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【映画】『リチャード・ジュエル』

2020年01月21日 | MOVIE
『リチャード・ジュエル』Richard Jewell(2019年/米)
監督:クリント・イーストウッド
出演:ポール・ウォルター・ハウザー。サム・ロックウェル。キャシー・ベイツ。

1996年7月27日、五輪開催中のアトランタの会場近くの公園で爆発物が発見される。発見者は警備員のリチャード・ジュエル。彼のおかげで爆発前に多くの人が避難することができたが、その爆発で死者二人と100人以上の負傷者を出す大惨事なった。一躍英雄となったリチャードだったが、FBIは第一発見者であるジュエルを自らを英雄とするために事件を起こす犯罪者の型にはめ、彼をマークする。そしてそれがマスメディアにリークされ、一転して犯罪者としてFBI、マスコミから貶められていくことになる。ジュエルはかつての職場で知り合った弁護士ワトソン・ブライアントに助けを求め、自らの無罪の証明のため立ち上がる。

とても気になる映画だった。でも最近、善悪のはっきりする作品、悪意に満ちた登場人物が出てくる作品は、耐えられなくて楽しいと思える作品しか観ないようにしているので、ちょっと躊躇してたんですよね。ところがこの作品を観終わって、観る前に思っていたものと違って・・・いや、違わないんですが、なんていうのか、胸糞が悪くなるくらいに嫌な奴って出てこないんですよ。FBIの捜査官は多少むかつきましたが、でもなんだろう証拠を捏造したりとかするわけではないから、そんなにむかつかないんですよね。小狡いこともするんだけど、結局うまくいかなかったりするし、手出しが出来ないくらいに巨大な権力組織というイメージがあまりなかったような気がする。そしてまず最初にジュエルが犯人だと報道した女性記者キャシー・スクラッグスも、犯行の電話がかけられた公衆電話までジュエルが行くことができないという確認をするシーンがあったり、記者会見でジュエルの母が訴える言葉に涙するシーンがあったり、これらはもうイーストウッド監督の巧さでしょうね。単純にこいつらが悪い奴。という描き方をしていない。観ているものの気持ちを片側に傾けることはしないようにしている気がする。そして一般視聴者が「人殺し出ていけ!」なんてジュエルを罵るシーンは全くいれていない。実際はそういうこともあったような気がしますが、ジュエルはかわいそうな被害者なんだという視点で描かれた作品ではないからなんでしょうね。弁護士ワトソンから何も話すなと言われているのに、同じ法執行官だからとか、お調子者っぽく話してしまうジュエルに見ていてあきれ返ってしまうシーンもあるし、とにかく善悪を描こうとはしていなんですよね。だから余計に物語に引き込まれていく。ラストも清々しかったし、すごい作品です。FBIの事務所でジュエルの言うセリフこそ、監督が描きたかったものだんじゃないかなぁって気がする。他の誰かがまたどこかで同じように爆弾をみつけても、ジュエルみたいになると困るからと通報しなくなる。メディアも一般視聴者である我々も簡単にヒーローを作って、片一方で簡単に悪人も作る。ヒーローなんてそう簡単になれるものじゃない。ジュエルの行動はヒーローになりたくてとった行動ではない。ただただ自らの仕事として、正しいことをしただけ。彼をヒーローに祭り上げなければ、このあとの悪人に貶めることはなかっただろう。この時代にSNSなんてあったら、ジュエルの人生はもっと恐ろしいものになっていたかもしれない。今だからこそもっと考えないといけない問題かもしれませんね。

-2020.1.20 なんばパークスシネマ-


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