チャウ子のそれでも本を読むのだ

チャウ子のごった煮風500字読書日記
地味に更新中^^;

演じられた白い夜

2008-08-31 22:08:58 | 小説 単行本
今回ご紹介するのは「演じられた白い夜」近藤史恵著 実業之日本社刊です

ストーリーは…

小劇場界の著名女優、神内麻子は、
夫の演出家、匠に呼ばれ雪深い山荘へやってきた。
そこには今回の推理劇に出演する出演者たちが集合していた。
出演者のひとり、柏田日登美の自殺が始まりとなって事件が起こり出す…

近藤史恵さんは「サクリファイス」で今年度の本屋大賞の2位に輝いた作家。
というわけで最近俄然注目を浴び出したのでしょうか?
昔の作品が結構店頭に並んでいます。
前にご紹介した「カナリヤは眠らない」や「茨姫はたたかう」も昔の作品。

今回の「演じられた白い夜」も10年前の作品だそう。

この雪深い山荘が舞台というのは、
ミステリーにはわりとよくあるパターン。
確か東野圭吾の作品にもあったと思います。

ストーリーもそんなに奇抜ではなく平凡。
要は誰が犯人で、動機は何か?というのが焦点ですから。

ただ、近藤さんの場合、そんなことよりも人間ドラマが
書けているような気がします。

「サクリファイス」もそうでしたが、近藤さんは人間を見る目が温かい。
犯人にも救いがあるように感じられます。

悪意に満ちていて、ドロドロしたような作品もそれはそれで面白いのですが、
やはり読後感は近藤さんのような作品の方が断然いいですね。

ただ、この作品はちょっと薄味という感じで
あまりあとを引く感じではありませんでした。
それはちょっと残念かな。

47都道府県女ひとりで行ってみよう

2008-08-29 22:33:44 | その他 全般
今回ご紹介するのは
「47都道府県女ひとりで行ってみよう」益田ミリ著 幻冬舎刊です

最近、また旅行行きたい病が発生してきて、
先日はハワイの夢を見てしまいました。
今の私には、ハワイなんて夢のまた夢なのですが、
国内旅行ですらままならない。
ハァ

著者の益田さんは大阪出身のイラストレーター。
日本全国を旅しようと思い立ち、47都道府県制覇を目指します。
とは言ってもこの益田さん、どうも体温が低そうな人です。

月にひとつずつ出かけて、4年かかるという気が遠くなるような旅物語。

旅のパターンも日帰りもあれば、3泊4日とかもあり様々。
ビジネスホテルに泊まることもあれば、老舗旅館や一流ホテルに泊まることも。

名所観たさに行くとかでもなく、ただブラリ行くだけ。
変にテンションが高かったり、絶対ここに行ってあれを観よう
などという義務感みたいなものが全くないのが妙にハマる。

ふらりと出かけてその土地特有の空気を感じるのが、
旅の醍醐味ではないでしょうかねー。

ところでこの益田さん、海鮮ものがあまり好きではないということで、
せっかくだから名物を!と思って注文しても食べきれないという、
海鮮好きの私には非常に勿体ない記述が所々に見られるのですが、
私がこの本に出てくる食べ物で一番食べてみたいと思ったものは
意外にも栃木県の「こんにゃく田楽」でした。

益田さんのオススメは熊本県の「いきなり団子」だそうです。

結局食べ物の話で本日は終了でございます

妖精と妖怪のあいだ 平林たい子伝

2008-08-27 22:39:24 | その他 全般
今回ご紹介するのは
「妖精と妖怪のあいだ 平林たいこ伝」群ようこ著 文春文庫です

平林たいこという名前は見たことはありますが、果たしてどういう人物か?
というのは全く知りませんでした(相変わらず無知な私

簡単に説明すると、明治生まれの女流作家。
て、ちっとも説明になってませんが。
私はもっと社会的な活動家だと思っていたのですが、
社会を変えるため行動を起こしたような記述は見あたりませんでした。
ひとりの女としてのたいこを書いた評伝。

実家は貧乏だったが、成績は良かったので、女学校に進んだたいこ。
卒業後、東京に上京し、電話交換手になるが、クビになり、
そこからたいこの奔放な人生が始まります。

おおざっぱに見ると、たいこの人生には3人の男が絡みます(遊び相手はもっと)。
で、その3人が同じタイプ。
思想だけは一人前で、女に対しても進んだ考えを持っているような言動を取るが、
その実、女が家事をするべきだという考え。
かと言って、女を養うわけではなく、はっきり言って、ヒモ体質の男。

