ギリシャからローマへの船旅の長さは良くわかりません。地図で見るとまぁ2、3日な感じもするし紀元前の船なら数ヶ月かかったのかもしれないし。ともあれオクタヴィアヌスとアグリッパは船の上で飲んでばっかり…、というわけではなくていろいろ話し合います。まぁそのほとんどはオクタヴィアヌスは船酔いでだるそうにしてたはずですが。
彼らが話し合うべきは四つ。
①今後のローマ帝国をどうしていくか。
終身独裁官を継いだオクタヴィアヌスは当然、ローマ帝国のリーダーとしていろいろやっていかなければいけません。どうするかね~という話です。こりゃまぁなるようになるか~としか考えられません。やったことないしね~って感じなので2人とも「ま、いいじゃん」で終わり。
②元老院たちへの対処方法
若く無名のオクタヴィアヌスがカエサルの後を継いだのであれば元老院は反発をしないまでも冷たく当たってくることは明らかです。「オクタヴィアヌス?しらねーよ」って感じでしょう。更にオクタヴィアヌスがちょっとでも権力のニオイをさせれば自分たちの権力が無くなることには敏感な元老院、じゃまくさそうです。
このへんはオクタヴィアヌスの得意なところ。アグリッパは良くわかんないので(つーか元老院の人たちなんて会ったこともねーし)「おっくん頼むわー」と言う感じ。
③アントニウスへの対処
カエサルと地位的にはほぼ一緒だったアントニウスですがカエサルの後をオクタヴィアヌスが継いだことで勝手にライバル視してくる可能性があります。アントニウスは軍勢も持っているのでそれも面倒くさいです。更にアントニウスはカエサルの愛人だったクレオパトラに言い寄ってるみたいです。クレオパトラはクレオパトラで「カエサルの子を産んだのに認知もされないなんて!どうして30分だけなのよォォォォ!」と怒ってます。アントニウス&エジプト連合軍になりそう。うわ、めんどくせー。ただし戦うのは得意なアグリッパ。戦うよ~。
④カエサル暗殺首謀者について
二人にとっては父以上の存在であるカエサルを殺したやつらを許しては置けません。
「ブルータス、お前もか」のブルータス。
アグリッパは「ぜってー殺す!」と思っていましたがおっくんは何故か「ま、ほっときゃいいじゃん」と言い張ります。「え~~」という感じですがおっくんには考えがありました。まず、カエサルが死んだことに元老院が少なからず喜んでいるはず。更に殺した人間に対しては表立っては言えないまでも感謝している人も多いでしょう。ならば自分たちがローマに着く前に元老院が何かしら保護をしているはず。そんな人たちをいちいち探して殺して、とやっている暇はありません。だから放置。
(結果的にこの予想は正解でした。カエサル死後、犯人たちはすべて国外追放の刑にされていました。国外追放ということはつまり生きてていい、ということ。元老院は犯人たちを守ったのです。しかし幸か不幸かカエサルの恨みか犯人たちはろくな死に方しませんでした。結局、追っかける必要はなかったのです)
ローマに着いて以降ですが、まず③から。
結構大きな戦いになりました。ただしここはアグリッパが得意とするところ。ばっしばっしと戦功を重ねていきます。更にありがたいことにアントニウスがクレオパトラと付き合い始めたことでローマ人の中でのアントニウスの人気はがた落ち。というのもローマでは昔から外国の女王が来ると良くないことが起こってきました。権力者が外国の女王を連れてくる、と言っただけでローマ市民はブーイングだったのです。更に今回、アントニウスはローマのけっこういいところの娘だった嫁をほったらかしてカエサルの昔の女、しかも本妻ではなく愛人を連れてきたのです。その上、クレオパトラは絶世の美女。うーむ、突っ込みどころ満載ですね。「妻をほったらかし」で女性からは総すかん。男からも「マヌーサ入ってるね~」。付き合う相手ってのは結構大切ですなぁ。
アントニウスとクレオパトラ。後ろの侍女たちですらひそひそ話。
おかげでアントニウス指揮下の兵も士気はがた落ち。そこに武人アグリッパが行ったのですから負けるわけがありません。
またさっきも書いたとおり④は放置でOK。
そして①と②ですがこれは明らかにオクタヴィアヌスの功績なので今後、オクタヴィアヌス伝を書くためにとっておきます。簡単に言うと誰が想像していたよりもオクタヴィアヌスはうまくやった、と言うことです。
