6月1日に「ローガン」という映画が日本公開されました。今日はその話。
※ストーリーのネタバレはほとんど無いと思いますが「何も情報を入れずに観たい」という方は鑑賞後に読まれたほうがいいと思います。
※日本版Wikipediaのローガンのページは映画の細かいところまでネタバレなので読まずに映画をご覧になられたほうがいいと思いますよ。
とても良い映画だと思う。あのね、一人の男の生き方としても大変面白く感動的だし、少女役を演じたダフネ・キーンという女優(本来なら11歳だから「子役」と呼ぶべき年齢だろうけど、もうね堂々たる「女優」だと思います)が素晴らしいから是非ご覧いただくと良いと思う。僕は「レオン」を映画館で観た時にナタリー・ポートマンを「すごい女優だな」と思った時のことを思い出した。すごい女優さんです。何年か後、「11歳のダフネ・キーンを映画館で観た」というのは自慢できると思う。ぜひどうぞ。
さて、これも例の「アメコミスーパーヒーロー物」のひとつ。この作品を説明するにはやっぱりアメコミスーパーヒーロー映画の系譜から話していかないと行けない。そのあたりのことを話していきます。前回、僕が主張したのは下記。
1989年にDCコミックスのバットマンが大ヒットし、1989から1999年まではバットマン全盛期だった。その10年間、DCコミックスのライバル出版社であるマーベルはほとんどヒットを飛ばせていなかった。つまり僕は、1990年代とはDCコミックスに軍配が上がった10年だと思っている。
ここの潮目が変わるのは2000年。映画「X-メン」の公開。X-メンというのは超能力を持つミュータントたちの活躍を描くマーベルのシリーズなんだけどこれが2000年に公開されてヒットした。ある意味、マーベルにとっては対DCコミックスの反撃の狼煙となった。
(以後、副題が面倒なので1,2、、という表記で行きます)
その後、続編が作られて、2003年にX-メン2、2006年にX-メン3が公開される。更に2008年にはX-メンシリーズに出ていたウルヴァリンというキャラクターの単独映画「ウルヴァリン」も公開される。0年代はこのX-メンシリーズと、スパイダーマンシリーズ(2002年、2004年、2007年)もあり、かなりマーベルが勢いづく。
X-メンシリーズの映画をずらっと並べていくとこうなる。
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2000年:X-メン
2003年:X-メン2
2006年:X-メン3
2008年:ウルヴァリン
2011年:X-メンファースト・ジェネレーション
2013年:ウルヴァリン2
2014年:X-メンフュチャー&パスト
2016年:X-メンアポカリプス / デッドプール
2017年:ローガン
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なんとこの17年で10作品が公開されているということになる。よくもまぁ続くもんだし、よくまぁ観るもんだ、我ながら。
X-メン1,2,3というが続き物で、ウルヴァリンはその中に出ていたキャラクターの単独作品、更に2001年のX-メンファースト・ジェネレーションから始まる、フューチャー&パスト、アポカリプスは新三部作と言われるものでX-メンの始まりを描くもの。更にX-メン映画シリーズには出てなかったけどX-メンのキャラクターである「デッドプール」の単独作品が「デッドプール」。何がなにやら、という感じでしょう?まぁご存じない方はこの辺、無視していただいて結構です。
僕自身、X-メン1,2,3は映画館では観ていない。後からDVDで観たと思う。しかもそんなに大好きなシリーズというわけではなかった。たぶんこのシリーズでちゃんと映画館で観たのはファースト・ジェネレーション。
X-MEN:ファースト・ジェネレーション
これをなぜ観たかというと「キックアス」という映画がありまして。大層面白かったの。で、キック・アスの監督がファースト・ジェネレーションを監督するってんで観たの。今回、ローガンを観終えた後にまたDVDで観たけどやっぱり面白かった。
それからはウルヴァリン2、X-メンフュチャー&パスト、デッドプールを映画館で観て。アポカリプスはDVD。
これまた複雑な話でさぁ、僕は全作品観ているけど、どれもすべて面白いか、と言われると首を捻らざるを得ない。ファースト・ジェネレーションは文句なく傑作。それ以外はまぁまぁ。中には「ちょっとこりゃ無いだろう」と思うものも無くは無い、どれとは言わないけどね。
さて、このX-メンシリーズ、特筆すべきはやっぱりヒュー・ジャックマン演じる「ウルヴァリン」なんだよね。ヒュー・ジャックマン自身、2000年のX-メンで有名になったと言っても間違いではない。この17年に渡るX-メンシリーズ全9作品に彼はウルヴァリン役で出演している。これ自体がすごいことだと思う。
なんたってね、この作品のウルヴァリンというキャラクターは改造人間で、歳を取らない、という設定なんですよ。実際の世界では17年経っているけど作品中では同じ見た目を維持しなければ行けない。これはねぇ、役者として大変なことだと思いますよ。現在彼、ヒュー・ジャックマンは48歳で、つまり31歳から48歳まで同じ体型、見た目を維持しなければいけないんだから。よく頑張った、と言ってあげたい。
さて、今回の「ローガン」。
流れとしてはウルヴァリンシリーズの3作目ということになります。ローガンというのはウルヴァリンの本名ね。公式的にヒュー・ジャックマンはこの作品がウルヴァリンを演じる最後、ということになっている。おそらくそれは本当だろう。17年ひとつの役を演じる最後。こちらもねぇ、まぁ最後だし、とりあえず観るか、と観てきました。
結論。
最高です!