何故かたいこはこういうタイプの男と縁があるのですが、
私が納得できないのは、たいこの心理。

群さんも書いているとおり、好きで離れられないのではなく、
たいこは意外と冷静で、恋愛の先には結婚がちらつき、
生活を落ち着かせたいという気持ちがあるのです。
だから、暴力を振るわれても、お金を持ち出されても我慢してしまう。
だのに、自分はまた別の男を好きになったりと随分勝手。
(群さんはこの自分勝手なところをたいこ理論と書いています)

一方では結婚生活を守りたい、一方では恋愛を楽しみたい。
奔放さにもいろいろあると思いますが、
奔放さが中途半端なような印象がして仕方がないのです。
進歩的なようで封建的。
そして潔さがない。

私個人としては、あまり魅力的な女性のようには感じませんでした。
奔放ならもっと突き抜け感が欲しかった

渋谷に里帰り

2008-08-25 22:56:42 | 小説 単行本
今回ご紹介するのは「渋谷に里帰り」山本幸久著 NHK出版刊です

ストーリーは…

食品の卸会社に勤める峰崎稔は、
優秀な営業ウーマン、坂岡女史が寿退社することにより、
坂岡女史の仕事を引き継ぐことに。
坂岡女史の受け持ちは渋谷近辺。
稔は小学校まで渋谷に住んでいたが、渋谷に行きたくない理由があった…

この作品もストーリーは複雑ではなく、
稔と坂岡女史の仕事の引き継ぎと「渋谷」がテーマ。

坂岡女史はやり手の営業ウーマンで、顧客からかなりの信頼を勝ち得ています。
一方の稔は、どちらかと言うと覇気がないタイプで、喜怒哀楽が表情に出ません。

そんな今時の若者(と、言っても稔は32歳)の稔が
坂岡女史の仕事の取り組み方にいつの間にか
引きずり込まれていく様子がいい。

坂岡女史は優等生がそのまま就職して、立派な営業ウーマンになったのではなく、
努力で顧客の信頼を勝ち得たという自信で輝いている女性。
知的なキャリアウーマンというより職人のような仕事人。

作者の山本さんは人物描写がすごくうまくて、
この作品も坂岡女史はもちろん、
どこまでがシャレなのかわからない課長の椎名や、
隣のビルの屋上で野球の素振りをする八時半の女など、
変わり者だけどなんとも憎めないキャラが登場します。

山本さんの作品、何作か読みましたが、私は今回のこの作品が一番好みです。
タイトルも好き。
「渋谷」と「里帰り」のミスマッチなところがミソですね。

渋谷に興味のある方、渋谷を懐かしみたい方は是非

夜騎士物語

2008-08-24 21:03:14 | 小説 単行本
今回ご紹介するのは「夜騎士物語」新堂冬樹著 双葉社刊です

タイトルでおわかりのとおり、私の好きなホストものです(笑)

ストーリーは…

歌舞伎町のホストクラブ「夜騎士」のナンバーワンホストの心は、
色恋で商売をしないことを信条としていたが、
六本木の有名ホスト、流華が夜騎士にやってきたことにより、
心に変化が訪れる…

心の父は伝説のナンバーワンホスト、吹雪。
吹雪は枕営業をしてナンバーワンを保っていたが、
やがて客に刺され死んでしまう。

心はそんな父に反発して、自分は枕営業などしないで
ナンバーワンになってみせる決意をし、上り詰めた。

ストーリーはわかりやすく、
心のそんな決意を覆すような出来事が流華によってもたらされます。
(ここはネタバレになるので書けませんが)

ナンバーワンで居続けることがそんなに意味のあることなのか?と
テキトーな性格の私は思ってしまうのですが、
要は客など金蔓としか見ていない流華に対して、
客に対して誠実でありたいとする心。

ただ、あることがあり、
心も結局流華に負けないために客を喰いものにしていく…
というストーリーは単純明快。

最初は良心の呵責を感じていた心が、
徹底的に落ちていく様は面白くむしろ爽快感(?)すら感じます。
が、ラストがあまりにも安易でちょっと首を傾げました。
こういうラストなら、別にナンバーワンにこだわったり、客をその気にさせたり、
好きな女を苦しめることもなかったのではないだろうか?と思うのですが。

とにもかくにも私の生きてる世界とは金銭感覚が4桁ぐらい違う…
と変なところで感心したりして

週末海外!

