日記

音楽教室のことや、その日に起きた出来事をご紹介します。

「か」さんのコンサート体験記 最終回

2018-05-11 10:48:35 | 「か」さんのコンサート体験記
コンサートに行きましたー報告(特別編)



「室内楽の夕べ ワピニスキとタルホリックを迎えて」



平成18年11月20日 18:30開演

ルーテル市ヶ谷センター



プログラム

1.モーツアルト ピアノ三重奏曲第4番変ロ長調 K.502

2.ショスタコービッチ ピアノ三重奏曲第2番ホ短調 op.67

3.メンデルスゾーン ピアノ三重奏曲第1番ニ短調 op.49

4.ラベル ピアノ三重奏曲イ短調

ヴァイオリン:ピオトル・タルホリック(クラクフ国立音楽院準教授)

チェロ:ズジスワフ・ワピニスキ(クラクフ音楽院チェロ科教授)

ピアノ:1)沼田朱子 2)青田江美子 3)香西由貴 4)飯野晃代



♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪



私はワピニスキさんもタルホリックさんも全く存知上げません。しかし、何と言ってもこのコンサートでは沼田朱子先生がステージに立たれるわけですから、聴き逃す訳にはとてもまいりません。さらに今回は、平日であってもコンサート会場にアクセスしやすい処に居合わせるという幸運に巡り合ったのでした。

しかし、ポスターを拝見するに、4人の美女ピアニストの背後に、むっとした表情の(ように見える)オジサマ2人というのも、何か不思議な味わい・・・。それから、ピアノ三重奏曲4つという曲の多さは気になりました。あたかも、ウィンナーコーヒーの後にロシアン・ティ、その後にウィンナーコーヒーのおかわり、で最後にカフェ・ロワイヤルといったところでしょうか。交代で演奏するピアニストはともかく、ヴァイオリニストとチェリストの集中力と気力・体力はそんなに続くものかなぁと、おせっかいな心配をしていました。

 さてさて、当日は仕事をさっさと済ませて、やや混雑した電車を乗り継いでコンサート会場へ。当日券購入中に私の肩を叩くのは、敬愛する朱子先生のお父様!「よっ、かっちゃん!」それからお会いできたのは、朱子先生のお母様と妹さん(中学テニス部長の頃のご苦労が大変偲ばれます)。懐かしい・・・。

 ホールは、小さな(でも、造りは本格的な)パイプオルガンのある、教会の集会場。あぁ、ルーテルとはルター派教会の1つと気づいたりして・・・。

 さて、さりげなく会場が暗くなり、朱子先生と2人のオジサマが登場。朱子先生、水色のドレスがとても爽やかにお似合い(と書くとセクハラに該当するのでしょうか)。4曲の1番手は、さぞかし緊張するだろうなと察していましたが、曲が進むに連れてどんどん音が伸び伸びしてきたように思えました。2楽章の滑らかさと3楽章のノリがとてもよかったです。聴いていて、こちらも楽しくなってきました。様々ご苦労があったようにお聞きしましたが、とても上手く纏められたと感じました。さすがプロだな。

 その後の曲については、多くは記載しません。しかし、ステージには、色々な「気」が漂っていて、演奏の細かい流れを支配しているのではないかと、そんなことを考えていました。



 演奏の後は、エントランスで写真撮影。その場の雰囲気からドレスを着たままの朱子先生とツーショット。後日、その写真を自宅にご恵送下さいました。少し照れている自分・・・。

 それから2週間後の話。小学3年の子ども(コンサート体験記①で、演奏中にじゃんけんのことを考えていた子ども)が、しみじみ話しました。その写真をみて、パパが浮気をしたと思い、一人で悩んだのだそうだ。まもなく両親が離婚して、自分は母親と弟と3人で暮らすことになる、とまで思ったそうな。説明不足でごめんなさい。



 ともあれ、素敵なコンサートをありがとうございました。



注:クラクフ:ポーランド南部、クラクフ県の県都。学術、文化都市としてはワルシャワに次ぐ第2の都市。人口約76万人。








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「か」さんのコンサート体験記4

2018-05-11 10:45:03 | 「か」さんのコンサート体験記
コンサートに行きましたー報告(その4)