オクタヴィアヌスは持ってる権力を手放したり、いらない権力をもらったりちまちまやることで実質的なローマ帝国の支配者となって行きます。アウグストゥスが素晴らしいことはそういう権力闘争を一切、戦争なしでやったこと。なんか平和的に話し合ってるうちに何でか偉くなっていっているのです。
戦争では負け知らずのアグリッパ、権力闘争では負け知らずのオクタヴィアヌス、超いいコンビです。元老院は「結構、話分かるやつじゃ~ん、オクタヴィアヌスってさー」と思うようになり、ローマ市民も「若いけど偉い人やね」と言い出し始めました。
この頃、オクタヴィアヌスは名前を「アウグストゥス」に変えます。戦争から帰ってきたアグリッパ、もう友人をおっくんとは呼べません(いや、多分最初から呼んでないけどね)。お互い30代間近。ローマ時代には男は30代になったら一人前、という感じですからおっくんどころかおっさんです。
アントニウスも倒し元老院もとりあえず抑えた二人、合言葉を決めます。それは「パクス・ロマーナ」、パクス、は平和、ロマーナはローマの、という意味なのでつまり「ローマの平和」、そのまんまかい。
弱小国だった昔とも、国境沿いの蛮族と小競り合いをしていたカエサルの時代とももう違います。蛮族はとりあえずカエサルが倒してくれました。更にカエサルは遺言で「ガリア地方はこれ以上広げるな」とも言っていました。領土拡大の時代はとりあえず終わったのです。これからはローマ帝国をどれだけ磐石にしていくか、ということが大事。アウグストゥスとアグリッパはそれに生涯をささげることになります。
…とここで、もしかするとこう思う人もいるかも知れません。武人アグリッパにとって戦乱の時代が終わったと言うのであれば活躍の場所もなくなったのではないか、と。
これは僕の個人的な考えですが古くから名武人と言われる人には2つのタイプがあると思っています。
ひとつは戦いが好きで好きで~大好きで~刀を持ったらはなさない!って人。たとえば呂布や張飛なんかですね。こういう人は戦場ではバンバンやってきますが内政になるとなかなか活躍できません。活躍できないどころか「ひまだぁ!」とか言いながら隣の人ぶん殴って余計なトラブル起こしたりします。いますよね、こういうトラブルメーカー。
もうひとつのタイプは戦いもひとつの手段と考えていてそのほかのことでもそつなくこなす人。「治世の能臣、乱世の武人」とでも言いましょうか。武力80知力75くらいの人です。
アグリッパは正に後者。戦争も忠誠を示すための一つの手段でした。
幸福なことにアグリッパはパクス・ロマーナを目指す時代にも自分の仕事を見つけます。それは公共事業。平和のためにはさまざまなインフラが必要です。みんなが集まる広場も必要ですし、水道だって必要です。アウグストゥスはアグリッパの「国に尽くす気持ち」と「細かいところにいろいろ気づくところ」をしっかり知っていましたから様々な公共事業を任せます。まぁ戦場で兵士たちに「いけー!」と命令するのがうまいんだから工事現場で「わっしょーい!」と指示するのもうまかったんでしょう。それに元老院議会なんかに出て小難しい話聞いているよりは現場で労働者たちと仕事の後にぶどう酒飲みながら目だし帽かぶってるほうが楽しいし。
今のイタリアにはアグリッパが残した公共施設の遺跡がたくさん残っているそうです。
そのうちのひとつ、フランスに残る水道橋、ポン・デュ・ガール。
今でも下の部分は道路に改装され使われています。さらに世界遺産にもなっています。
アグリッパの献身とアウグストゥスの冷静な判断力でローマ帝国の力はどんどん強固になっていきます。相変わらず2人は仲良し。アグリッパにとってアウグストゥスは上司としても友達としても欠点は何ひとつありません。それはアウグストゥスも一緒。たぶんアウグストゥスはいつも自分の相談に乗ってくれ、自分が出来ないことをちゃんとやってくれるアグリッパに感謝の気持ちを忘れたことは無いでしょう。
でも、このアグリッパ伝の最後は少しだけ悲しい結末を迎えます。悲劇はアグリッパの献身によって生まれるのです。
…to be continued.
