に統合された。) 



~次回、「小人数学級での効果的な学習~総合的な学習の充実~」~

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