POWERFUL MOMが行く!
多忙な中でも,美味しい物を食べ歩き,料理を工夫し,旅行を楽しむ私の日常を綴ります。
 



パルマのカフェでオペラ歌手のお二人と知り合いになりました。私の旅行の目的の一つは「食」。その地のスーパーマーケットや市場(メルカート、マルシェ)に出向いて、その地の食材を入手し、調理して楽しむことです。その話しを前日したところ、あずささんが珍しい食べ物ということで馬肉のお店、そしてマルシェのチーズと生ハムのお店に連れて行ってくれることになりました。ともにパルマ王立歌劇場の近くにあるのだそうです。


10月も下旬に入り、パルマはそろそろ寒くなるという話しの流れで、身体を温めると言われている馬肉のお店に連れて行ってくれるということになりました。



Olga Macelleria Equina というお店は持ち帰りの提供しかなく、月曜日から土曜日の営業時間は、朝の7時30分から午後1時30分まで。着いたのは12時を少し過ぎた頃。お店の前は順番待ちの人で溢れています。馬肉のタルタルステーキを求めて待ちます。香辛料と塩味が絶妙なバランスで、美味しかった~。ああ日本でも食べたい。



チーズは日本と比べると格段に安い。種類も非常に多く、大きなサイズのものは普通に量り売りをしています。お店の人は大きなハードチーズに包丁を当てながら、「このくらい?」、お客さんは「もうちょっと多め」などと言って、やり取りをしています。チーズの売り場にはよく行列ができています。


あずささんは日本に一時帰国するときは結構な量のハード系のチーズを持ち帰リ、皆にとても喜ばれるそうです。あずささん自身はそれほどチーズは食べないそう。チーズの好きな夫は「それはもったいない」という顔をしました。


あずささんのお薦めはしっかり熟成された少しお値段の高い生ハムだそうです。とても美味しいのだそうです。ですよね、パルマの名産ですものね。プロシュット・ディ・パルマ(Prosciutto di Parma)はイタリアのパルマ近郊で作られているプロシュットです。プロシュットは、豚のもも肉のハムで、非加熱のものはプロシュット・クルード(prosciutto crudo)、加熱したものはプロシュット・コット(prosciutto cotto)と呼びます。



ハムは肉を加工したもので、保存性を良くするために塩分が高いので、我が家ではたまにしか食べません。パイナップルやマスクメロンを巻いたら美味しいとは思いますが、塩分の強いものに拒否反応を示す夫には好みではありません。普通の味付けでもしょっぱいと言い出し、場合によっては夫用と大学生の息子用と2種類の味付けのものを作ったりします。


パルマは1泊なので、自炊なしで、ひたすらスーパーマーケットやケバブ屋など簡単かつ美味しく食べられるものを探して歩いていました。私の趣味の1つは「食」なのに、食べるものに殆んど関心のない夫をお伴に旅行を続けていると会話が噛み合わないことが多い。美味しいものを探し歩いていると私のテンションは上がって来るのですが、それに比べて夫のテンションの低いこと!昨日のオペラを話題にしていた時の夫のテンションの高さとの落差の大きいこと!


夫はひたすら私たちについて来るだけで、ほとんど会話せず。いまあなたには愛想笑いだけが処世術なのね。





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 北イタリアの東西に長いエミリア=ロマーニャ州の最も西に位置する県はピアチェンツァ県 (Provincia di Piacenza) です。その南に接して、パルマ県(Provincia di Parma)があります。そのパルマ県の北にピアチェンツァ県に接してコムーネ(基礎自治体)、「ブッセート(Busseto)」があり、ここはジュゼッペ・フォルトゥニーノ・フランチェスコ・ヴェルディ(Giuseppe Fortunino Francesco Verdi)の出生地として有名です。


 ヴェルディは、19世紀を代表するイタリアのオペラ作曲家であり、1813年10月10日に誕生しています。ブッセートは、当時パルマ公国を併合したフランス第一帝政(ナポレオン・ボナパルトの軍事独裁政権)の支配地域であり、ヴェルディはジョセフ・フォルテュナン・フランソワ (Joseph Fortunin François) という名を持っていました。



 ヴェルディの誕生日が10月10日であることから、ヴェルディ・フェスティバルがその日を挟んで毎年1か月ほど行われています。プログラムはヴェルディ尽くしで、パルマ王立歌劇場(Teatro Regio di Parma)のほかに、木組みの内装が美しいファルネーゼ劇場(Teatro Farnese)、ドゥカーレ宮殿(Palazzo Ducale del Giardino)、アルトゥーロ・トスカニーニ・フィルハーモニー管弦楽団(Filarmonica Arturo Toscanini)の本拠地パガニーニ・オーディトリアム(Auditorium Niccolo Paganini)、さらにはブッセートのヴェルディ劇場(Teatro Giuseppe Verdi di Busseto)などを使ってオペラやコンサートが開かれています。




 パルマ音楽院の卒業生でイタリア各地の歌劇場の舞台に立っているあずささんと音楽院に在学中の瑠衣さんとパルマ王立歌劇場にやってきました。



 “regio”(レージョ)とは、「国王の、王室の、王立の」という形容詞です。そこで、“teatro regio”(テアトロ・レージョ)は、「王立劇場、王立歌劇場」ということになります。トリノ王立歌劇場(Teatro Regio di Torino)と区別するために、パルマ王立歌劇場(Teatro Regio di Parma、テアトロ・レージョ・ディ・パルマ)と呼ばれています。