(財)米沢上杉文化振興財団主催
平成17年度置賜文化ホール自主事業
 ~ちいさなNew Year Concert~
平成18年1月14日 19:00開演
「伝国の杜」エントランス
ハープ:大村典子

演奏曲目
① 春の日の花と輝く/アイルランド民謡
② 五月の歌/アッセルマン
③ ルンバ/サルツェド
④ 月の光/ドビュッシー
⑤ 亜麻色の髪の乙女/ドビュッシー
⑥ 冬の歌メドレー/ペチカ・そりすべり・冬景色ほか
⑦ Are You Sleeping?/フランス民謡
⑧ もののけ姫・いつも何度でも
⑨ ポピュラーメドレー/ムーンリバー・エンターティナー・魅惑のワルツほか
⑩ ひき潮/マックスウェル
⑪ 泉/アッセルマン
⑫(アンコール)夜の歌/サルツェド

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 山形県米沢市の「伝国の杜」では、毎冬、広いエントランスを小ホール風にしつら
えて小さなコンサートをしています。ピアノ(この時は、蓋を完全に取り外して、グ
ランドピアノを四方から囲むように座席を設置していました)や二胡のミニコンサー
トなどです。以前、2月の雪灯篭祭りの時期に、大村典子さんをお呼びして小さな
ハープのコンサートをしたことがありました。演奏者のトークもあって、手作りの演
奏会という雰囲気で、よかったな~と思いました。ハープコンサートを一度開いてし
まったので、もう2度目はないだろうと思っていました。だから、平成17年11月
に今回のコンサートのポスターを見て、うれしくて、さっそくチケットを購入したの
でした。あんまり早くチケットを買ったもんだから、演奏会当日、どこにチケットを
置いた~と焦りながら探したりして(笑)。

