つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

いかにもな

2006-09-30 14:38:34 | 伝奇小説
さて、これぞ男性作家の第669回は、

タイトル:白妖鬼
著者:高橋克彦
出版社:講談社 講談社文庫(初版:H8)

であります。

時代は平安初期、内裏の陰陽寮に勤める弓削是雄ゆげのこれおは、命により陸奥の胆沢鎮守府で陸奥支配の一翼を担っていた。
しかし、突然の免官や都の不穏な情勢に占いを試みるとそこに表れた八卦は不吉なものだった。

自らの卦にも不可解な結果が出て戸惑う是雄は、過日に蝦夷の村で頼まれた占いをするために鎮守府を出た途中に何者かに襲われる。
撃退し、蝦夷の村で淡麻呂というすいかほどの大きな頭を持つ少年を見た是雄は、この少年が自らの占いに出たひとりの仲間だと言うことを悟り、ともに都へ戻ることになる。

是雄といわゆる付き人で弟子の甲子丸きねまるとともに都へ戻るそのとき、襲われた是雄とおなじように術士として名の高い者たちが次々と殺されていた。
是雄もまた、最初の襲撃からいくつかの襲撃を受けるもこれを撃退。
途中、夜盗の女頭目、芙蓉丸と出会い、なぜか付け狙われるものの、ともに都に戻る。

道中、殺された陰陽師のひとりの霊魂から得た情報や、都で聞いたその現状に、鬼の存在を確信した是雄は、鬼を駆逐することを使命とする陰陽師として、その鬼退治の決意を固める。
自らの卦に出てきた仲間である淡麻呂と芙蓉丸とともに。

平安時代が舞台、と言うと中期~後期の貴族文化華やかりしころ、と言うのが多いとは思うが、この時代は藤原基経の時代で9世紀後半。
陰陽師ものならばたいていは安倍晴明あたりが出るものだが、それよりももっと時代が前というのは珍しい。

とは言うものの、珍しいだけでそれ以上でもそれ以下でもない。
まず文章。
なんかいかにも男性らしい簡潔だが、これっぽっちも味気のない事実列記型。
先日の「奇術師の家」とは正反対。
こんな文章からその作品の雰囲気だの何だのを感じられるわけがない。

展開のほうは、無理はないし、すらすらと読めるのだが、ラストが尻切れトンボ。
拍子抜けしたと言う意味では意外なラスト、と言おうと思えば言えるがそれがいい意味でのラストかと言えばそんなことはない。
また、キャラだが、全員ロボットにしか見えない。

雰囲気は感じられずに無味乾燥、文章は事実列記型で味わいもなし、キャラはロボットでラストは尻切れトンボ。
いろんな意味でインパクトのある作品というわけでもなく……うわ……、いいとこなしやな、これ……(爆)

まぁ、おもしろくなかったので仕方がない。
総評、落第。