 オーストリア皇帝フランツ1世の娘で、フランス皇帝ナポレオン1世の皇后であったマリア・ルイーザ(Maria Luisa)は、ファルネーゼ劇場が手狭であることから、隣接した聖アレッサンドロ修道院の土地に新たに劇場を建てることにして、建築家の二コラ・べットーリ(Nicola Bettoli)に依頼します。ナポレオンがセント・ヘレナ島で死去した1821年に着工し、2度目の夫ナイペルク伯アダム・アルベルト(Adam Albert conte di Neipperg)が亡くなった1829年に竣工しました。経営は、パルマ公国、イタリア政府から地方自治体のパルマに移っていますが、王立という名は留めています。



 パルマ音楽院ことアッリーゴ・ボーイト音楽院(Conservatorio di Musica Arrigo Boito)は、1769年にフィリッポ・ディ・ボルボーネ(Filippo di Borbone)に仕えていたギョーム・デュ・ティヨ(Guillaume du Tillot)によって王立声楽学校として創立されましたが、1816年マリア・ルイーズが音楽院に改革しました。1888年この学校の院長を務めたアッリーゴ・ボーイト(Arrigo Boito)の名前を取って現在の名前になっています。彼は、ヴェルディのオペラ「オテロ」(1887年)、「ファルスタッフ」(1893年)などの台本作家でした。


 この音楽院は、質の高い音楽教育を誇り、数多くの優れた音楽家を輩出しており、パルマ出身で世界的指揮者であったアルトゥーロ・トスカニーニ(Arturo Toscanini)もここの出身でした。学生は声楽だけで150人ほどもおり、ほとんどが東洋人のようです。東洋人は自国の大学を卒業してから留学する人が多く、当然レベルも高い。声楽科教授は10人ほどおり、スカラ座で活躍したプリマドンナであって、リリコ・レッジェーロからリリコのレパートリー、特にロッシーニ、ベッリーニ、ドニゼッティのベルカントのレパートリーを得意としていたルチェッタ・ビッツィ(Lucetta Bizzi)さんもいるようです。



 この画像に収まっているのは、瑠衣さんの学友さんたちです。ほとんどが韓国からの留学生さんたちなのだと伺いました。



                  (この項 健人のパパ)







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2018年の10月から11月にかけて1か月ほどワインとチーズの勉強でイタリアからフランスへと夫と2人で旅行をしました。日本からトリノに入り、アルバ、バローロ、ブラ、バルバレスコ、アスティと移動しました。ワインを味わい、チーズをかじり、トリュフの香りを楽しみました。

しかし、私にはもう一つ目的がありました。2017年にワインの勉強で一人でフランスを巡ったときに、フランクフルトで購入したドクターコスメのファンデーションを気に入りました。それをdm というドラッグストアにまた求めに行きたかったのです。

このdmというドラッグストアは夫の調べたところではドイツやドイツ国境付近のフランスにはたくさんあるが、イタリアには殆んどないといいます。イタリアは、ビアチェンツァという町にはあるがアスティからベネツィアに移動しようと計画している旅程では遠回りになると夫は反対しました。

「ちょっと待って。ピアチェンツァは、アスティとパルマのほぼ中間地点よね。パルマと言えばパルミジャーノ・レッジャーノの町じゃない。チーズの勉強をしているなら、絶対行くべきよ。」

夫は感情には流されません。「お願い!」と甘えても動きません。しかし、理屈ぽいから合理的理由とやらにはめっちゃ弱い。というわけで、ピアチェンツァに1泊、パルマに1泊と計画を新たに立て直しました。化粧品も買って私の目的のひとつは達成。日本からネットでも購入できるのですが、やはり安く手に入れたい。

次は夫の目的の一つを叶えさせる必要があります。パルマでは、パルミジャーノ・レッジャーノの製造工場は町中にはなく、見学に行くには、ローカルのバスに乗る必要があります。まずは、バスに乗る前にカフェに寄ってカプチーノを飲まなきゃ、朝は始まらない。面白いお店がないかと、「どこでもいいじゃないか」と面倒くさがる夫をあちこちと引きずり回して探していました。

それを道路の向かいのカフェの外に置かれたテーブルから見ていた2人の若い日本女性が声をかけてきました。旅慣れない日本人夫婦のように見えたそうです。一緒にそのテーブルでお茶をすることになりました。2人はオペラ歌手だと知ることになります。誰とでもすぐに仲良くなれる私と違って人見知りをする夫はこういうことを嫌います。

ところがです。2人がオペラ歌手だと知って、夫はペラペラとオペラについて談笑し始めたのです。なにこの人!私は、アングリして見ていました。この上機嫌は何!パルマは、来たくなかったはずなのに。初めて会った人とは話しができないはずなのに。

これが日本でオペラのコンサートを開催するきっかけになることは夫も私もまだ気づいていませんでした。



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あみと健人のパパは、mini Opera Concert を開きます。


開催日は、5月18日(土曜日)です。昼の部と夕の部があり、昼の部は完売で、夕の部に10数席の空きがあります。


チケットの入手先は、カフェ・サンクです。「気楽にオペラ」という催しなので気楽にいらっしゃってください。


子供料金の設定はありません。10歳以上の方はチケットが必要になります。コンサートを楽しめる方が対象ですので、10歳未満のお子さまは入場できません。



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(参考) 「骨粗鬆症治療薬「テリボン」の副作用にはどのようなものがあるか。