////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
 会場に行くと、能舞台を背景にグランドハープが置いてあって、その回りに扇型に
並べられた椅子が200席。背丈約180cmの彫刻のあるグランドハープは、とて
も優雅な楽器に見えます。古くはマリー・アントワネットが、近くは皇后様がなさる
ので、ハープはとてもセレブな楽器というイメージがあります(本当は、そんな風に
思う必要はないと考えていますが)。入り口で受け取った小さなプログラムで演奏曲
目を初めて知りました。アッセルマンの「五月の歌」と「泉」が自分の目を引きまし
た。どちらも大好きな曲で、楽譜も入手してしまいましたが、グランドハープは弾け
ませんし、持ってもいませんので、ピアノで弾いて遊んでいました。
 さてさて、赤いドレスでハーピスト登場。サーチライトの強い光を浴びて演奏しに
くくないのかなぁ、なんて心配したりして。しかし、このハーピストは、決して音を
割らないですね。フォルテシモで弾いてよさそうな所でも派手な音を出しませんね。
おっとりしています。それに、エチュード風の曲でも、決して急がないで、技巧を見
せつけようとしないで、いわば、マイペースで演奏します。難易度の高い所は、安全
策を選んで音を抜いていた所もあったようです(「五月の歌」と「夜の歌」の一
部)。CDで聞いたリリー・ラスキーヌ(パリ音楽院ハープ科教授)の「泉」は、恐
ろしく速かったなぁ・・・。休憩時間の後のプログラム⑦、⑧の曲は、“サウルハー
プ”という日本製の小さな楽器を使って演奏しました。ちょっと古風な音をだす、か
わいらしい25弦のハープ(グランドハープは47弦)です。ちなみに、大村さんの
トークも何だかかわいらしい感じでした。
 自分の知る範囲では、日本のハーピストは殆どが女性ですね。男性ハーピストは、
作曲家でもある朝川朋之さんと、あともう一人(名前は雨宮さんといったかな・・・)
しか、今のところ知りません(朝川さんの曲はとてもいいです)。だから、ハープっ
て女性の楽器みたいに思われているようです。でも、ハープって、もともと男性の楽
器なんだぞ!楽器を肩に乗せるというスタイル自体、男性の力仕事っていう感じがし
ませんか?本邦で名のあるハーピストは、大体がヨセフ・モルナール(最近、日本で
のハープ指導の功績が認められて本国のフランスから勲章を受けました)か、三村勉
(世界で初めて、体系的なハープの教則本を出版した日本人)の系譜に繋がる筈で、
この偉大なるお二人はどちらも男性なのだ!だから、男性だってハープを弾いていい
と思います(でも、女性が演奏した方が絵になるな、なんて自分で自分に反論したり
して)。それに、ハープは今の所、あまり普及していませんね。ピアノやギターとま
ではいわないけれど、せめてフルートがヴァイオリンくらい、もっと一般に広まって
もいいのではないかと思ったりします。だから、ハープの先生もなかなかいない。こ
の近くでは、宮城県に2人、福島県に1人(+α)。山形県内にはいなくて、グラン
ドハープの個人所有者も山形市に1人(男性との噂!)らしいです。ただし、裕福な
高校やサークルのブラスバンドの団体所有が何台かあるようです。
 あーあ!自分がもっと若くて様々な制約がなかったら、どっかの音大の別科ハープ
コースに何とか入学して、2年くらい集中的にレッスンを受けたかったなぁ・・・。
だって、ハープって原理は原始的な楽器だけど、他の楽器にはない独特なよさがある
んだもん。イギリスでワトキンス(ロンドンフィルのハープ奏者、曲ではファイヤー
ダンスが有名)からレッスンを受けたという自分のハープの先生(女性)がうらやま
しい・・・(いつのまにか、文章が愚痴っぽくなってしまった)。
 さて、今日の演奏のことに話題を戻せば、マックスウェルの「ひき潮」に、とても
気持ちが入っていました。ハープクラシックのレパートリーを一通り弾きこなしつ
つ、なおかつこういうロマンティックなポピュラー曲が大すきなんだなと、ハーピス
トの気持ちを汲んでいました。そういえば、前回も、アンドレ・ギャニオンの曲に一
番気持ちが入っているように聞こえたなぁ。
 ともあれ、フルコース料理のような、重みと格式のある演奏会もいいけれど、厳選
された紅茶とクッキーみたいな、こういう小さな気軽なコンサートも素敵だなぁと思
いました。冬に開催されるのもいいと思います。雪が続いてちょっと寂しくなってい
る心に、灯火を配ってもらったような気持ちになります。ですから、こういう企画が
今後も続いていくことを願っています(チケット代1,200円は遠慮しすぎかなぁ。自
分なら2,000円でも買う、なんて、よけいなコメントを最後に書いたりして)。

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「か」さんのコンサート体験記3

2018-05-11 10:44:00 | 「か」さんのコンサート体験記
コンサートに行きましたー報告(その3)

(財)米沢上杉文化振興財団 主催
KOTARO OSHIO CONCERT TOUR 2005
        Panorama
平成17年10月23日(日) 18:30開演
伝国の杜 置賜文化ホール

