咆哮

負け犬の遠吠えかも…
最近「負け犬」が流行り言葉になってしまったので「落ち武者の歯軋り」とした方がいいのかも…

対談:今風戦争映画「ジャー・ヘッド」の深み(1)

2006年03月03日 08時24分00秒 | 映画
私のHPの掲示板は映画サイトでは不思議なくらい映画の話題が上がらないのですが(笑)今回珍しく掲示板で映画の話題で盛り上がりましたので、対談風に編集し直しまとめてみました。
ツリー参加のぼのぼのさん、ケイケイさん、お茶屋さんには感謝です。m(_ _)m

・第一章:傑作なのに違和感が生じた訳

<ぼのぼの>
劇場はガラガラですが『ジャーヘッド』は傑作です。
やはりサム・メンデスは本当の天才です。『アメリカン・ビューティー』『ロード・トゥ・パーディション』に続き、この人の監督作にハズレ無し。
好き嫌いは分かれる映画だと思いますが、見逃し厳禁。
たとえ気に入らなくても何かしら考えさせられるものを持った映画だと思います。

<シューテツ>
ぼのぼのさん、こんばんは。紹介ありがとうございました。
これは昨日の夜観て来ました。
一昨日の『ミュンヘン』の後、直ぐにこの作品を観たのは正解でした。
ぼのぼのさんの感想にも触れられていましたが、この二作品を比べると“殺していく狂気”と“殺せない狂気”が対極的に描かれていました。
「殺すも地獄、殺せないのも地獄」というところですね。

それと、仰るとおり二人とも映画作りの天才かもね。
作品的には両方とも完成度が高くて好き嫌いは別にして、“誰も文句言えない出来”と言っても良いでしょうね。
ただし、両作品とも私の中で何か引っかかるものがあるのです。
それの正体はまだハッキリとは掴めていないのですが、なにやらその洗練された完成度の高さ故の引っかかりの様な気もしています。
たえず問題の発信地(根源)である“アメリカ”そのアメリカが目指すグローバリズムとは映画の完成度にまで及んでいるのか?。でも、「あんた(アメリカ)が一番の問題なんだよ!。なのにこんな達観したような作品を作るなよ!。」って気分が私の何処かにあるのかも知れませんね。
だから、作品単体の問題でも引っかかりでも無いのですけどね。f^_^;;

<ぼのぼの>
確かにそのような引っかかりはあって当然だと思いますが、同時にアメリカ映画自身の自浄作用の芽も潰すべきではないと思います。

<シューテツ>
勿論誤解されていないとは思いますが、それは重々承知しての発言で、私の引っかかりというのはくどいですが、作家に対して向けられたものではありません。
これらの作品を作る事については、映画作家としては凄く真っ当であり、評価されるべき事だとも思っていますよ。

<ぼのぼの>
ただしサム・メンデスはイギリス人です。そして今年のオスカーで『ミュンヘン』は作品賞候補になっていますが、『ジャーヘッド』は見事なまでに無視されています。
アメリカ人のスピルバーグが、イスラエルとパレスチナの暗闘を描いた『ミュンヘン』はオスカー候補。
イギリス人のサム・メンデスが、湾岸戦争に行ったアメリカ人を描いた『ジャーヘッド』はオスカーから徹底無視。
そもそも湾岸戦争を批判的に描いた映画は、すでに15年もたつにもかかわらずこの『ジャーヘッド』と『スリー・キングス』の2本くらいしか存在しない。
こういう構造に着目すれば、いかに遅ればせであっても『ジャーヘッド』のような映画が作られたこと自体に、僕は感動を覚えます。

<シューテツ>
私が思ったのは、社会派映画として例えば昔のニューシネマなどのような作品と見終わった後の感覚が全く違ってきたということです。
当時夢中になって観た作品にはどんな絶望的な作品であっても、観終わった後に何故かスッキリしたような感覚があったように思えたのですが、それは何故かというと恐らく作品に作者の怒りなどの感情が表れ、観客もそれを大いに感じ取る事が出来ていたからだと思います。カタルシスとい言ってもいいのかな。
しかし、今回紹介した二作品に関しては、もう怒りとかカタルシスとかも飛び越えてしまって、絶望と諦観しか残らないような気がしたのです。
だから作品の質とか素晴らしさに反比例して、後味の悪さとか薄ら寒さとかが残る作品ではあるなと感じた次第です。
これは、映画を社会の鏡として観た場合、こうした社会派作品が出来上がる背景の社会としては最悪の時期であるということの証のような気がしてなりません。
それと、今の時期だからこそ、こういう新たな感覚の社会派映画が出現したとも言えると思います。

<ケイケイ>
今「ジャーヘッド」の感想読んで回っているのですが、皆さん視点が微妙に違ってすごく興味深いです。是非シューテツさんの感想も拝読したく思います。ではよろしく~。

<シューテツ>
えぇ~~、今回のぼのぼのさんとのやり取りで、私の大体の感想になっていると思うのですけど、あれではダメですかぁ~。f^_^;;

ぼのぼのさんの感想
http://bonobono.cocolog-nifty.com/badlands/2006/02/post_9960.html#more
ケイケイさんの感想
http://www.enpitu.ne.jp/usr1/bin/day?id=10442&pg=20060217

2 コメント

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伝言 (お茶屋)
2006-03-21 22:46:39
シューテツさんにヨロシクお伝えくださいと(当サイトの掲示板「#2276」で)頼まれたので来ましたー(笑)。

こちらの『ジャーヘッド』論議を興味深く読ませてもらい、掲示板の存在意義を痛感されたそうです。



「間借り人の映画日誌」サイトでもヤマちゃんとケイケイさんの談義がアップされていますが、こちらも読み応え満点でした。

http://www4.inforyoma.or.jp/~mai7665/2006/06.htm



他の方の感想を読んでもそれぞれが面白くて、こんなに色んな人を触発する作品って、たいしたものですね。

Unknown (plentiful)
2006-04-02 22:07:58
サム・メンデスはほんと凄い才能を持ってますね。以前観た「ロード・トゥ…」で衝撃を受け、最近「アメリカン・ビューティー」を観てまた感動しました。「ジャー・ヘッド」は奥が深い作品のようですね。映画館では見れなかったのでDVD出たらぜひ見てみたいと思います。「ビューティー」の感想トラバします。