 次のようなコメントを当ブログの読者の方から頂戴しました。

  2か月前に、膝上の顆上骨折で手術致しました。骨粗鬆症の検査で標準値より少し低くなっていたために、フォルテオの自己注射をすすめられ、本日で5日目です。2日目から夜眠ったかなと思う頃から痒みを伴う湿疹で眠りが浅くなりました。

(注) 大腿骨の下部で膝関節に近いところ(「遠位部」という)には、「顆部(かぶ)」と呼ばれる部分があります。「顆」とは顆粒(小さなつぶ)の「顆」で、大腿骨の下部端の丸く膨らんだ部分が「顆部(condyle)」です。その上部が「顆上(supracondyle、femoral supracondyle)です。「大腿骨顆上骨折(だいたいこつかじょうこっせつ、supracondylar femur fractures)」はその部位が骨折するもので、骨粗鬆症がある高齢者であれば、転倒などの比較的軽微な外力が加わることでも起こります。高齢化社会を迎えている現在では、大腿骨顆上骨折、大腿骨顆部骨折はその発生が増えてきており、治療が難しい骨折の一つです。

 骨粗鬆症の検査では、骨の強さを維持する成分であるカルシウム、リンなど「骨塩(bone mineral)」の量を測定します。「骨密度(BMD、Bone Mineral Density)」は、単位体積あたりの骨塩の量(骨量)ですが、その単位は g/cm2 です。例えば、DXA法では測定部位を輪切りにするように2つの異なったエネルギーを持つX線を照射し、それぞれのX線がどの程度吸収されたかによって骨塩の量を測定します。つまり、輪切りにした面の単位面積あたりの骨量と考えてよいことになります。その一般的な数値はおよそ 1.0 g/cm2 です。


 骨密度(骨密度は原則として「腰椎」骨密度とする。ただし,高齢者において,脊椎変形などのために腰椎骨密度の測定が適当でないと判断される場合には「大腿骨頸部」骨密度とする)の正常値は、腰椎(脊椎の下部、腰の部分。5つの椎骨からなる)では20~44歳の平均値、大腿骨近位部では20~29歳の平均値を基にしており、検査結果は例えば、YAM何%などと表現されます。

 YAMとは、Young Adult Meanの略称で、「若年成人平均値」という意味です。例えば、YAM85% とは若年成年の骨密度の85%の骨密度であるということになります。80%以上だと、正常域であり、70~80%ならば、骨密度が減少しており、要注意と判断され、70%未満しかないときは、骨粗鬆症と判断されます。

 骨量の検査結果は例えば、次のように出てきます。

 「腰椎 L.234 を測定しました。」(腰椎(lumbar)は上から下へと第一腰椎から第五腰椎まで5つあるが、“L.234”とは第二腰椎から第四腰椎までを測定)。
 「あなたの骨密度は、0.720 g/cm2 です。」
 「若い人と比較した値は、71%です。」(“%YAM”と表示されることもある。「骨密度がもっとも多い、29.1 歳の骨密度を 100%としたときの比較」とする骨量検査機器のメーカもある)。この値が低くなるほど骨粗鬆症が疑われる。80%以上は心配ない。70~80%は骨密度がやや低下している。食事・運動などの生活に気をつける必要がある。70%未満は一度、精密検査を受ける必要がある)
 「同世代と比較した値は、98%です。」(骨密度は年齢とともに少なくなっていくが被検者と同年齢の人の骨密度を100%としたときの比較。“%AGE”と表示されることもある)
 「骨面積: 36.337 cm2 骨塩量: 26.167 g」


フォルテオとは、





 「骨折の危険性の高い閉経後骨粗鬆症の外国人女性患者において、カルシウム・ビタミンDを基礎治療とし、テリパラチド20μg及び40μgを長期皮下投与した際の、新規椎体骨折、並びに新規非椎体骨折を発生した患者の割合の減少効果、また腰椎及び大腿骨近位部の骨密度に対する効果、及び安全性について検討した(ブリッジング対象試験)」という資料の<安全性>の項目の「有害事象」には次の記述があります。

 テリパラチド20μg群又は40μg群の発現率が3%以上で、プラセボ群とテリパラチド投与群とのp値が0.1以下でテリパラチド投与群の方が発現頻度の高かった有害事象は、悪心(プラセボ群 7.5%、20μg群 9.4%、40μg群 17.8%、以下同様の順)、頭痛(8.3%、8.1%、13.0%) 、下肢痙攣(1.1%、3.1%、2.4%) 、嚢胞(0.9%、1.7%、3.1%)、失神(1.7%、3.1%、0.7%)、爪の障害(0.4%、1.3%、3.1%)であった。(注の終わり)



 主治医に申し上げましたら、湿疹痒みが出るのは1%くらいで、まずは勘違いであろうとのことでした。

 試しに1週間止めてみて、もしもフォルテオが原因ならば、2、3日おきとか4、5日おきに注射するようにとのことですが、毎日注射しなくても効果は同じでしょうか?