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
 これまで、クラシック以外で長く興味を引かれた音楽家というと、私の場合、イー
ジーリスニングに分類されているピアノの作曲・演奏の「中村由利子」さん、ボサ・
ノヴァの「小野リサ」さんです。が、数年前、何気に(この何気にというのが人生に
とって無視できないものでして・・・)深夜のNHKの番組を観ていたら、誰か歌手と
一緒にギターを演奏していたのが、この「押尾コータロー」さんなのでした。ギター
のことは、私には殆ど分かりません。でも、弦の中間を軽く押えて倍音を出す“ハー
モニックス”の何ともメロウなこと。かと思ったら、今度は、弦を叩いて音を出す
“タッピング”とか、左手の一本の指で弦を押えて、左手の別の指でその弦を弾いた
り、観ても聴いても何だかよく分からない技法を次々と使いこなして、その結果、2
人以上で演奏しているような、すさまじく迫力のある演奏になったりして。その夜以
来、押尾コータローの名前が忘れられなくて、CDも、ついにはギター用の楽譜も
(自分はギターは全くできません)買い揃えて、とりあえずピアノで弾いてみたりし
て・・・。インディーズ時代(いわゆるメジャーデビュー以前のことを意味するみたい
です)のCDまで買って聴いてみたら、アニメの「リボンの騎士」の音楽をギター1
本で弾いてたり。ともかくすごい人がいるなぁ~と思ってたのでした。だって、何度
CDを聴いても聴き飽きないんだもん。ちなみに、かのクロード・ドビュッシーは、
ギターを“小さなオーケストラ”と表現して、その楽器の性能をたたえたとか・・・。
 そんなある日、伝国の杜でコンサートをやるとのポスターを見つけて、「これっ
て、何かの錯覚?」と思って、自分のほっぺたをつねったりして(近くに人がいたの
で、あくまで心の中で)!で、発売初日にさっそくチケットを手に入れたのでした。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
 クラシック以外のコンサートに行くのって、かなり久しぶり。山形市での中村由利
子さんのコンサートを除けば、多分・・・・・、25年ぶり!演歌歌手の吉幾三さんのコ
ンサートに行った以来(何で自分が吉幾三のコンサートに行ったか、その経緯は全く
思いだせない・・・。行きたくて行ったのではなかったような・・・、ただ、周りの席のオ
バさん達のお化粧のむせるような匂いだけが記憶にべったりとこびりついているので
しゅ・・・)だから、会場に行って、プログラムもなかったから(ポップスの場合はこ
れが普通なのかなぁ)何の曲を演奏するかも分からず、いつもと勝手が違うんで何だ
かキョロキョロしちゃって・・・。会場の扉から、ライトアップのためのドライアイス
の煙なんかが漏れてたりして。とりあえず新譜のCDを買って、開演を待ったのでし
た。
 開演時刻になったら、あたりが真っ暗になって。かと思うと、マリンブルーの光で
ステージが照らされ始めて(照明効果を正確な色彩用語を使った文章で説明するのは
めんどうなので、あとはしません)、おもむろに押尾コータローが登場!!かっちょ
いいっ(注:結婚してて子どももいるとのこと)!新曲も含めて沢山の曲を演奏しま
したが、とにかくすごいんだなぁこれが。このホームページをご覧になる方は、多分
クラシックファンの方が多いと思いますので、これに沿って説明しますと、あの、
モーリス・ラヴェルの「ボレロ」だって、ギター1本で弾いちゃうんだよ!!これっ
てすごすぎない?(うわさによれば、この曲をギターソロ用に編曲できたのは世界で
2人だけとか・・・。チューニングをどうのこうのと工夫するらしい・・・。)かと思う
と、正座して、ギターで津軽三味線の曲を弾いたりして(さすがノリのいい関西人
じゃっ)。かと思うと、観客席をまわりながら、子ども客の前でドラエモンの出だし
を弾いたりして。器用だなぁ。ギターが死ぬほど好きなんだろうなぁ。ちなみに、こ
れほどの高度な技巧を使いながら(いや、それゆえに)、演奏中、体の何処にも無駄
な力が入っていない!技術については、ここが、とても重要な気がします。オーロラ
やスイスの湖からインスピレーションを受けて作ったという新曲の、何ともメッセー
ジ性の豊富なこと。クラシックの演奏では、よほど上手い演奏でない限り、はっきり
言ってこれ程のメッセージ性(注:政治理念とかじゃないからね)は受けないなぁと
か、後で考えさせられたりして・・・。アーティキュレーションも、実にのびのびとし
ていて。「自分も音楽が好きだし、あなたもそうでしょ?」って、ずっと問いかけら
れてる感じで。で、演奏を聴きながら、ひたすら「そうだよ、音楽が好きだよ」と無
言で答えている感じになったりして。あのメッセージ性を言葉にすると、こんな風に
なるのかなぁ。
 話が飛びますが、最近の研究によれば、生まれたての赤ちゃんには、五感(視覚、
聴覚、触覚、味覚、嗅覚)の区別がないんだそうです。「無様式知覚」といいます。
この未分化な状態で感じとられるものは、感覚の抑揚とか、強弱の変化とか、そうし
たものだそうです。多分、赤ちゃんの神経、筋肉、脈拍など全身も、その抑揚に時々
シンクロするのでしょうね。赤ちゃんの感覚の世界って、こんなものらしいのです。
で、大人になっても、音楽を聴いている時、無意識にこの赤ちゃんの時の未分化で無
垢な感覚が呼び起こされるらしいのです、いい演奏の場合ですけど。スポーツの時の
快感とも、知的好奇心を満たした時の快感などとも違った、何か原初的な快感(おお
げさにいえば、生まれてきてよかったといった類の幸福感)・・・。
 で、押尾コータローの演奏は、この原初的な幸福感に浸らせてくれるように思いま
した。そういえば、前回、須田真美子(敬称略)についても、演奏をシルクのドレス
の線を見ているみたいと、聴覚を視覚的に表現したり、赤ちゃんみたいに体が温まっ
て、全身が耳になったような感覚になったとか、これに近いことを書いていた自分
に、今になって気が付いたりして。やっぱ、音楽の力って、何かすごいもんだなぁ
と、つくづく思いました。
 ところで、どんなに押尾コータローの演奏に感激しても、会場で浮いちゃうといけ
ないから「ブラボー」は決して言うまいと自分に言いきかせてコンサートに行ったの
でした(笑)。しかし、演奏を聴いて感激したけど、どっかの兄ちゃん達があげてい
るような、裏声の、ヒューヒューとかいう声も、何だか恥ずかしくて、少なくとも自
分には出すことができなかったのでした(爆)。やっぱり場慣れって大事っすね、
ちゃんちゃん(こんなんで、上手く話しにオチがついたのかなぁ・・・)。押尾コータ
ローの生演奏は、またいつか聴きたいな。(文責は「か」)

