without a trace

ヤマザキ、フリーターを撃て!

MON-ZEN

2006-10-31 03:02:10 | 映画
 これは面白いよ。ドイツ映画独特のよくわからない脱力感が全開だ。30代くらいのドイツのダメダメ兄弟が日本でちょいロストしちゃう映画。人生に疲れた男二人が禅を求めて日本に来るという話。mon-zenとは石川の門前町にある寺のこと。タイトルのmon-zenはfドイツ語わからないんだけどもフランス語なら私の禅になるし、門前払いかと思いきやちょっと違う。石川の門前町にある寺のこと。そこを目指してゴーゴージャパンだぜ。ナチス時代のドイツと共同制作だった「新しき土」と比べると面白いね。あの映画は原節子主演で寺の卍を写してさすが同盟国であるなんてやってたからw

 兄の一家は子供も多くにぎやか。しつけはすべてが妻の責任としていて、うるさいと妻のせいだと決めつける。ガキがうるさいと彼はさっさとジョギングに行き、帰りはタバコ吸いながら帰ってくるという矛盾しているような男。仕事はできるけど家族は妻にまかせっきりで横柄というタイプ。
 一方の弟は子供のいない夫婦。彼は禅にとりつかれている。朝から禅プレイで人生のわずらわしさを落ち着かせてから働きに出かけるという生活。夫婦は無農薬野菜を食べてそうな世界市民タイプ。彼は家を回って風水アドバイザーみたいな事をしている。ひさしぶりにいく日本旅行に心躍る毎日だ。今度はなんと妻を置いて一人で禅の寺で修業という何かを得るためのアジア旅行なんだ。

 兄が仕事から帰ると妻と子供はいない。置手紙によると弁護士から話がいくのでよろしく。なんてことだと酒に溺れて落ち込んでしまう。この兄弟は両親は死んでおり、ウマは合わないがお互いしかいないので兄は弟に頼ってくる。寂しくて死にそうだからおれも日本に連れてけこの野郎!連れてかないと自殺するぞ。まったくしょうがないバカ兄貴だと二人で仕方なく日本に旅立つのだった。酔いが冷めると兄は言う「おれは中国なんて行きたくないよ」。もうチケット買ったよ、しかも中国じゃないんだよ兄貴。こんな兄弟による珍道中は始まるのだ。

 
 以下ネタバレ


 まずは東京に来る。兄はベッドのサイズを測って1メートル75ってどうやって寝るんだよと頭を抱え、弟は風呂でお祈りのようにしてリラックス。細かい兄と無理にリラックスしないと自分を保てない弟という二人の性格が見事に別れている。出かけるときにパスポートと旅券は持ったほうがいいかな。日本は安全だからホテルで大丈夫だよなどリアルすぎる会話が繰り広げられる。

 東京の町は混雑していて覚えられない。とりあえずkawasakiとEPSONのネオン看板でこりゃ便利だなと覚える。調子乗ってバーで乾杯。なぜか600ドルも取られてお前らどこで飲んでるんだよとw 帰ってくるとあれれネオンが消えている。どうしよう迷ってしまった。

 弟の妻に電話すると地球市民の彼女は浮気に忙しい。ホテルの電話を探してくれと頼むもキスに忙しくて切れてしまう。銀行のカードは使えず、どうしようとついにパチンコに全財産(300円)を賭ける事に。全部無くしてダンボール軍団を眺めはじめる。ホテルに戻れないならこれだとダンボールハウスを作って墓地で泊まる。バックパッカーにドヤ街が流行してるらしいけど、その生活をリアルでしてしまう。万引き、食い逃げとお前ら日本に何しにきたのかとw

 なんとかバイトにありつき金を稼いでようやく門前へ。3時半にたたき起こされておいおい何なんだここはと驚いてばかり。しかもこれ以上やる必要があるというほどに掃除をさせられる。ちょいデブの弟は雑巾掛けができなくて泣いているダメ人間全開。明け方から水を頭からかぶり、掃除、延々と続く読経、食べ方も厳格に決まっている食事。文句たらたらだけど何とか耐えていく、大金はたいて日本に来たんだから。

 そこの坊さんが言うには「汚い綺麗が問題なのではない。不安や心配を掃くために掃除するのだ」。ここではすべての生活が単調で単純化されている。すると彼らの感覚は変化し始めて自己に向かっていく。兄は弟にお前はいつだって几帳面で怖がりで何もできなかったと言い、ああおれは不器用で何もできなかったさ、でも兄貴は自分のことしか考えないから家庭が崩壊したんじゃないかと。自己に向かうのは厳しく他者を責めている。

 坊さんは例えばなぜお茶をこぼすのかという話をする。運ぶ時に茶碗の素晴らしさや温かさに匂いに気づかないからだと。茶をこぼすまいと考えているからこぼしてしまう。失敗してもいいのだよと。またもや感動して泣き始める弟。ついに雑巾掛けも少しだけどできるようになって、おれだってできるんだぞと。清掃するたびに自分のガラクタを取り除いて自分が大きくなっていくのを理解していく。兄の気持ちも変化し、妻に対する怒りしかなかったが、出て行ったのは出て行ったという事実でしかないという現実を掴む。

 兄弟は感謝して寺を去っていく。そして弟は秘密を話し、兄は受け入れていく。二人で東京に戻りまた墓地でテントを張って読経していく。


 まったく期待してないバカ映画だと思ってたんでヒット。几帳面な兄と強迫神経症ぽい弟という、なんかドイツだなって頷いてしまういかにもっぽいキャラで憎めない。禅に日本人の自分がドイツ映画から興味を持たされてしまったという事実。
 ★★★1/2


2 コメント

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門前町 (まいじょ)
2006-11-20 10:35:10
 この記事を読んで初めて知りましたが、面白そうな映画ですね。メモしておきます。
 門前町は今は合併して輪島市になってしまいましたが、曹洞宗大本山の總持寺の文字通り「門前町」として栄えたはずですが、寺そのものが川崎に移転した結果今はすっかり寂れ、能登半島をめぐる観光客もほとんどが素通りするような町です。でも、黒島地区の街並みや、總持寺祖院のがらんとした境内など、静謐な雰囲気がたまりません。修行するにはもってこい、というほど何にもない町なのです。
 昨年私が行ったときの写真はここです。
 ↓
http://www.myjo.org/photo/01170200.htm
能登 (so-jaded)
2006-11-21 00:35:30
 映画でも東京と門前町を比較していて、東京の騒々しさと門前の静けさのギャップが描かれてました。それがドイツ人の視点からというのが興味深いです。
 能登半島は一度は行ってみたいですね。情報ありがとうございます。

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