つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

マジシャンではないらしい

2006-09-29 06:51:50 | 小説全般
さて、レビューって難しいやねの第668回は、

タイトル:奇術師の家
著者:魚住陽子
出版社:朝日新聞社 朝日文芸文庫(初版:H8 単行本初版:H2)

であります。

表題作を含む4作の短編が収録された短編集。
なのでいつものように。

「奇術師の家」
兄の嫁である義姉の言葉と、心臓病の母のことを思い、母が以前住んでいたことがあるという古家に住むことになった鮎は、ある百貨店のクレジットセンターでアルバイトをしていた。
おなじアルバイト仲間の英子や麻子などとの仕事をしながら、日々を送っていた鮎だったが、母は借り家に収められているものを勝手に出してきて使っていたりしていた。

三笠という名前の者が所有するはずの家なのに、この家も、物もすべて鬼頭という人物の者だと言いながら。

アルバイト先のクレジットセンターで起きる事件や麻子との関わり、奇術師という鬼頭という人物と母との関係などが絡み合う物語。

「静かな家」
辛辣な従姉を送る唯子は、すでに15年、夫の敬と連れ添っているはずの妻だったが、そこにはすでに愛情などと言う言葉は存在していなかった。
唯子はただ形式として、儀式としての家にのみ、執着していた。

すでに愛人がいることがわかっており、離婚を切り出されたときにもいつもどおり冷静に家だけがあればいいと告げた唯子に敬は、しかしそれは愛人の要求によって出来ないと反抗する。
そのことを後日、その愛人からの電話でも確認された唯子は家を出て、戻ってきたときに……。

「遠い庭」
夫婦のみで子のいない私は、マンションの掲示板で落としたジグソーパズルを届けてほしい、と言うメッセージを見て、拾ったパズルの微片を手に、そこへ向かった。
昼だと言うのに、現れたのは小学生くらいのミオと言う少女だった。

つんとすましたような少女のミオは、しかし帰ろうとする私を引き留め、それから時折ともにジグソーパズルをしながら、いろんな話をしたりするようになっていた……。

「秋の棺」
喫茶店兼画廊の店を切り盛りしながら画家を目指している私は、あるとき店を訪れた女性に目をとめる。
深井月子と言うその女性は、しばらくしてから再び店を訪れ、店でアルバイトをするようになる。

個性的な美貌を持つ月子が時折見せる様々な表情に思いを巡らせながら店を続けていたある時、自らの個展を開催することとなり、それと同時に月子は姿を見せなくなる。
そうして幾日か過ぎたとき、月子は店に姿を現し、私の残った絵すべてを買い、残った個展の日にちで、ある人物の絵を飾りたいと告げる……。

各短編とも、とても雰囲気があり、作品の世界に浸れる作品と言えるだろう。
表現も小難しい言い回しというわけではないが、秀逸でこの表現の部分に関しては、かなり興味深く読ませてもらった。

短編としてはかなり出来がいいほうなのだろうと思うのだが……単純に、おもしろくなかった(爆)
雰囲気もあり、いい作品なんだろうなぁ、と思いつつも、個人的には楽しめなかったので。
まぁ、ここはかなり読むひとの感性とか、好みの問題もあるので、作品そのもののクオリティが低いと言うわけではないだろう。
と言うわけで、いちおう、及第。