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「か」さんのコンサート体験記2

2018-05-11 10:41:31 | 「か」さんのコンサート体験記
コンサートに行きましたー報告(その2)

須田真美子コンサート・ソサエティ 主催
須田真美子 ピアノリサイタル
2005年10月14日(金)19:00開演
伝国の杜 置賜文化ホール

プログラム
①ハイドン ピアノ・ソナタ第52番 変ホ長調 Hob.ⅩⅥ
②シューベルト 即興曲 op.142-2 変イ長調
          ピアノ・ソナタ 第13番 イ長調 op.120
③ショパン バラード 第1番 ト短調 op.23
             第2番 ヘ長調 op.38
             第3番 変イ長調 op.47
             第4番 ヘ短調 op.52

※※※※※※※
 須田真美子(敬称略)のコンサートの、自分の思い出といいますと、数年前のチェ
コフィル弦楽チームとの室内楽、そして、その前の高畠でのピアノソロ、もっと前の
高畠でのチェロとのデュオ。記憶にあるその細かい内容の全てはここには書き尽くせ
ませんが、モーツアルトのピアノソナタイ短調第1楽章の16分音符が長く続くフレー
ズ部分の、何とも流暢で淀みなく、まるで白く輝く上等のシルクのドレスの滑らかな
線を見ているような感覚、ベートーベン「月光ソナタ」の気高さ。細かい技巧では、
オクターブ奏法の時、ほんのわずか、気が付くか付かないかの微妙な上の音の先行に
よる、高音と低音それぞれが調和しながら、しかも双方とも綺麗に歌って聞こえる効
果などなど・・・。いったいどういう練習・修行を重ねるとここまで素晴らしい演奏
ができるようになるんだろうと、天上に美しく輝く月を「とってくれろ」とせがむ子
どものような心境になったり、ただただ畏敬の念を持ってしまうというか、もう、思
考も言葉も感覚も簡単にはまとめられない程で・・・。そんな期待を抱いて今回のピ
アノリサイタルを聴きに、万難を排してでかけたのでした。