2008-08-23 22:01:23 | その他 全般
今回ご紹介するのは「週末海外!」吉田友和著 情報センター出版局刊です

本書は6月にご紹介した「週末アジア!」のシリーズ。
「週末海外!」の方が先に刊行されています。

先日、ある人と、旅行にお金を使うのが一番活きたお金の使い方だよね
ということで話がまとまりました。
物欲より旅行

さて、本書ですが、著者はサラリーマン。
なので、まとまった休みもなかなか取れないということで、
週末プラス1日ぐらいで出かけることのできるプランを立てる
サンデートラベラー。

第1章は台湾、香港・マカオ、パラオ、五島列島(海外?)が紹介されています。

第2章は「ちょい長」旅編。
タイ・ラオス、フランス、フィンランド、オーストラリア、モンゴルなど
なかなか多彩なラインナップ。

本編の旅行記編が主なのはもちろんなのですが、
その前の旅のノウハウ編はなかなかお得な情報が満載です。
マイルの貯め方、使い方、お得な航空券の見分け方、レンタカーのお得情報など。

私が吉田さんの本が好きな理由は
自分のお金と時間をかけて旅行しているところに尽きます。

私のようなほとんど海外に縁のない人間にもわかりやすく、
ノウハウを提供してくれたり、
旅データという、費用やその国の一言メモみたいなものもあります。

そしてサラリーマンの悲哀が少し感じられるのもいい。
ちゃんと仕事して、職場の人にはできるだけ迷惑をかけないよう、
日程のやりくりをする。
普段の生活は節約して(まさしく物欲より旅行欲)、旅に出る。

そういう趣味を楽しみたいが故に仕事を一生懸命頑張るみたいな姿勢が好きなんです

フォー・ディア・ライフ

2008-08-20 23:21:16 | 小説 文庫本
今回ご紹介するのは「フォー・ディア・ライフ」柴田よしき著 講談社文庫です

ストーリーは…

新宿二丁目で無認可の保育園を営む、花咲慎一郎の裏の顔は
ヤバい仕事も引き受ける探偵。
家出娘の捜索とヤクザのシマを荒らして監禁された少年を救い出す
仕事を受けた花咲。
微妙に2つの件は繋がっていくのだが…

花咲慎一郎は元マル暴担当の刑事。
わけあって刑事をやめた花咲はある人間から保育園を任される。

この保育園、新宿二丁目という土地柄もあり、
預けに来る母親は幸せな主婦ではなく、
その日をやっと生きているような苦労多き女性たち。

そういう母親を対象にしているこの保育園の保育料は当然相場より安く、
花咲はいつもお金のやりくりに悩まされています。
それでも子供たちの姿に元気づけられ保育園を懸命に営む健気な慎一郎…
という話ではもちろんなく、かなりハードボイルド。

ヤクザやヤクザの愛人だった女医、
ヤクザと組んで美人局をしていた元タレントなど危ない登場人物がいっぱい。

でも出てくる人物たちはとても魅力的。
特に危ない女医、野添奈美のカッコよさが圧巻でした。

ストーリー的には途中で多分こういうことだなと想像はつくのですが、
話運びのうまさと登場人物の良さで、あまりその辺は気になりませんでした。

新宿二丁目という街と保育園経営と探偵業。
これらの設定のうまさが抜群。
裏社会に生きながらも子供たちを守ろうと決意する花咲の生き様もかっこいい。

ところでこの作品の著者、柴田さんはほんと多彩な作家ですねぇ。
なんで直木賞取らないんだろう?不思議

茨姫はたたかう

2008-08-17 16:18:46 | 小説 文庫本
今回ご紹介するのは「茨姫はたたかう」近藤史恵著 祥伝社文庫です

ストーリーは…

書店に勤める久住梨花子は弟の結婚により、
実家を出てひとり暮らしをすることになったが、
ストーカーの影を感じ始める…

この作品は昨日ご紹介した
「カナリヤは眠れない」の整体師合田力シリーズの第二弾。

梨花子はおとなしく臆病。
ひとり暮らしを始めたマンションの両隣はマンガ家の早苗と水商売の礼子。
ハッキリ物を言う早苗ともマイペースな礼子ともあまり付き合いたくない。