 湿疹痒みのほかに眠くなって車の運転が困難にもなりましたが、そんな副作用もあるのでしょうか?お尋ねいたします。(2014-12-22 22:02:18)

  ----- この記事は、徐々に記述していきます -----



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 赤血球に含まれる「ヘモグロビン」の構成物の一つにヘムがあり、その分解代謝物にビリルビンがあります。ビリルビンは、胆汁や尿から排出されますが、異常に濃度が上昇することがあり、それは何らかの疾病への罹患を意味しています。ビリルビンの濃度が上昇して、眼球や皮膚といった組織や体液が黄色く染まった状態を「黄疸(おうだん。jaundice、ジョーンディス)」といいます。

 黄熱(yellow fever)は、発熱を伴い、重症患者に黄疸が見られることから、「黄」+「熱」と命名されています。黄熱は、黄熱ウイルス (yellow fever virus) を病原体とする感染症で、黄熱ウイルスは、フラビウイルス科(Flaviviridae)のフラビウイルス属(Flavivirus)に属します。この学名の由来は、黄熱ウイルスにちなんでおり、ラテン語の“flavus”(フラーウゥス)は、黄色または橙色の意味です。

 大豆などに含まれ、女性ホルモンの「エストロゲン」と似たような作用を持つといわれている「イソフラボン (isoflavone)」にも、“flavo-”という語幹が含まれています。また、植物体を太陽の紫外線から守る役割をしており、黄色などを発色させる植物色素に「フラボン (flavone)」がありますが、これにも“flavo-”という語幹が含まれています。

 話しを戻しますが、フラビウイルス属には、黄熱ウイルス以外に、日本脳炎ウイルス(Japanese encephalitis virus)やウエストナイルウイルス(west Nile virus、西ナイルウイルス)があります。このいずれもが蚊を媒介として、ヒトに感染するウイルスです。黄熱は、ネッタイシマカ (Aedes aegypti、エイイーディーズ・イージプタイ) などの蚊によって媒介されるウイルス感染症です。

 国立感染症研究所 病原微生物検出情報 (IASR) 2013年8月号によると、黄熱(黄熱病)は、「感染すると無症候の場合もあるが、通常ウイルス曝露後3~6日で発症し、発熱、筋肉痛などの非特異的症状が急激に始まる。一時緩解した後、15%のヒトでは2~24時間後に症状が再燃し、腎不全、黄疸、出血傾向、心筋障害が起こる。肝腎不全に至ると、20~50%が通常発症から7~10日で死亡する。」とあります。

 ネッタイシマカは、一般的には“yellow-fever mosquito”(黄熱蚊?)と呼ばれており、学名“Aedes aegypti”は、「エジプト縞蚊(しまか)」といったところでしょうか。“aedes”(エイイーディーズ)は、ギリシア語を語源とするらしく、「嫌な(hateful)」、「嫌で堪らない(repulsive)」という意味を持つようです。洋の東西を問わず、吸血する蚊は嫌われ者なのですね。ちなみに、英語“mosquito”は「小さなハエ」というだけの意味を、中国語「蚊(蚊子、wenzi、2-軽声)」はその羽音(昔の音は、wenでなくbun?)という意味を持っているようです。

 双翅目カ科ヤブカ属シマカ亜属は、胸部の背面などに白い縞模様(白条)があることから、縞蚊(しまか)と呼ばれ、昼間に活動して吸血します。ネッタイシマカのほかに、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus、エイイーディーズ・アルボウピクタス、その見た目から tiger mosquito(タイガー・モスキートウ))、その生息場所から forest mosquito(フォレスト・モスキートウ))などがいます。“albopictus”は、「白条」を意味し、学名も「一条縞蚊(ひとすじしまか)」といったところです。

 ヒトスジシマカ(Asian tiger mosquito)は、アメリカ合衆国にも生息範囲を広げており、合衆国の東半分の州にはすでに生息しているといいます。ハワイ州を除くアメリカで、ヒトスジシマカが最初に発見されたのは、テキサス州ヒューストンで、1985年。すでに30年ほどが経っています。日本や台湾から輸入された古タイヤとともに、侵入してきたといわれています。

 あるサイトでは、“In the United States, the Asian tiger mosquito may spread diseases such as West Nile fever and encephalitis.”(アメリカで、ヒトスジシマカは、ウエストナイル熱やウエストナイル脳炎のような感染症を広げるかも知れない)と述べています。

 国立感染症研究所の感染症情報「ウエストナイル熱/ウエストナイル脳炎とは」によると、「ヒトにおける潜伏期間は3~15日である。感染例の約80%は不顕性感染に終わる。発症した場合多くは急性熱性疾患であり、短期間(約1週間)に回復する。一般的に、3~6日間程度の発熱、頭痛、背部痛、筋肉痛、筋力低下、食欲不振などがみられる。皮膚発疹が約半数で認められ、リンパ節腫脹を合併する。 時にデング熱と似た熱型を取る。」、「重篤な症状を示すのは感染者の約1%といわれている。これらは主に高齢者にみられ、致命率(患者数に対する死亡者の比率。致死率ともいう)は重症患者の3~15%とされる。アメリカ合衆国の患者のデータでは、筋力低下を伴う脳炎が40%、脳炎が27%、無菌性髄膜炎が24%にみられている。」と述べられており、また、

