Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

印象に残る山

2009-12-09 19:28:19 | 自然から学ぶ

 Akiさんが飯島の文化館で行われた「冬の兵士」という映画を見て、「重たい気持ちで文化館の出口を出たら、真正面に仙丈ケ岳がちょうど夕日に赤く染まっていた」と日記に記していた。同じ山をわたしもちょうど見ていた。冬になると山を特別意識するようになるのは誰でも同じかもしれない。すっまりと澄んでいるから山の形もはっきりと確認できるし、陽が沈み張りつめかけている空気の中に浮かぶ山々は、とくに印象深く映るもの。

  わが家からも同じ山を見ていたが、千丈ケ岳は伊那山脈に遮られて頭の方だけ。伊那市あたりから望むだいぶ裾の方まで形がはっきりしている印象とはまた異なる。むしろわが家のあたりからは塩見岳や荒川三山、そして赤石岳あたりの方が真正面という感じで目に飛び込む。以前にも何度も触れてきたように山の中に暮らしている者には山が目印的であるから、その印象度も高くなる。それは一生の記憶としてまさに残照として常に頭のどこかにあるもの。生家から見た南駒ケ岳の姿かたちはそうしたイメージでわたしの中には浮かぶ。

  写真の真ん中は赤石岳。なだらかに二つの頂があるが右側(南側)が主峰(3120m)で左側は小赤石岳(3081m)と言うらしい。その赤石と並んで北側にある山々が荒川三山である。西から前岳(3068m)、中岳(3082m)、悪沢岳(3141m)と続くらしいが、それぞれの山を意識して見ることはない。「あの山は何という山ですか」と聞いて答えられる人は、意外にちまたには少ない。例えばわたしの記憶に残る南駒ケ岳にしても生家から見ると頂が三つ連続している。かつてはそのどこが南駒ケ岳であるかなどという捉え方などしていなかった。だから当時の記憶では頂が三つあっても総称して呼んでいるというものであったが、現実的にはそうではなく、はっきりとした南駒ケ岳が存在していて、知っている人はしっかりと答えられたはずだ。きっと飯島町から見える山としてもっとも印象深い山である山であるにもかかわらず、どの頂が南駒ケ岳かはっきり答えられる人は意外に少なかったりするもの。どれほど印象深いものであっても、その頂だけを記憶に留めているだけではないケースも多い。

  さて、赤石岳の右側にまだあまり白くなっていない尖った頂がある。真冬になるとこの頂もしっかりと白くなって南アルプスの一つの頂だと思わされるのだが、赤石岳や荒川岳と違って白さはこのように全く異なる。ようは前山であって、南アルプスの山々とは違う。ここに住むようになってすぐにこの山が気になるようになった。しかし何という山かよく解らなかった。伊那谷自然友の会報に松島信幸さんが山の絵をよく掲載されているが、小八郎岳から描いたものにこの頂ははっきりと示されておらず、山の名も記載されていない。小八郎岳からこの山を意識してみた覚えがわたしにはないのだが、きっと山の上に上るとこの頂の形がだいぶ周辺の山々によってかき消されてしまうのだろう。ようはわたしの住むあたりからだけ印象深く映るというわけだ。そう考えて車で移動した際に、この山を意識しながら追跡していったことがあったが、尖った頂が印象に残るような場所は飯島町七久保あたりから高森町山吹辺りまでに限られる。しかし、実際はそれ以外の場所でも山の形はしっかりと捉えられていて、ほぼどこから見ても尖っている。遠く伊那市辺りからその頂を探してみると、なだらかな峰にぽつんと尖っている山がそうなのか?と思っているが、いまだ完全に把握していない。この山、探ってみると奥茶臼山(2474m)のようだ。飯田市上村と大鹿村の境にある山である。前者のような著名な山ではなく、この山をどれほどの人が認識しているかは知らないが、けっこうわたしとっては外出すると必ず確認する山である。


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7 コメント

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いいですねぇ! (BLs)
2009-12-10 02:03:24
実は私も長野県に行くと山が気になってしょうがありませんです。若き頃は登山に明け暮れてましたから。
なるほど、そうするとあの尖った茶臼山の向こうは遠山川水系になるんですね!しらびそ峠から林道沿いに大沢岳まで行った事があるのですが、ちょうどあの山の向こう側を通ったんでしょう。懐かしいです。
昔(高校生の時)飯島で見た厳冬期1月の朝日に染まった南駒ケ岳の姿は、伊那谷で一番迫力のあるパノラマだと思っています。
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尖った頂 (Aki)
2009-12-10 08:11:49
帰路、国道ではなく上の道を日没後の南アルプスの山並みをちらちら見ながら走ってきて、やはり、あの尖った山はどの山になるのかなと気になっていたところでした(今までも見ているはずなのですが)。奥茶臼でしたか。ご教示ありがとうございました。
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BLsさんへ (trx_45)
2009-12-12 23:18:06
>飯島で見た厳冬期1月の朝日に染まった南駒ケ岳の姿は、伊那谷で一番迫力のある

まったくその通りだと、地元であることを差引いてもそう思います。
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Akiさんへ (trx_45)
2009-12-12 23:19:49
大鹿からはこの山は見えないのでしょうか。
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大鹿からも (Aki)
2009-12-14 07:32:22
場所によっては見えます。見えるはずです。
確か夕立神展望台の山の名前を書いた中にあったと思います。
でも、南アの主稜線の方に目が行っていて、あまり印象にないのです。
今度行くときは気を付けて見てみようと思います。
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夕立神パノラマ公園から (Aki)
2010-07-20 00:19:10
奥茶臼を確認してきました。
やはりこの写真のあたりからが、ひときわ印象的なのですね。
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前茶臼は烏帽子に似ている (trx_45)
2010-07-21 20:18:35
飯田市あたりから見る烏帽子岳は、akiさんの撮影した写真の前茶臼そっくりですね。
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