※※※※※※※
 優雅な仕草で須田真美子ステージに登場。ピアノにそっと左手を添えてご挨拶のお
辞儀(何か、ピアニスト1人の挨拶というより、ステージのピアノと一緒にご挨拶と
いった感じだね)。
 まず、ハイドンのピアノソナタ。作曲された時代背景のせいか、ハイドンには鍵盤
楽器奏者への思いやりが欠けていたのか、装飾過剰なフレーズに満ち満ちたピアノ
曲。でも須田真美子は弾きこなしてしまう・・・。まるで、伝国の杜のピアノと、ハイ
ドンをしっかりと“調教”しているかのように。あのロンド形式の3楽章最初の連打
の意味付けも素晴らしいこと。
 次に、シューベルト。このピアノソナタはシューベルトの作曲技術がちょっとショ
ボかった頃の作品なのでしょうか。1楽章の展開部のあっさりしたこと・・・。3楽
章のワルツの混入の何だか唐突なこと。でも、これまた須田真美子は部分、部分で雰
囲気を変えて弾きこなしていましたね。
 休憩の後には、ショパンのバラード全曲。その中で最もおなじみの第1番。ジーン
と来ました!しかし、演奏を聴いていてもっと凄いことがおきたのは第2番から。
すっかりピアノの音に魅せられて、音に体全体が包まれているような感覚に陥って、
体がとても心地よく温まってきて(まるで、寝ている時の赤ちゃんのぬくもりみたい
に)、でも頭はしっかり冴えていて、ひたすら「音」に引き寄せられていて・・・、
自分の体全体が耳になってしまったような、本当にトランス状態(催眠状態)に入っ
ている自分を自覚しました。こんな体験は初めてです。そのトランス状態は、4番の
バラードの最後まで、絶えることなく続いたのでした。凄い!これが「音楽」の真の
力なのでしょうか。もはや、この演奏は名人芸ではなく、神業と言ってもいいよう
な・・・。そしてこれは、技巧的な「凄さ」のレベルとは質的に違うものでしょう。
 でも・・・、です。プログラムにちょっと違和感が・・・。シューベルトの即興曲変イ長
調と、その後のピアノソナタのイ長調の半音分ずれた続き方に何だか違和感を覚えま
した、少なくても自分には。この指摘はちょっと生意気でしょうか。即興曲の方は、
アンコールで演奏してもよかったように思いました。
 ともあれ、かくも素晴らしいコンサートを主催された裏方の皆様にも、厚く感謝申
し上げる次第です。(文責は「か」)

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「か」さんのコンサート体験記1

2018-05-11 10:36:39 | 「か」さんのコンサート体験記
HP移設に伴い、過去にいただいたコンサート体験記をこちらにお引越ししました。

ブログカテゴリー《「か」さんのコンサート体験記 》からお読みいただけます。

「か」さん、その節はHPの充実にご尽力いただきまして、本当にありがとうございました♪



コンサートに行きましたー報告(その1)
平成17年度置賜文化ホール自主事業
山形交響楽団演奏会
2005.9.25 18:30開演
伝国の杜 置賜文化ホール

プログラム
①ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番ハ短調作品18
  ピアノ:清水和音(しみず・かずねって読むんだよ)
②ベートーベン:交響曲第7番イ長調作品92
  指揮:阪哲郎(ばん・てつろうって読むんだよ)