彼らが話し合うべきは四つ。
①今後のローマ帝国をどうしていくか。
終身独裁官を継いだオクタヴィアヌスは当然、ローマ帝国のリーダーとしていろいろやっていかなければいけません。どうするかね~という話です。こりゃまぁなるようになるか~としか考えられません。やったことないしね~って感じなので2人とも「ま、いいじゃん」で終わり。
②元老院たちへの対処方法
若く無名のオクタヴィアヌスがカエサルの後を継いだのであれば元老院は反発をしないまでも冷たく当たってくることは明らかです。「オクタヴィアヌス?しらねーよ」って感じでしょう。更にオクタヴィアヌスがちょっとでも権力のニオイをさせれば自分たちの権力が無くなることには敏感な元老院、じゃまくさそうです。
このへんはオクタヴィアヌスの得意なところ。アグリッパは良くわかんないので(つーか元老院の人たちなんて会ったこともねーし)「おっくん頼むわー」と言う感じ。
③アントニウスへの対処
カエサルと地位的にはほぼ一緒だったアントニウスですがカエサルの後をオクタヴィアヌスが継いだことで勝手にライバル視してくる可能性があります。アントニウスは軍勢も持っているのでそれも面倒くさいです。更にアントニウスはカエサルの愛人だったクレオパトラに言い寄ってるみたいです。クレオパトラはクレオパトラで「カエサルの子を産んだのに認知もされないなんて!どうして30分だけなのよォォォォ!」と怒ってます。アントニウス&エジプト連合軍になりそう。うわ、めんどくせー。ただし戦うのは得意なアグリッパ。戦うよ~。
④カエサル暗殺首謀者について
二人にとっては父以上の存在であるカエサルを殺したやつらを許しては置けません。
「ブルータス、お前もか」のブルータス。
アグリッパは「ぜってー殺す!」と思っていましたがおっくんは何故か「ま、ほっときゃいいじゃん」と言い張ります。「え~~」という感じですがおっくんには考えがありました。まず、カエサルが死んだことに元老院が少なからず喜んでいるはず。更に殺した人間に対しては表立っては言えないまでも感謝している人も多いでしょう。ならば自分たちがローマに着く前に元老院が何かしら保護をしているはず。そんな人たちをいちいち探して殺して、とやっている暇はありません。だから放置。
(結果的にこの予想は正解でした。カエサル死後、犯人たちはすべて国外追放の刑にされていました。国外追放ということはつまり生きてていい、ということ。元老院は犯人たちを守ったのです。しかし幸か不幸かカエサルの恨みか犯人たちはろくな死に方しませんでした。結局、追っかける必要はなかったのです)
ローマに着いて以降ですが、まず③から。
結構大きな戦いになりました。ただしここはアグリッパが得意とするところ。ばっしばっしと戦功を重ねていきます。更にありがたいことにアントニウスがクレオパトラと付き合い始めたことでローマ人の中でのアントニウスの人気はがた落ち。というのもローマでは昔から外国の女王が来ると良くないことが起こってきました。権力者が外国の女王を連れてくる、と言っただけでローマ市民はブーイングだったのです。更に今回、アントニウスはローマのけっこういいところの娘だった嫁をほったらかしてカエサルの昔の女、しかも本妻ではなく愛人を連れてきたのです。その上、クレオパトラは絶世の美女。うーむ、突っ込みどころ満載ですね。「妻をほったらかし」で女性からは総すかん。男からも「マヌーサ入ってるね~」。付き合う相手ってのは結構大切ですなぁ。
アントニウスとクレオパトラ。後ろの侍女たちですらひそひそ話。
おかげでアントニウス指揮下の兵も士気はがた落ち。そこに武人アグリッパが行ったのですから負けるわけがありません。
またさっきも書いたとおり④は放置でOK。
そして①と②ですがこれは明らかにオクタヴィアヌスの功績なので今後、オクタヴィアヌス伝を書くためにとっておきます。簡単に言うと誰が想像していたよりもオクタヴィアヌスはうまくやった、と言うことです。
オクタヴィアヌスは持ってる権力を手放したり、いらない権力をもらったりちまちまやることで実質的なローマ帝国の支配者となって行きます。アウグストゥスが素晴らしいことはそういう権力闘争を一切、戦争なしでやったこと。なんか平和的に話し合ってるうちに何でか偉くなっていっているのです。
戦争では負け知らずのアグリッパ、権力闘争では負け知らずのオクタヴィアヌス、超いいコンビです。元老院は「結構、話分かるやつじゃ~ん、オクタヴィアヌスってさー」と思うようになり、ローマ市民も「若いけど偉い人やね」と言い出し始めました。
この頃、オクタヴィアヌスは名前を「アウグストゥス」に変えます。戦争から帰ってきたアグリッパ、もう友人をおっくんとは呼べません(いや、多分最初から呼んでないけどね)。お互い30代間近。ローマ時代には男は30代になったら一人前、という感じですからおっくんどころかおっさんです。
