幼かった日の思い出がよみがえるのです
エゾハルゼミの爽やかな声がミンミンゼミの声に変わると山あいの小さな集落のあちこちに真っ赤なタチアオイの花が咲くんですよ。
幼い私たちはその赤いタチアオイの花の花びらを一枚取ってその根元のちょっと厚くなっているところを薄く裂いて自分の鼻の頭に貼り付けて「トッテコイノー(東天紅)」と叫ぶのです。
するとみんなは雄々しくて猛々しいおんどり(雄鶏)になりきってしまうんです。
それが嬉しくて3~4人の私たち子どもは狭い砂利の道を「トッテコイノー」と叫びながら群れて歩むんです。幼かった私達はすっかり猛々しい雄鶏(おんどり)になりきっているんです。
あの頃の鶏は家の周りで放し飼いされていました。たくさんの雌鳥(めんどり)を束ね守っている赤くて見事に大きいとさかの雄鳥は猫や犬でさえ怖がってよりつかなかったんですよ。ですからはなたれ小僧の男の子たちのあこがれの対象だったんです。
84年ほど昔7~8歳だった頃の古里小立岩での懐かしい思い出です。