私の服装:上、イクシーズの秋の新作上着(最高級品ではありません)、下、黒い綿
パン。つまり、みすぼらしくない程度のカジュアル。
 (ちなみに、会場に行ったら、煌びやかで重そうなネックレスを着けて黒いソワレ
を着ていたセレブな(体格もセレブな)おばさんがいて、とても目立っていまし
た。)
 自分の服装は失礼にあたらないだろうと思いつつ、1つ難点を自覚していました。
つまり、隣の席にはやや落ち着きのない7歳の男児が・・・(自分が連れていった、
自分の子供)。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
 ある日、このコンサートのポスターを見て、清水和音のお写真も見て、「懐かしい
な~、清水和音の生演奏を聞くなんて、17年ぶり位になるな~。前は、山形市で聞
いたな~。ベートーベンの月光ソナタと、リストのソナタロ短調だったな~。ソナタ
ロ短調はアグレッシブ(攻撃的)だけど完璧な演奏で、総じては満点だったな~。で
も、月光ソナタが思いっきり手抜きの演奏で、腹がたったな~。何で手抜きしたのか
な~、山形は田舎だから、許されるとでも思ったのかな~、ちくしょっ!演奏終了
後、壇上の清水和音に、リボンで飾ったワインをあげてた女性はいったい誰?あげな
くていいのに!・・・・・でも、今度の演奏会では真面目に弾いてくれるかな~。で
も、また手抜きされると嫌だから、当日よっぽど暇だったら、そして当日券があるの
を電話で確かめられたら、聴きに行ってもいいかなー」との思いが一気に頭をよぎり
ました。次にピアニストの顔写真を見てよぎった思いは・・・「しかし何だなぁ、ロ
ン・ティボ(ショパンコンクールやチャイコフスキーコンクールにほぼ匹敵するよう
な、超格上の国際コンクールだぞ!最近、盲目の日本人ピアニスト、梯さんが2位を
受賞しているのだ!その人はショパンコンクールではワルシャワ市長賞を受賞したの
だ!)で優勝した頃(()の中が長すぎるっつうの!読んでて文が繋がり難いぞっ
!)、清水和音は、フランスでアンファンテリブル(恐るべき子供、つまり、恐ろし
いほど才能の輝いている若手)とも称され、しかも、俳優の渡辺徹の兄弟ではないか
とまで噂された程とってもハンサムだったのに、それから20年も経つと、ハンサム
というよりは・・・アディユルトテリブル(怖いおっさん)とでも称した方がいいの
か・・・(失礼な表現でしたらお許し下さい。文責は全て筆者にあります)」との感
想でした。(頭の中ではほんの一瞬の思考でも、文章として書くのは実に大変じゃ
!)
 ともあれ、コンサート当日、自分は暇で、側では7歳の子供がぐだぐだしていたの
で、伝国の杜に電話で問い合わせして、思いつきで子供も連れて行くことにして、当
日券で会場に入ったのでした。子供がマナー違反をしないかとの恐怖におののきつ
つ、演奏にわくわくしつつ、いわゆる複雑な面持ちってやつですね(何のこっ
ちゃ)。
 開演5分前、私には始めての体験。指揮者とピアニストがマイクを持って壇上に登
場してトークを始めるじゃありませんか!「ツアー3日目だけど、今日は会場の響き
もいいし、ピアノもいいし云々」とご満悦の和音さん。(確かに、ピアノは一応スタ
ンウェイだけど、このホールってそんなに音響がいいの?高畠の“まほら”の方がい
いと思ってた・・・)「ピアノは二十歳の女性みたい」との訳のわからんことを言い
出す和音さん。(ホントは何を示しているかは分かりますけど、なんて、偉そうに・
・・)。こういう形式を“プレコンサートトーク”と呼ぶのだそうでして、最近の新
しいスタイルなんでしょうか。でも、黙っておもむろに演奏が始まるより、演奏者に
親近感を持てて、いい感じと思いました。
 改めてオーケストラ全員、そして、指揮者とピアニストが登場。会場、拍手(よう
こそ米沢に来て下さいました、を意味する拍手だよ)。そして演奏開始。
 手短に感想を書きます。①会場右側後ろに席をとってよかったなぁ、ピアニストの
手は見えないけれど、こっちの方が音がいい。和音さんもそう言ってたし!②第1楽
章の第2主題再現部のホルンがのろい、おーい、テンポ大丈夫かー、結果は・・・全
