Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

パンツの窓

2007-03-06 08:16:57 | 民俗学
 先週は、日曜日から勤務先の旅行があったりして長い1週間だった。毎週末に自宅に帰るから、洗濯物は自宅まで持ち帰る。ウィークデーは遅くに帰るから、もともと洗濯なんぞする時間などない。大量な洗濯物を、週末になるとお土産に自宅へ帰るわけだから、妻にしてみれば有難くないお土産とあいなる。旅行ではないから、1週間の滞在日数にあわせて数えて衣類を持って行くわけではないから、時には足りなくなることもある。同じ下着を2日間も着用したくはないから、なるべくそういうことのないように、多めに勤務先の地には用意しておくのだが、たまたま足らなくなった。仕方なく食料品を買いながら下着を1着購入した。足らなくなったのはパンツである。ひもじい生活をしているから、ゴムが伸びきるか、破れるかしないと新品など買わない。そう考えてみると、しばらく新品を着用する機会がなかったが、その日トイレに行って気がついたのだ。男子用トイレでいざ、と思いきやボタンをはずさないと○○は出ない。「なんでボタンなんかついているんだ」と、こういう時に毎回愚痴るのだ。

 実はふだんボタンなんか仕掛けたことはない。今ではいろいろなパンツが出ていて、一時はやったトランクスもとくに若い世代ではだいぶ減ったようだ。年老いて新しいことに踏み出さない人間は、変わることなくいつも同じようなものを利用している。ということで、わたしはトランクスを利用しているが、トランクスタイプでは社会の窓の位置に、おおかた一つのボタンがついている。なぜかといえば、トランクスの場合は、社会の窓を閉じている力がないから、場合によっては窓が全開状態になる。それはまずい、ということで窓閉めのためについているのだ。パンツ一丁で暮らしていて、人に見られる可能性が高ければ、きっちりこの窓のボタンを閉めるのかもしれないが、そうでなければ上にズボンを履いているんだから、全開なのはズボンの中でのことである。

 と、そんな解釈をしているのはわたしだけなのだろうか。「座って小便」で触れたのだが、このごろは座便器に座る人たちが多いようだから、いずれこの窓の機能を必要としなくなるかもしれない。トランクスに限っていえば、ズボンのチャックを開けてその中にあるパンツの窓を開けるという作業は、簡単ではない。ズボンに余裕があってだぶついているならともかく、余裕のないズボンの中のパンツをごそごそやるのは手間がかかるだろう。とすれば、むしろズボンとともにパンツまで一気に下ろす座便器での小便の方が早いだろう。爆笑問題の田中裕二と太田光の「どちらが早い」という問題は、そんなパンツの種類によっても異なるかもしれない。いずれにしても、わたしの場合は、このパンツの窓は開きっ放しである。このボタンをわざわざ閉めるのが当たり前なのかもしれないが、実際のところどうしているのか、そんなことを聞いたこともない。そんな統計があったら知りたいところだ。

 ところで、〝社会の窓〟という言葉もちまたでは死語なんて言われている。確かにあまり聞かなくなった言葉である。一般的にはズボンの前についているファスナーの部分をそういう。1948年から1954年と1959年から1960年に、NHKラジオで放送された「インフォメーションアワー・社会の窓」という人気番組に原点があるようだ。当時の社会の裏側を鋭く描き裏側がよく見える、あるいは暴いている番組だったようで、それを〝社会の窓〟と呼んだ。そういう意味で「大事なものが隠されている窓」としてズボンの窓が連想され、この窓のことを同様に〝社会の窓〟と呼ぶようになったようだ。大事なモノが見えるから社会の窓が開いている、と連想させるにはちょっと今の感覚では行き着かないような気がするのだが、当時の人たちにとってこの窓がどう捉えられていたのだろうか。戦後間もないころに始まった番組の時代背景からすれば、ズボンというものは一般化して間もないころのように思う。今でこそわたしがパンツの窓をどうなんだろう、なんて問うが、当時にしてみればこの窓は今とは違う意味で異質なものだったということはないだろうか。わたしは知らなかったが、スカートのファスナーの部分は〝理科の窓〟といったらしい。男性の場合の窓とはちょっとニュアンスが違うし、イメージし難いかもしれない。またファスナーという言葉も昔は使わなかったもので、チャックが一般的だった。教室の中で私語が多いと、〝口にチャック〟なんていうのもよく言われた例えである。ぼたんよりチャックの方が隙間がなくて〝漏れない〟というイメージがあるから、チャックが汎用化すると、これが多用されたようにも思うわけだ。

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