 「媒介蚊は主にイエカの仲間であるが、我が国では、日本脳炎のベクター(媒介動物)であるコガタアカイエカやヤマトヤブカなどもなり得ると考えられる。本ウイルスが本邦に侵入すると、蚊や鳥を介して広範囲に拡がる可能性がある。」、「ウエストナイルウイルスは成熟期のメス蚊の吸血時に増幅動物である鳥類に伝播され、腸で増殖後、唾液腺へ運ばれる。鳥類は曝露に続いて1~4日の間にウイルス血症を起こす。流行には渡り鳥の存在や感染蚊の移動の関与が示唆されている」という記述もあります。

 アメリカなどでウエストナイルウイルスの媒介が可能であるとされた蚊は、アカイエカ(house mosquito、culex、キューレックス)、ネッタイイエカ(southern house mosquito、culex quinquefasciatus、キューレックス・クウィンケファシエイタス、「5つ帯の家蚊(いえか)」といったところでしょうか)、コガタアカイエカ、ヒトスジシマカ、ネッタイシマカ、キンイロヤブカ、ヤマトヤブカなどであり、このうちのネッタイシマカを除けば、すべて日本に存在する蚊です。ウエストナイルウイルスは、日本脳炎ウイルスが、主にコガタアカイエカが媒介するのとは異なり、いろいろな蚊によって媒介されるのです。

 日本脳炎のワクチンを接種している私は、蚊に刺されることは、それほど気にはしていませんでしたが、蚊に刺されると刺された場所が大きく腫れるため、蚊に刺されることを極端に嫌う妻のように、これからは黄熱ウイルス(ワクチンはあるが、日本では一般的でない)、デングウイルス(ワクチンは開発の最終段階だが、まだ上市されていない)、ウエストナイルウイルス(ワクチンはない)などへの感染を防ぐため、蚊の活動する季節は蚊に刺されないように虫よけのスプレーをして、外出すべきなのでしょう。

(参考) 「感染患者報告数の少ない日本脳炎の予防接種は受けるべきではないか?

 2007年の生活衛生((社)大阪生活衛生協会(2011年に解散)が出版) Vol.51 No.4に掲載された「日本人はウエストナイルウイルスに交差免疫を持つか」(大阪市立環境科学研究所研究主幹「今井長兵衛」(現在:千里金蘭大学生活科学部食物栄養学科教授)著)には、次の記述があります。

 「ウエストナイルウイルスに対する交差免疫機能を期待できる日本脳炎抗体を保有する住民は年を追って減少しており、とりわけ大都市において、その傾向が著しい。したがって、ウエストナイルウイルスが不幸にして日本に侵入したときには、全国民、とりわく都市住民がウイルスの危険にさらされ、少なくとも日本脳炎抗体を保有していないヒトの間でウエストナイルウイルスが猛威を振るう恐れがある。

 ハムスターの感染実験で、日本脳炎ウイルスを接種した個体にウエストナイルウイルスを接種したところ、抗原抗体反応が起こったという報告があります。このことは、日本脳炎に感染した経験があれば、ウエストナイルウイルスに対して、発症予防の効果があるということになります。

 このような「交差免疫反応」は、抗体の側に「特異性の低さがある」(譬えれば、欧米人にはアジア系の人種を見分けることが難しくて、日本人もベトナム人も中国人と思ってしまうようなもの)、抗原の側に「抗原性の類似がある」(譬えれば、日本人の中にも韓国人や中国人に極めて似た面立ちの人がいるようなもの)ときに起こります。

 「ウエストナイルウイルスの日本侵入経路の一つとして、ウイルス感染渡り鳥のカナダ南部・米国北部からの渡来が懸念されていた。ところが、2005年になって新たな事実が判明した。シベリア東部のウラジオストック周辺で2003年から2004年に死亡した野鳥からウエストナイルウイルスが検出されたというのである。シギ・チドリやカモなどの大部分の渡り鳥の繁殖地であるシベリア東部にウエストナイルウイルスが常在するとなれば、ウイルス感染渡り鳥の飛来経路が短縮されるばかりでなく、個体数も劇的に増加する可能性がある。

 「日本脳炎ワクチンによる西ナイルウイルの感染に対する交叉防御」には、「沖縄本島では156人の被検血清の96%はJEV中和抗体陽性であり、抗体陽性者の55%からWNV交差中和抗体が検出されている」という報告があります。これをどう読むかというと、沖縄本島で、156人から血清を調べさせてもらったところ、150人は日本脳炎ウイルス(Japan Encephalitis virus, JEV)に対する抗体を持っており、その中の85人の血清はウエストナイルウイルス(West Nile virus, WNV)に対しても反応したということです(65人の血清は抗原抗体反応は起こらなかった)。

  -この記事は、徐々に記述していきます-

 2014年9月8日配信の産経新聞の記事からです。

 厚生労働省は9月8日、新たに東京都内でデング熱6人の感染者が確認されたと発表した。いずれも最近の海外渡航歴はなく、東京・代々木公園とその周辺を訪れていた。重い症状の患者はいないという。国内での感染者は計80人となった。

 厚生労働省によると、新たにデング熱と確認されたのは東京都の20代~60代の男女6人。デング熱の国内感染が確認された後に代々木公園を訪れて感染した人はいない。


 国立感染症研究所の報告した「デング熱国内感染患者 現時点での疫学情報のまとめ(平成26年9月8日)」によると、第75症例(40代男性、発症日8月29日、潜伏期間6日)、第76症例(20代男性、8月31日、不明)、第77症例(30代女性、8月28日、5日)、第78症例(40代男性、8月12日、5日)、第79症例(60代男性、不明、不明)、第80症例(20代男性、8月31日、不明)の6症例です。

