先日、年若い男性と千代美、お茶をして参りました。久しぶりに会うその方は珍しくスーツ姿でいらしていて、千代美はとても気楽な服装で年甲斐もなく「三つ編み」なんかで出かけておりましたから、私たち並んで歩くと「そぐわないですわね」などと心中思っておりました。
「スーツ姿がお似合いになるのね。とても素敵ですわ。」とその殿方に申し上げましたら、照れていらして「本当は着替えたいのですがね。でもまぁ、帰るだけですから。」と。人間って面白いですわね。服装が変わるとイメージまで変わるものです。
どこかでお茶をと場所を探して歩いておりましたら、二人にして道に迷ったのですけれど、迷ったおかげで素敵な珈琲店にたどり着きました。隣がカフェ・ド・クリエという珈琲のチェーン店で、その殿方は「タバコが吸えれば僕はどこでもいいんですよ」と仰っていましたが、千代美はもう少し美味しそうな珈琲店が良かったんですの。そうしたら隣に「ぺしゃわーる」という名の珈琲店がありました。名前が気に入りましたの。アレキサンダー王がお昼寝を取っていそうですわね。(後で調べましたら、どうやらホテルニューオータニにも入っている珈琲店のようですわ)
地下のお店でしたので、まず千代美が降りて探ってまいりました。ほの暗い落ち着いた雰囲気の店内を見ただけで「まぁ、お値段もそこそこしますわね」と分かりました。でも雰囲気が気に入りましたので、下から階段の上にいる殿方に声をかけまして「素敵なお店ですわ。こちらに致しましょう?」と申し上げました。
給仕の男性は寡黙で、少し長い髪を後ろで束ねていらっしゃいました。愛想はないのですけれど、とても礼儀正しくて気に入りました。この店はどうやら夜はバーになるようでした。カウンターの落ち着いた雰囲気がようございました。初老の男性が、一人で煙草を吸っていらっしゃっるのが似合います。給仕さんも、どちらかと言えばバーのカウンターが似合いそうな方でした。
私たち、東ティモール産の珈琲を見つけましたので、それを二人でいただこうかと思ったのです。でも生憎と品切れでした。以前ぽっちりさんの昔の彼の話を聞いておりまして「いつか東ティモール産の珈琲が日本のカフェに普通に置いてあるようになったら素敵だね」なんて話をぽっちりさんがされていたことを思い出しましの。ようやくそんな風になってきましたわね。
品切れでしたので仕方なくエチオピア産の珈琲を頼みました。殿方と千代美、趣味が被るのですわ。二人していつも同じものを頼もうとするから困ります。違うお味を味見してみたかったのに。でも千代美はエチオピアの珈琲好きですの。エチオピアの別名、アビシニアという音も好きです。アビシニアンという猫がいますわね?あれは確かここの原産ではなかったかと思います。すらっとして美しい猫ですわ。
とても濃厚な深い苦味のある珈琲です。でも千代美、そうした濃い珈琲が好みですの。いわゆるフレンチ・ローストと言われるものでしょうか。そんなに詳しくはありませんけれど。薄い珈琲は嫌い。
フランス産の角砂糖が添えつけて供されました。その包み紙がまた可愛らしいんですのよ。ギリシャ時代の壷絵なんかにありそうな絵が書かれていますの。千代美美味しい珈琲の時はお砂糖は使いませんので、持って帰ろうかと思ったくらいです(笑)。殿方は逆に甘党で、小さなカップに二つともお砂糖を入れていました。でも、千代美も暑い地方でお砂糖をたっぷり入れて飲む慣習のあるお国に参りましたら、そうします。そういう所では、地元の人のやり方で食べたり、飲んだりするのが一番美味しく感じるのですもの。臨機応変。郷に入っては郷に従え、ですわね。
少々お腹が空いておりましたのでサンドイッチも頼みました。これも美味しゅうございました。焼き具合がぱりっとして香ばしく、チーズと一緒に「林檎」のスライスが入っているのです。熱くて火傷致しましたが、美味でした♪
それから、感心したのがお代わりを頼んだ時でした。愛想のない給仕さんは、何も言わないのに殿方にはちゃんと角砂糖をつけて、そして千代美の分には角砂糖無しで二回目は持っていらっしゃいました。すこし、感心しましたわ。ちゃんと見ていらっしゃるんだなぁって。まぁ、人によって取り方は色々なのでしょうけれど、千代美はそういうの嬉しく思いますの。だって、綺麗なお砂糖の包み紙だから汚したら悪いと思って、でも使わないし邪魔だし、置き場所に困りますのよ。
そして、このお代わりで持って来てくだすったカップがまた素敵でしたの。ただの白いカップなんですけれど、肌なじみがとてもいいのですわ。レリーフで葉の模様がついていて、ちょっと笑ってしまいますけれど「芽キャベツの葉」のような柄ですの。でも、カップを中央に置くと「ひまわり」みたいにも思えますのよ。
とても好きな肌触りでしたので、もしやと思って裏を見てみましたの。
Wedgewoodでした。千代美、wedgewoodの持つ質感が凄く好きです。家にも少しありまして、時々休日にはwedgewoodのカップで珈琲をいただいたりします。リーというちょっと丸みを帯びたカップは、珈琲にも紅茶にも使えて便利です。ちなみに殿方のカップはエルメスのものでした。こうした素敵なカップで出してくれるお店が好きです。それもお値段のうち、というか。しかも、そのカップをたとえば千代美の雰囲気などを見て選んでくれたりしたのだったら素敵で、そのカップを千代美が気に入ったら、尚更嬉しく感じるのですわ。あぁ、このお店の方は千代美をこんな風に見てくれているのね、と思うのです。
千代美、このシンプルなボーンチャイナがとても気に入りました。余りに「素敵、素敵♪」と言ってカップをなでているものですから、殿方が笑って「そんなにお気に召したのなら、千代美さん、譲っていただけるよう交渉してみたらいかがですか?」なんて隣で含み笑いして仰るのですのよ?まぁ、流石にそこまでは致しませんでしたが、でもずっと殿方のお話を聞きながら、カップを撫でていました。
殿方をお見送りして自宅に戻ってまいりましてから、実は千代美調べてみたんですのよ。でも、wedgewoodの最近のデザインには載っていないのです。古いものでしょうか?いわゆるコレクション物ほどの高価なものではないと思ったのですけれど。色々な陶器のお店の在庫を調べてみましたが、「ぺしゃわーる」で見たカップは置いていないのですわ。だから、デザイン名が未だに分かりませんの。残念。
これは本当にもう「交渉」しかないかもしれないですわね?(笑)
でも、千代美買って「持ちたい」わけではないんですのよ。場所もありませんし。
ですから、次回あすこに再び行く機会があったら「カップ指定」してみようかしらって思っていますの♪家に無くとも、あすこで美味しくいただけたらそれで十分ですわ。ちょっと嫌なお客でしょう?
「wedewoodの白い芽キャベツみたいな柄のカップで飲ませてくださいます?」
笑ってしまいますわね(笑)。
こう申し上げたら、あの愛想のない給仕さんも笑ってくださいますかしら?
ちょっと今から楽しみです♪