然大丈夫でした。何のことはない、プロの小技(表現方法)でした③あっ、子供が貧
乏ゆすりを始めたっ。近くの客の顰蹙をかいそう・・・そうだ、足で抑えてやれっ!
と自分の足で、子供の足を抑える、責任者父兄の私④ロマンティックな第2楽
章...ピアノユニゾンがちょっときつい響き...そうか、ここは音響がよすぎ
て、しかも狭いホールだもんね⑤テクニカルな第3楽章、自分なんかには、一生か
かっても弾けない難曲、でも、さすが和音さん、軽々と弾きこなしてしまう、すげっ
!⑥最後までピアニストとオーケストラの息がぴったり!相性よすぎる。あっ、ツ
アー3日目だったね⑦子供が親のいうことをきいて、1楽章や2楽章のあとに拍手し
なくてよかった。楽章構成の曲は最終楽章が終わってから拍手するのが、大前提、基
礎の基礎、常識中の常識だから。
 終了後、会場拍手の渦(いい演奏をありがとうの意味)。演奏者も笑顔。指揮者と
和音さんが退場しても、しばらくなりやまない拍手。それに応じて繰り返し登場して
きてくれるお二人。隣で退屈そうにしていた子供も何故か一緒になって拍手。その親
(自分)は、あまりの好演に「ブラボー!」を叫んでしまった(女性演奏者にはブラ
バー、複数演奏者にはブラビーだよ)。確かにすばらしい演奏で、すばらしすぎる演
奏で、これがメインディッシュみたいで、次のベートーベンの曲がひけをとらないか
ちょっと心配になったりして。しかし、何だなぁ、完璧な、ミスタッチの一つもない
演奏だけど、何だか、名スポーツ選手のプレイを見ているみたいで、いまいち情にこ
ないなぁ。あの、何ともいえないジーンという感動はなかったなぁ。私に言わせれ
ば、和音さんは、「聴かせる」のではなく、「見せる」が売りかぁ?もう一歩、聴衆
へのサービスが欲しいなぁ。だって、演奏って、人に聞かせるためにするもんじゃな
いの?見せもんじゃないよ。俺たちはお金を払って聴きにきてるんだぞ!との感想も
一緒に浮かぶから、自分でも不思議。何でだろ?
 残念だったけど、子供がかわいそうだったんで、ベートーベンを聴かずに帰宅。子
供に感想をきくと、「・・・・・」演奏中何か考えてた?「・・・じゃんけんのこ
と」はっ?!ガーン!!子供っていったい・・・どんな感想でも怒るつもりはなかっ
たけど、あぁ、子供ってこういうもんなんだと思いました。ところが、自宅のボロピ
アノで、ピアノ協奏曲の主題を幾つか弾いてみたら、「あっ、さっき聴いた曲だ」と
反応する子供・・・!ん~~実に不可解!!でも、こういうコンサートの楽しみ方も
ありかな、と一人で納得。しかし、実に子供って不思議じゃ。
 ちなみに、その後何気なく教育テレビを観たら、またまたオーケストラの演奏。曲
は、チャイコフスキーの「大序曲1812年」。「この曲は、あとで大砲がなるぞ!
教会の鐘の音もなるぞ!」というと、突然オモチャを手放してテレビの前にかぶりつ
き始める、7歳と2歳の男児合計2名。ホントに大砲を鳴らすかなぁ、と思っていた
ら、偽大砲から音を出し始める律儀なNHK交響楽団。NHKホールに充満する煙。子供は
大喜び。「NHKっていったい・・・」と、二重の意味で感動する私。何だか、疲れる
一日だなぁ。「この曲は、曲を作った人の国が、超強いフランスのナポレオンをやっ
つけた記念に作られたんだぞ」といっても無関心の長男。「じゃ、オーストリアもエ
ジプトも神聖ローマ帝国もプロイセンも倒したナポレオンを、どうやってロシアが
やっつけたと思う?」というと、ようやく関心を示して考えこむ長男。「大砲?」ち
げーよ。ヒントは、ロシアは寒いってこと。「雪玉?」ちげーよ。雪玉じゃナポレオ
ンには勝てねーよ。「・・・」じゃ、この曲の名前と作曲者の名前を明日の朝まで覚
えていたら、教えたるよ。「1821、ん?1812年。チョコレート?ん?あ、
チャ・・・」覚え方は、“茶色ふすま”だぞ(チャイコフスキーファンの方には申し
訳ありません)「そか、チャイロ、あ、コ、・・・ブスキ?」と眠りにつく長男。な
んだかんだで、充実した一日でした。ちゃんちゃん。(文責は全て「か」)

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