いやはやX-メンシリーズ中最高傑作なんでないの?個人的には、X-メンシリーズの中で僕が一番好きな「ファースト・ジェネレーション」と並びました。非常に苦い、切ない、よい映画になっております。
もちろんX-メンシリーズ全部を観てからご覧になったほうが楽しめると思いますが、そんなの面倒くさい、という方は下記設定だけ知っておくと良いと思います。
身も蓋もないこと言いますけど、全部観ている僕だって「あれ?あの話ってどうなってたっけ?」って部分ありますよ。何せ過去作が9本もあるんだから。更に話の中で一回タイムスリップしたことになってるので幾つかの話が「無かったこと」になっている。だから過去のつながりをまともに理解しよう、ってのがそんなに意味あることだと思わない。もちろんきっちりまともに理解されている方は尊敬しますよ。
ローガンを楽しむために、知っておけばよい設定は下記だけだと僕は思う。
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この世界にはミュータントという突然変異の超能力者たちがいる。
ウルヴァリンもその一人。能力は不老不死、更に怪我してもすぐ治る能力と拳から出る爪。
だけど、その能力を失いつつある。
流れ者のウルヴァリンを味方にし面倒をみてきたのはチャールズ、別名プロフェッサーX。
チャールズは世界最強の超能力者と呼ばれたけど今は年老いている。
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結局さ、X-メンシリーズで僕がどうも乗り切れないのって「不老不死」なんだよね。そんなんだったらもうなんでもありじゃん。不老不死の能力持っている人がいくらピンチになっても「どうせ死なないんでしょ」と思っちゃう、僕はね。
それが今回のウルヴァリンはその能力を失いつつある。それは前作のある出来事によるものなんだけど、まぁそれはいいです。つまり今回のウルヴァリンはもう単なる普通の中年男性になりつつある、ということ。
更に一緒に暮らしているチャールズは完全にもう介護の必要な老人。このあたりも切ないねぇ。。そこに出てくる謎の少女、ローラ。これまたねぇ、思春期の少女を面倒見るウルヴァリンが切なくも面白くて。
介護と子育てに苦労するスーパーヒーロー、っていう設定が目新しいしリアルで大変興味深い。
あと、この映画が素晴らしいのは様々な名作映画の要素を盛り込んでいる。具体的に映画の中にある名作映画が出て来るし、おそらく「レオン」「子連れ狼」あたりもアイディアの基になっていると思う、観ればわかると思います。
あ、あと、最近の邦題の適当っぷりにイライラしている身としては今回の「ローガン」というタイトルも素晴らしい。余計なものを入れなかったのがエライ。
X-メンシリーズファンには大満足の作品、映画ファンにもおすすめ、また何も知らなくても一本の映画として「男がどう生きるか」というテーマの作品としても素晴らしい。
繰り返しになるけど大女優ダフネ・キーンを観るだけでも価値はあると思う。
僕は2回目に吹替版で観てみたけど、こちらもこれまた素晴らしかった。スペイン語を喋るシーンとかもあるのでどうなるのか、と思ってたけどまったく問題無い。よく分からないお笑い芸人さんとかを無理くり使ってないのも素晴らしい。やれば出来じゃないですか、日本の映画会社も。
大変におすすめです、ぜひどうぞ。
ただ、一つだけ、R指定(なんだと思う、どこを探しても明確に書いてないからよく分からないんだけど)なのでお子様とか「血が一切ダメ」って方にはおすすめしません。
次回、機会があれば「アメコミスーパーヒーロー映画に観るR指定表現」について書きたいと思っています。