今回ご紹介するのは
「資本主義はなぜ自壊したのか」中谷巌著 集英社インターナショナル刊です
まえがきに、本書は自戒の念を込めて書かれた「懺悔の書」でもあるとあります。
著者の中谷さんは、かつて「構造改革」の急先鋒たる一人だったそうですが、
行き過ぎたアメリカ型金融資本主義―
本書では「グローバル資本主義」と呼んでいますが、
このグローバル資本主義には本質的欠陥があることをあげられています。
まず、世界金融経済の大きな不安定要素となること。
次に格差拡大を生み、
健全な「中流階層の消失」という社会の二極化現象を産み出すこと。
そして地球環境汚染を加速させること。
大きくあげるとこの3点。
さて何故、グローバル資本主義が格差拡大を生むのかというのは、
グローバル資本主義においては「労働者」イコール「消費者」ではないため、
労働者の賃上げは不要となり、資本は常に安い労働力を求めて移動するので、
経済が活性化したところで、
利益の再分配は行われないという説は説得力があります。
同様にグローバル資本主義が地球環境汚染を加速させると考えられるのも、
その場所で環境を汚染させて、周辺住民の反発を招いたとしても、
環境規制が緩い国に移ればよいという考えになるというのも頷けます。
詳しくは本書を読んでいただきたいのですが、
比較的日本人が抱いている
「アメリカは自由競争の国、自己責任の国だから世界一豊かになったのだ」
というイメージは、半分ぐらいしか当たっていないんだそうです。
経済活動を自由競争に委ねているだけでは格差拡大が進み、
社会の安定性が損なわれ、結果的に豊かな社会は作れないそうです。
中谷さんは日本はアメリカとはそもそも国の成り立ちや国民性なども違うのだから、
アメリカのやり方をそのまま日本に持ってきたのでは
うまく行くはずがないという意見です。
日本は「損して得取れ」という信頼第一の思想や「現場力の重視」の思想など
他国にはない思想、発想があるのだから
こういうものを大事にして日本を立て直していこうと言われています。
本書はアメリカの成り立ちや現在抱えている問題、
資本主義、神などいろんな側面から
何故、グローバル資本主義が日本に馴染まないのかが
捉えられていて勉強になりました