 2014年9月8日配信の産経新聞の記事からです。

 静岡県疾病対策課は9月8日、県東部に住む50代の男性からデング熱の感染が確認されたと発表した。男性は8月30日に1人で代々木公園を訪れており、最近の海外渡航歴はないため公園付近で感染したとみられる。県内でデング熱の感染者が確認されたのは初めて。

 静岡県疾病対策課によると、男性は今月5日に38度以上の発熱や頭痛などの症状が表れ、自宅近くの医療機関で受診。9月8日になっても熱が下がらなかったため、再び同じ医療機関で受診していた。男性は胸部や腹部などに発疹がみられ、「代々木公園でトイレを利用した」「公園内で蚊に刺されたかもしれない」と話したため血液検査をしたところ、デング熱の感染が確認された。


 これが第81症例になるのでしょうか。50代男性、発症日9月5日、潜伏期間6日になります。

(追記‐2014年9月9日) 2014年9月9日配信のJNNニュースからです。

 「デング熱」の国内感染で、初めて東京以外で感染したとみられる患者が報告されました。厚生労働省によりますと、千葉市・稲毛区に住む60代の男性は8月31日、発熱や倦怠感の症状が出て、9月8日、「デング熱」の感染が確認されました。現在は入院中で容体は安定していますが、この男性は「代々木公園」や、その周辺など、最近、東京都内を訪れたことはないということです。

 男性は、稲毛区内の社会福祉施設に住んでいて、この施設の周辺で感染した可能性がありますが、今のところ男性以外に入所者の感染は確認されていません。千葉市と厚労省は施設周辺の蚊の調査を行い、感染場所の特定を進めています。これでデング熱の国内感染者数は9月9日までに、合わせて86人となりました。


 そろそろデング熱も終息するのではないかと考えていたのですが、新たな展開になってしまいました。(追記-2104年9月10日) 厚生労働省はこの症例について「9月9日に公表した、千葉市稲毛区在住のデング熱の患者については、国立感染症研究所におけるウイルス解析の結果、この患者から検出されたウイルスの血清型は、デングウイルス1型であり(デングウイルスには、DEN-1、DEN-2、DEN-3、DEN-4と4つの型がある)、遺伝子配列は、代々木公園周辺、新宿中央公園、神宮外苑又は外濠公園への訪問歴のあるデング熱の患者から検出されたものと一致しました。」と9月10日の報道発表資料で述べており、同時多発でなかったことになります。今のところ、代々木公園に端を発しており、それが各場所に、例えば、新宿中央公園に広がったと考えられます。

 ここまで追記を加えたところ、展開が早くこの記事が実際に起きていることに追いついていけなくなっています。千葉県に住む50代男性が、勤務先の東京都台東区松が谷周辺で蚊に刺され、デング熱に感染したとみられるのだそうです。また、神奈川県在住の20代男性は、東京都千代田区の外濠公園か港区の青山公園で感染したとみられるそうです。このウイルスも遺伝子配列が感染場所が代々木公園のウイルスと一致するのでしょうか。(追記の終わり)

 「デング熱国内感染患者 現時点での疫学情報のまとめ(平成26年9月9日)」によると、第82症例(10代男性、発症日8月30日、潜伏期間不明)、第83症例(40代女性、9月1日、11日)、第84症例(50代女性、9月5日、不明)、第85症例(20代女性、9月5日、9日)が新たにデング熱の発症者として追加されており、千葉市・稲毛区の60代の男性の発症は第86症例として、9月10日に発表になるのでしょう。

 デング熱は「ヒトが感染しても、発症する頻度は10%~50%」であるとされています。つまり、1人発症すると、その周辺に1人から9人ほどの感染しても発症しなかった人(不顕性感染者)がいることに理屈的にはなります。しかし、不思議なことに、報道ではデング熱の発症者の周辺に感染者はいません。8月25日から代々木公園北側の宿泊施設に滞在していた、デング熱を発症した大阪府高槻市の10代女性3人(発症はそれぞれ8月30日、8月31日、9月1日)を含むグループ24人のうち半数以上が「蚊に刺されたと思う」と話しているという報道があったのですが、このグループからの発症者はそのあとに報告されず、また感染者の報告もありません。

 これまでに80人を超えるデング熱の発症者が報告されています。ならば、感染者10人に発症者は1人(10%)であれば、800人ほどが感染しているはずであり、感染者2人に発症者1人(50%)であれば、160人ほどが感染しているはずです。報道が過熱して、住民に冷静さを失わせて、パニックを作り出すと考えて、保健衛生関係者は報道への通知を控えているのでしょうか。(追記の終わり)

                     (この項 健人のパパ)



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 平成26年8月27日に、厚生労働省健康局結核感染症課から、各都道府県、保健所設置市、特別区の衛生主管部(局)長に向けて、健感発0827第1号「デング熱の国内感染症例について(第一報)」が発出されます。

