弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

事務所開設12年目!
本ブログがKindle本に!「アマゾン 三色眼鏡」で検索!!

【知財記事(商標)】勧進帳

2022年03月07日 08時14分43秒 | 知財記事コメント
おはようございます!
気持ちの良い青空広がる@湘南地方です。
週の始まりにふさわしい、気持ちの良い天気です。

さてさて、今日はこんな記事。

(https://news.yahoo.co.jp/articles/22409583c2f3e117128f1d99464f79226d451770より引用)
=============================
海老蔵が人気演目の商標登録を乱発 特許庁が拒絶すると不服審判を…真意は?

活躍が歌舞伎座の舞台にとどまらないところは、さすが当代きっての“かぶき者”である。大名跡「團十郎」襲名を控える市川海老蔵(44)が、歌舞伎にかかわる商標登録を乱発。認められないと知るや、特許庁と大立ち回りを演じているとか。

(中略)
さる梨園の関係者曰く、
「海老蔵さんは2人の子供の将来を一番に考え、その周りを囲む一門やスタッフを守りたい意識を持っているのでしょう。2013年に先代の十二代目市川團十郎が亡くなり、海老蔵が本格的に成田屋当主となって以降、商標登録の動きが急激に加速。少なくとも16年以降は59項目もの商標を立て続けに申請していますが、20年6月にまとめて出願した『勧進帳』、『助六由縁(ゆかりの)江戸桜』、『暫(しばらく)』という三つの『歌舞伎十八番』の人気演目は、特許庁から拒絶査定されてしまい不服審判の真っ只中だそうです」
(以下略)
=============================
(引用終わり)

記事で話題に挙がっているのが以下の3件。
いずれも、「独占性が無い」という理由で拒絶になっている。


拒絶になるのは、審査基準に照らせばまあ妥当なところで、
歌舞伎の演目は、その内容自体を表すものだから役務の質の表示に該当する、ということになる。

ただ拒絶査定を見ていると、
「また、出願人は、「たとえ、本願商標が、商標法第3条第1項第3号に該当す
るとしても、『勧進帳』は、市川宗家が150年以上の長期に亘って指定役務に
おいて使用した結果、市川宗家の業務に係る役務であるものであると認識される
ほどの著名性を有するに至っており、本願商標は商標法第3条第2項の規定によ
り、登録されるべきものであると考える。」旨主張していますが、それを証明す
るための具体的な書類の提出がないので
、その点について出願人の主張を採用す
ることはできません。」
ともある。

「3条2項」=原則的には独占対象にはならないとされる標章であったとしても、使用の結果それが誰の手による商品/サービスかが判る程度に有名になっている場合には、却って独占を認めないと世の中混乱するので認める、という制度。“使用による顕著性”という言い方をすることがある。

不服審判でこの点主張したら、認められる余地もあるのかなぁ?このあたりは動向注視したい。
歌舞伎界の共有財産的な判断で登録を認めない可能性は高いような気はするけども。

一弁理士の所感としては、古来から親しまれている伝統芸能にまつわる語と、産業立法、商業主義の権化たる知的財産権法というのは
なんとも相性は悪いよなぁ、とは思いつつも、時代に鑑みて、古典芸能であってもビジネス的視点から保護を図る、という姿勢について
評価すべき点は多い。
記事では挙がっていないが、「成田屋」「海老蔵」「KABUKU」など、積極的に商標登録を行って自助努力で保護をしている。
記事内の演劇評論家の
海老蔵さんの真意は測りかねますが、違和感をおぼえるし歌舞伎界全体の財産ですから、それらを制限する可能性のある行為はよろしくないと思います
という意見には同意できないなぁ。

最後は歌舞伎のネタで落としたいところだったけど、
いかんせんそのような文化的な所産に接したことが無いというのが何とも恥ずかしい。
…今度機会があったら観に行こう。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【雑記】日曜の朝 | トップ | 【知財記事(輸入差止)】R... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

知財記事コメント」カテゴリの最新記事