※「ビサイゴン」に関することは、次の記事にあります。
「ベトナムへ」日記42 - ビサイゴンの料理教室(1)
「ベトナムへ」日記43 - ビサイゴンの料理教室(2)
「ベトナムへ」日記44 - ビサイゴンの料理教室(3)
ベトナム語には「反り舌音」という難しい発音がありますが、ベトナム北部のハノイなどでは反り舌音が使われていないということですから、反り舌音を使わなくても不都合はないということになります。せいぜい「こいつはハノイ出身だな。」とか「ハノイのやつにベトナム語を習ったな。」と思われるくらいでしょう。
次に不思議に思うことは、hのついた子音文字が多いことです。ch、ph、thは英語にもありますが、kh、nhは珍しい。これに、見出し文字にはならない“gh”も加えて説明を試みてみましょう。
(1) “ch”は、英語の“ch”とほぼ同じ発音をします。ただ、英語音は、無声・硬口蓋歯茎・破擦音(voiceless postalveolar affricate)であるのに、ベトナム音は、無声・硬口蓋・破裂音(voiceless palatal plosive)です。英語は「チ」、ベトナム語は「チュ」という感じなのでしょうか。ま、英語音の“ch”を使ってもちょっとした訛りと思われるだけでしょうね。
(2) “ph”は、英語と同じように“ph=f”だと書かれています。だから、ベトナム語では“f”という子音文字を持たないのでしょうか。しかし、この文字の発音については、異なる説明もあります。日本語の「フ」の子音音素と同じ無声・両唇・摩擦音(voiceless bilabial fricative)だとするのです。ならば、英語音の無声・唇歯・摩擦音(voiceless labiodental fricative)を「上の前歯の先を下唇に触れさせ、その狭い隙間から声帯を振動させずに、呼気を押し出す」なんてことをしないで済みます。意見が分かれるのだから、日本語音でも通じるのでしょうね。
(3) “th”は、英語のthatやthinkでの“th”の発音ではないようです。tに続くhは「気音」を表しています。閉鎖音“t”の破裂とそれに続く母音の間に強い/h/に似た音が挟まる音です。これを有気音とか帯気音かといいます。中国語は、有気音と無気音がほぼセットになった音韻体系を持っていますから、勉強したことのある人は発音できるでしょうね。
(4) “nh”は、「拗音」を表すようです。ニャ、ニュ、ニョですね。だから、地名“Nha Trang”の“nha”は、「ニャ」と読むようです。nyaとはしないんですね。音声学では、主要な調音に加えて舌を硬口蓋に接近させること、または調音方法を変えずに調音点を硬口蓋近くに移動することを「硬口蓋化(palatalization)」と言います。口蓋(こうがい)とは、口の中、舌の上にある、口の天井部分、口のふた(蓋)を指し、歯の方の前方3分の2ほどの骨のある部分を「硬口蓋」、喉の方の後方3分の1ほどの軟らかい部分を「軟口蓋」といいます。“ng”は、“n”の軟口蓋化した音で、年のいった人が「学校」という時の「が」の子音音素です。英語の“ng”と同じものです。
言語に関心のない人には、退屈な話が長々と続いています。読者を大幅に減らしていそうです。しかし、海外を旅行するとき、目的国の言語に興味を持ってしまう私は、前回のインドネシア語に続いて、今度は「ベトナム語」に嵌っています。現地の人と、片言でいいから、現地の言葉で会話をしたいですよね。でなければ、なにもわざわざ「泳ぐ」だけにベトナムのリゾート地に行くことはない。例えば、沖縄だっていいはずですよね。もっと言うなら、家の近くの温水プールに行けばいい、と思いません?
きょうの結論
(1) “cha”は、「チャ」と読んでいい。
(2) “pha”は、「ファ」と読んでいい。それも日本語音で。
(3) “tha”は、「タ」と読むが、“ta”と区別しなければならない。日本人には難しい。
(4) “nha”は、「ニャ」と読んでいい。
では、続きはまた、、、
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(この項 健人のパパ)
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