アントニウスも倒し元老院もとりあえず抑えた二人、合言葉を決めます。それは「パクス・ロマーナ」、パクス、は平和、ロマーナはローマの、という意味なのでつまり「ローマの平和」、そのまんまかい。
弱小国だった昔とも、国境沿いの蛮族と小競り合いをしていたカエサルの時代とももう違います。蛮族はとりあえずカエサルが倒してくれました。更にカエサルは遺言で「ガリア地方はこれ以上広げるな」とも言っていました。領土拡大の時代はとりあえず終わったのです。これからはローマ帝国をどれだけ磐石にしていくか、ということが大事。アウグストゥスとアグリッパはそれに生涯をささげることになります。
…とここで、もしかするとこう思う人もいるかも知れません。武人アグリッパにとって戦乱の時代が終わったと言うのであれば活躍の場所もなくなったのではないか、と。
これは僕の個人的な考えですが古くから名武人と言われる人には2つのタイプがあると思っています。
ひとつは戦いが好きで好きで~大好きで~刀を持ったらはなさない!って人。たとえば呂布や張飛なんかですね。こういう人は戦場ではバンバンやってきますが内政になるとなかなか活躍できません。活躍できないどころか「ひまだぁ!」とか言いながら隣の人ぶん殴って余計なトラブル起こしたりします。いますよね、こういうトラブルメーカー。
もうひとつのタイプは戦いもひとつの手段と考えていてそのほかのことでもそつなくこなす人。「治世の能臣、乱世の武人」とでも言いましょうか。武力80知力75くらいの人です。
アグリッパは正に後者。戦争も忠誠を示すための一つの手段でした。
幸福なことにアグリッパはパクス・ロマーナを目指す時代にも自分の仕事を見つけます。それは公共事業。平和のためにはさまざまなインフラが必要です。みんなが集まる広場も必要ですし、水道だって必要です。アウグストゥスはアグリッパの「国に尽くす気持ち」と「細かいところにいろいろ気づくところ」をしっかり知っていましたから様々な公共事業を任せます。まぁ戦場で兵士たちに「いけー!」と命令するのがうまいんだから工事現場で「わっしょーい!」と指示するのもうまかったんでしょう。それに元老院議会なんかに出て小難しい話聞いているよりは現場で労働者たちと仕事の後にぶどう酒飲みながら目だし帽かぶってるほうが楽しいし。
今のイタリアにはアグリッパが残した公共施設の遺跡がたくさん残っているそうです。
そのうちのひとつ、フランスに残る水道橋、ポン・デュ・ガール。
今でも下の部分は道路に改装され使われています。さらに世界遺産にもなっています。
アグリッパの献身とアウグストゥスの冷静な判断力でローマ帝国の力はどんどん強固になっていきます。相変わらず2人は仲良し。アグリッパにとってアウグストゥスは上司としても友達としても欠点は何ひとつありません。それはアウグストゥスも一緒。たぶんアウグストゥスはいつも自分の相談に乗ってくれ、自分が出来ないことをちゃんとやってくれるアグリッパに感謝の気持ちを忘れたことは無いでしょう。
でも、このアグリッパ伝の最後は少しだけ悲しい結末を迎えます。悲劇はアグリッパの献身によって生まれるのです。
…to be continued.
昔、歴史のテストで「エレオパトラ」って
凡ミスしたことを思い出したよ。
その水道橋って紀元前の建築物って事でしょ?
そういうのが残ってる事に、痺れるぅ憧れるぅ。
アグリッパの戦略的なエピソードとかって文献として残ってるの?
三国志の官渡とか赤壁みたいに西暦200年代とか大昔の
文献が残っているのってすごいことだと思うんよ。
日本なんか邪馬台国がどこにあったかすらよくわかってないってのにさ。
この橋はしびれるよね~、渡ったら俺泣くわ。
戦略とかに関してはアグリッパのはよくわかんないな~。カンネーの戦い(ハンニバル対ローマ軍)なんかきっちり残ってるけどね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%83%8A%E3%82%A8%E3%81%AE%E6%88%A6%E3%81%84
「ローマ人の物語」ではたまにきっちり陣形図とか解説してくれるんだけどね。
もち美味かったです。39
もち、美味しかったようでなによりっす。
元老院「ハンニバルに勝つ方法はあるのか?」
ファビウス「たった一つだけ策はある!とっておきのやつだ!」
元老院「まさか」
ファビウス「逃げるんだよ!」
元老院「やっぱりー」
ウァロ「よぉーしみてな元老院、このウァロ様があの野郎をぶちのめしてやる」
ハンニバル「なんだこいつ」
ウァロ「イデーイデー」
元老院「あたしのウァロリン」