今回は昔流行った「シンデレラ症候群」がテーマ。

梨花子は合田に、臆病でおれば誰かが守ってくれると思い込んでいると
いい当てられ愕然となります。

女性というより、女の子扱いされて、
なんでも言いなりになるオンナと男に思い込まれてしまう梨花子。
もちろんそんな勝手な幻想を抱く男はどうしようもないのですが、
そんな男や社会に対して、なんの疑問もなく
そういう女の子であろうとする女の側にも責任はあるのではと思います。

今回のこの梨花子はやっとその幻想に気づき、
ストーカーと対決しようとします。

ストーカーは一体何者なのか?というミステリー的興味はもちろんですが、
誰がほんとに梨花子の中味を見ていてくれたのかということもわかり、
そのあたりはなかなか感動的。

シリーズなので合田力はもちろん、小松崎雄大、恵と歩の姉妹も登場します。
合田力がかっこよくなりすぎなのはちょっとどうかと思いますが(笑)

カナリヤは眠れない

2008-08-16 23:48:45 | 小説 文庫本
今回ご紹介するのは「カナリヤは眠れない」近藤史恵著 祥伝社文庫です

ストーリーは…

週刊誌の記者、小松崎雄大は歩いていてぶつかった可愛らしい女の子に、
彼女が勤めている合田接骨院に連れて行かれることに。
その接骨院の整体師、合田力は変わり者だが、
不思議な力を持った整体師だった…

合田接骨院の話と並行して、
独身時代買い物依存症だった墨田茜という主婦が、
再び買い物依存症に陥っていく様子が描かれます。

元々、地味なOLだった茜が、あこがれの人に言われたことがきっかけで、
オシャレに目覚め、歯止めがきかなくなる…
そんな過程が書かれています。

あるところまで行き着いた茜は親に借金を返済してもらい、
持ち込まれた縁談に乗り、青年実業家と結婚し、専業主婦になりますが、
同級生たちと再会したことにより、また買い物依存症に陥っていく。
その茜の心の闇の描き方がうまい。

他人から見れば幸せな奥様の座にどこか違和感を感じる茜。
女同士の見栄の張り合いに巻き込まれていく弱い意志。
そんなオンナ心がリアル。

結局、茜がどういう風に立ち直るのかというあたりは
ちょっとありきたりなのですが、面白くて読みやすかった。

茜の話は深刻ですが、合田接骨院の合田力や、
小松崎雄大の方の話はユーモアたっぷりです。
(まあ、こちらも深刻な話はあるのですが)

合田接骨院に勤める、恵と歩の姉妹のキャラもいい。

大阪が舞台で、大阪弁が飛び交っているのも私は読みやすかったです

ひゃくはち

2008-08-15 07:35:02 | 小説 単行本
今回ご紹介するのは「ひゃくはち」早見和真著 集英社刊です

ストーリーは…

青野雅人は大手新聞社に勤める25歳。
徳島への転勤を恋人の佐知子に打ち明けた日に
佐知子から意外なことを告白される…

雅人は元高校球児。
現在と高校時代の野球部の出来事が交互に展開されていきます。

話は反れますが、今年の高校球児はちょっと気の毒ですね。
オリンピックにどうしても話題が行ってしまって、注目度合いが低くて。

さて、この作品ですが、構成が巧みでうまい

現在の雅人と佐知子の関係から、高校時代をなぞる展開。

高校時代の野球に対する情熱と野球部の友情。
こう書くとなんだかクサくなってしまうのですが、
決して品行方正ではない男子の高校時代がよく描かれています。

高校野球の辛さの先にある快感。
チームメートは友人であり、ライバル。
そのあたりの微妙な心理の描き方も見事。

監督のT(あだ名)に関しても部員は悪態をつきながらも、
信頼を寄せている関係がよくわかります。

主題とは少し離れますが、雅人の父もいいのです。
立派過ぎずかわいらしい(笑)
こういう父親なら子供もいい方向に向かうと思うのですが、どうでしょうか?

この作品は分類すれば青春小説でしょうが、
いろんな味付けがされているので、いろんな楽しみ方ができます。
野球好きな方は是非