元気を取り戻した母親──サンチャをいたわるようにして、一同はベッドの周りに思い思いに座を占めていた。サンチャのこれほど幸福そうな微笑みを、長年一緒にいた息子のオルランドも、見たことがない。
手放して、二度と会えないはずだった娘。
その娘が会いにきてくれた。
美しい孫娘まで連れて。
その孫娘は、もうすぐ花嫁になるのだという。恋人を集落に待たせてまで、自分を迎えにきてくれた……そのことが、サンチャにはわけもなく嬉しかった。
そして、もう尽きようとしていた己の生命を甦らせたのは……
サンチャの脳裏に、忘れられない面影が浮かぶ。
夫のいる身でありながら、つい心惹かれずにはいられなかった人。
銀の髪をした、美しい人。
自分に双子を与えて去っていった人……。
一同から少し離れた部屋の隅で佇んでいる青年に尋ねれば、あの人の正体がわかるかもしれない。サンチャの胸はときめいた。
(でも……)
やめておこう。
自分は、今、充分幸せだ。分を越えた幸せを望んではいけないだろう。
他方オルランドはオルランドで、奇跡にも思えるできごとの余韻に浸っていた。振り返れば、貝の髪飾りをふたつ欲しくなったときから今日までの道のりは、何者かに導かれていたような気がする。
「かがり火と、しぶきと……」
青年──風神が、呪文のように呟いた。エスペランサが何かを期待するように顔を上げる。また、何か起こるのではないかしら。
その期待は、はずれなかった。
エスペランサの髪にあった白銀の櫛。それが、きらきらと輝くシルバーブルーのベールに変わったのだ。
手放して、二度と会えないはずだった娘。
その娘が会いにきてくれた。
美しい孫娘まで連れて。
その孫娘は、もうすぐ花嫁になるのだという。恋人を集落に待たせてまで、自分を迎えにきてくれた……そのことが、サンチャにはわけもなく嬉しかった。
そして、もう尽きようとしていた己の生命を甦らせたのは……
サンチャの脳裏に、忘れられない面影が浮かぶ。
夫のいる身でありながら、つい心惹かれずにはいられなかった人。
銀の髪をした、美しい人。
自分に双子を与えて去っていった人……。
一同から少し離れた部屋の隅で佇んでいる青年に尋ねれば、あの人の正体がわかるかもしれない。サンチャの胸はときめいた。
(でも……)
やめておこう。
自分は、今、充分幸せだ。分を越えた幸せを望んではいけないだろう。
他方オルランドはオルランドで、奇跡にも思えるできごとの余韻に浸っていた。振り返れば、貝の髪飾りをふたつ欲しくなったときから今日までの道のりは、何者かに導かれていたような気がする。
「かがり火と、しぶきと……」
青年──風神が、呪文のように呟いた。エスペランサが何かを期待するように顔を上げる。また、何か起こるのではないかしら。
その期待は、はずれなかった。
エスペランサの髪にあった白銀の櫛。それが、きらきらと輝くシルバーブルーのベールに変わったのだ。