Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

ホウネンエビ

2006-05-30 08:05:26 | 自然から学ぶ



 田植え後の田んぼにホウネンエビが現れた。足跡の窪みには無数のホウネンエビが泳ぎ、そうでないところにもたくさんの姿が見られる。妻の実家で耕作している田んぼは、現在5枚ある。どれも小さな田んぼで、平地の田んぼを耕作している人たちには馬鹿にされるほどの大きさだ。そのもっとも大きな田んぼにとくにたくさんのホウネンエビが登場する。 

 豊年エビは、甲殻類無甲目ホウネンエビ科で、体長が15~20ミリメートル。体は細長く円筒形で甲殻を持っておらず、脚は11対で、最後部の体節に尾脚が1対ある。無色半透明だが、緑色を帯びることもある。卵は代かきのあと、水・温度(20度以上)・光に反応して孵化し、急速に大きくなる。土の中の光が当たらない卵は数年の寿命があるようだ。孵化して20日後から、産卵をはじめ、親は30日~40日で寿命がつきる。したがって、急にいなくなるような印象を与える。

 江戸時代には、鑑賞用に飼われたともいうホウネンエビ。田んぼの中を泳ぐ姿を眺めていても飽きないが、水槽に入れてよく観察してみると、ますますその魅力にはまる。5枚の田んぼのすべてを観察すると、大きな田んぼにはまさしく〝うじゃうじゃ〟いるのだが、そのほかの田んぼは少ない。それでも2枚にはそこそこ生息し、1枚にはほとんど姿が見えない。たくさんいる大きな田んぼは、収穫後は乾ききっている。他の2枚の田んぼもほぼ乾く。そうはいってもその2枚にはタニシの姿が見えたりするから、若干湿気を帯びて春を迎える。まったく姿を見ない田んぼは、常にじゅくじゅくしていて沼田とまではいかないが、完全に乾くことはない。前述したように、土の中で光があたらない卵は数年の寿命があるという。水を入れることによって孵化するわけで、乾ききった状態でも長く生きることができるわけだ。だから〝生きた化石〟なんて言われるわけだ。乾く田んぼほど個体数が多い。そんな結果となっている。

 さて、この5枚をとりまく隣接地の田んぼはどうかと見てみれば、よその田んぼには姿が見えない。強い除草剤を撒くことによって、卵を産み付ける前に死んでしまえば、いくら土の中で長生きをしていても、個体数は減少し、ついには絶滅してしまうのだろう。妻の実家でも一時妻が父に黙って除草剤を撒くことをしなかった年があったが、あまりの草の多さでバレてしまい、えらい眼にあったことがあった。その後大きなたんぼだけは、といってなるべく撒かないだりしていたが、さすがに草取りが大変で、最近は弱い除草剤を撒いている。その除草剤は、撒いてもホウネンエビが死なないという。もしかしたら除草剤としての機能を果たしていないのかもしれないが、いずれにしても除草剤は生物には天敵なのだ。

 かつて田んぼの肥料として買っていた牛の糞を混ぜたことから、このホウネンエビのことをマグソキンギョなんて呼ぶところもある。かつてにくらべると除草剤もさまざまなようで、再びホウネンエビの姿を見るようになった、なんていう話も聞く。近所の田んぼを眺めてみよう。

 参考にホームページでも何度も紹介しているので、その画像も見てほしい。今回はピントが合うように一生懸命工夫をしたが、デジタルカメラでこういうものを撮るのは難しい。今回は田んぼの中ではうまく撮れなかったので、水槽に入れて撮影してみた。

 〝日々を描く〟から、
 ①「豊年エビ」
 ②「〝生きた化石"豊年エビと貝エビ」
 ③「マグソキンギョ登場」

 HPでも触れているように、緑色のものと透明なものが登場する。今回の写真は、大きな田んぼに生息しているもので、緑色が強いが、時がたつにしたがい、透明になっていく。

 撮影 2006.5.28


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2 コメント

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参考資料ありがとう (もっちゃん)
2006-05-31 19:33:27
ホウネンエビの詳しい資料ありがとうございました。結構身の回りには化石級の生き物がいるものですね。また機会がありましたら、情報お知らせください。本当にありがとうございました。
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昔に比べると (trx_45)
2006-06-01 08:23:28
 わたしがHPにホウネンエビのことを書いたころには、まだ「ホウネンエビ」と検索しても情報は乏しかったのですが、今はけっこう多くなりました。動画を配置しているページもあったりして、なかなかですね。
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