 日頃から感染症対策への御協力を賜り厚くお礼申し上げます。
 今般、さいたま市内の医療機関から、さいたま市衛生主管部局を通じ、海外渡航歴がないにもかかわらず、デング熱(四類感染症)の感染が疑われる患者(別添1)について情報提供があったことから、国立感染症研究所において確認検査を実施したところ、デング熱の患者であることが確認されました。
 患者には海外渡航歴がないことから、国内でデング熱に感染したと考えられます。現在、さいたま市は、厚生労働省及び関係自治体と協力して、疫学調査(患者の周辺者等における症例探索等)を実施しているところです。
 つきましては、本事例(デング熱の国内感染事例)について、貴管内の医療機関等の関係者へ情報提供するとともに、海外渡航歴がない場合であっても、平成26年度厚生労働科学研究が取りまとめたデング熱診療マニュアル案(別添2)等を参考の上、デング熱が疑われる症例については、検査の実施を検討するよう注意喚起をお願いします。また、デング熱の国内感染が疑われる事例については、速やかに保健所への情報提供を行っていただくよう協力要請をお願いします。


別添1「患者に関する情報」には次のようにあります。

・ 患者は、埼玉県在住の10代女性。東京都内の学校に在学中。
・ 海外渡航歴無し。
・ 8月20日、突然の高熱により、さいたま市内の医療機関を受診。同日入院。
・ 8月25日、デング熱の国内感染疑い事例について医療機関から情報提供を受けたさいま市から、厚生労働省に一報あり。
・ 8月26日、患者の血液検体を国立感染症研究所に搬入し、デング熱について検査を実施したところ、同日、デング熱陽性の結果が得られた。


 伝聞なのですが、このさいたま市の医療機関の医師は、過去にデング熱の患者を診たことがあり、10代の女性の症状を見て、デング熱を疑ったといいます。あるデータによると、日本における現員医師数は16万7千人ほどだといいます(非常勤を含む。届出医師数は30万人ほど)。デング熱輸入症例が急増し始めた2001年から2014年8月15日までの累計が1524例になることから、医師の引退などによる入れ替わりなどを考えずに大雑把にとらえて、医師の100人に1人ほど(0.9%)しかデング熱の患者を直に診たことがないことになります。

 ここでもしもの話しをすることになるのですが、この医師にデング熱の診察の経験がなかったならば、発熱に対して、解熱剤のアセトアミノフェンなどを処方して、終わってしまっていたことになったかも知れません。やがて、どこかの医師によって別の患者がデング熱であることが気づかれることでしょうが、その時は広範にウイルスが拡散してしまっていたことでしょう。そうなれば、国内感染の初発事例の感染地を特定することは難しくなります。または、10月の中頃を迎えて、ヒトスジシマカの成虫が寒さのために死に絶えて、デング熱の流行があったことすら気づかれずに終息していたかも知れません。

 気づかれずに終息するということは、デング熱はそれほど恐れる必要のないウイルス感染症であるとも言えます。インフルエンザウイルスは、接触感染、飛沫感染、飛沫核感染(空気感染)しますから、混んだ通勤電車の中に、インフルエンザの発症者がいて、マスクもせずに咳をしていれば、その周辺の乗客にインフルエンザウイルスを感染させる可能性は大きいと言えます。その発症者が鼻をかんだ手で吊り革をつかめば、そこにウイルスは残ります。実際、そのようにしてインフルエンザは流行していきます。しかし、デング熱の発症者が満員電車に乗っていても、そこに蚊が介在しなければ、デングウイルスをその周辺の乗客に感染させることは皆無です。

 知ることは恐れを少なくします。そこで、国立感染症研究所 病原微生物検出情報 (IASR) 2007年8月号掲載の2つの報告「輸入デング熱62症例の臨床的特徴について」(東京都立駒込病院や国立感染症研究所など)と「国立国際医療センターにおける輸入デング熱症例の臨床的検討」(国立国際医療センター国際疾病センターと国立感染症研究所)を読んでいくことにします。「輸入デング熱62症例の臨床的特徴について」は、1985年から2000年の間に診断された、62例のデング熱患者の症例を調査したものです。

 デング熱の発症は、「突然の発熱」から始まります。しかし、発熱はデング熱発症に特有の症状ではありません。インフルエンザなどでも高熱を経験します。



 TBS系「王様のブランチ」(毎週土曜、9時30分~14時)のレポーター「紗綾」さんは、8月21日の午後、代々木公園でロケをしていて、蚊に刺されたのが原因でデング熱に感染したそうです。紗綾さんのブログでは、9月27日の記事に

お盆の時に風邪を引いて、熱が出て…

昨日からまた熱が。

高熱でフラフラです…

前回の熱が比にならないくらいきつーい。

すぐに喉が渇くし、水分が手放せません。

さぁ!!

みずみずしい梨を食べて、薬飲まなきゃ!!


とあります。これによると、発症したのは8月26日で、潜伏期間は5日。「デング熱国内感染患者 現時点での疫学情報のまとめ(平成26年9月2日)」(PDF)における第23症例に該当します。

 9月5日のブログでは、

報道でご存知の方もいらっしゃると思いますが、私はデング熱になり、入院をしておりました。

やっと退院しました。

今回、突然高熱が出て、初めはただの夏風邪だと思っていました。

しかし、詳しく検査をして貰い、デング熱だと判明しました。

自分がデング熱!?と、初めは信じられませんでしたが、ネットで調べてみると症状が全く同じでビックリしました。

私の症状は、血小板や白血球の数値が下がり、40℃前後の高熱が続き、頭痛、眼痛、倦怠感、腹痛、寒気、発疹、かゆみ、浮腫みと、どれもすごく辛い症状でした。

症状で眠れない日もありました。

病院に入り、日が経つごとに容態も良くなり、少しずつ回復して来ました。


とあり、高熱に頭痛が伴ったと報告しています。「国立国際医療センターにおける輸入デング熱症例の臨床的検討」は、2005年1月から2006年12月までの2年間に国立国際医療センター国際疾病センター渡航者健康管理室を受診した日本人海外渡航者で、病原体診断または血清学的にデング熱・デング出血熱と診断された16例を対象として検討したもので、その報告を読むと、発熱の続く期間は、不明の1例を除く15症例をそれぞれ見ていくと、5、5、8、5、5、5、5、5、5、5、6、6、6、4、6日と、5日から6日ほどになります(平均有熱期間は、5.4日)。発症から受診までの期間は、治癒後検査のために受診した2例を除いて、2、5、5、5、5、6、6、6、3、4、5、2、8、7日と、これも5日から6日ほど。突然の発熱でデング熱は発症するわけですから、最近の海外渡航歴があって、なかなか熱が引かないので専門の医療機関を受診したということなのでしょうか。「16症例」では、半数の症例が発疹の出現を契機に国際疾病センター渡航者健康管理室を受診していたとあります。

 頭痛の出現割合は「62症例」では、90%ですが、「16症例」では、発症時に発熱とともに頭痛が伴った例は16症例中10症例で、63%であり、この場合は3人に2人ほどしか頭痛が出現しなかったことになります。データによっては、必ずしもデング熱の発症で頭痛を伴わないことがあるのです。「16症例」では、渡航者健康管理室での受診時に頭痛が残っていた例は、14症例中6例であり、43%と低くなります。発症から5日ほど経つと頭痛が引いてしまう人もいるわけです。デング熱を起こすデングウイルスには、D1(DEN-1)からD4(DEN-4)まで4つの型があります。「16症例」での、デングウイルスの型は、DEN-1が3例、DEN-2が3例、DEN-3が4例、DEN-4が1例でした。型によって、発熱以外の症状に違いがあるのでしょうか。



 発疹の出現を契機に医療機関での再度の受診を考えるという傾向があるとすれば、「62症例」では発疹は84%であり、「16症例」では50%です。「16症例」では、症状が数日(5日ほど)経っても緩和されないことで、医療機関を変えて再度受診したというケースもあります。8月26日に突然の発熱でデング熱を発症した紗綾さんは、発症3日めの29日に再び発熱し(発熱は2~7日間持続し、二峰性であることが多いと言われている)、「目の奥が痛い」と訴えた(頭痛?眼窩痛?「眼窩痛」は「62症例」では44症例中24症例で55%の割合で起こっている)ため、30日に再度診察を別の病院で受けます。この時にはデング熱の国内感染は報道されていました。医師はデング熱に感染した疑いがあると判断することになります。



 「62症例」では、41例において麻疹や風疹に類似した、主に四肢に分布する発疹がみられ、発熱が出現してから、平均5.7日後に出現したと報告しています。発疹が見られた症例では、ほとんどの例で解熱時に発疹が出現したということです。平均有熱期間は、5.4日というデータがあることから矛盾はありません。

 紗綾さんは、「血小板や白血球の数値が下がり」と述べていますが、10万/μL以下の血小板減少が「62症例」では57%に、「16症例」では、14症例中の86%にみられたと報告しています(PLT。血小板(platelet)の数が減少すると、 出血しやすくなる。基準値は15万~35万個/μL)。白血球減少は、「62症例」で71%(3,500/μL以下)に、「16症例」で79%(3,000/μL以下)にみられたと報告しており、殆どのケースでWBC(白血球数、white blood cell count)が異常値を示すことになります(基準値は3,500~9,800/μL)。「62症例」では、白血球数および血小板数の平均値は、発症後10日以内に正常化したと報告されています。

 アスパラギン酸とα-ケトグルタル酸をグルタミン酸とオキサロ酢酸に相互変換する酵素である「AST(アスパラギン酸アミノ基転移酵素、aspartate aminotransferase)」は、肝臓に多く含まれる酵素で、肝障害を知る手がかりになります。ウイルスの増殖などの何らかの異常で肝細胞が破壊されると、ASTは血液中に漏れ出します。健常者であれば、ASTは血清中には非常にわずかな量しか存在しない(基準値は、30 IU/L以下)のですが、溶血性疾患などの障害で異常値を示すことになります。「16症例」では、発症してから5日ほど経ってからの採血で、14症例の平均で94 IU/Lを示したと報告されています(最低で31、最高で342 IU/L)。「64症例」では、11 IU/L以上であった者は78%いて、平均では 82 IU/L(最低で13、最高で375 IU/L)だったといいます。このAST値の平均値が正常化するには3週間以上を要したと報告されています。

 デング熱の症状が「発熱」(100%。62症例/62症例)、「頭痛」(90%。54症例/60症例)、「筋肉痛」(60%。31症例/49症例)、「寒気」(56%。28症例/50症例)であるとするならば、インフルエンザの症状と大きく変わりません。ヒトスジシマカの成虫が活動する時期(5月頃から10月頃)に、蚊に刺されてから4日ほど(「デング熱国内感染患者 現時点での疫学情報のまとめ(平成26年9月4日)」)(PDF)のデータでは、潜伏期間の最短は第7症例(10代男性)、第22症例(10代男性)、第25症例(20代女性)の4日であり、最長は第13症例(30代女性)の13日。この症例だけが10日以上である。多くは5日~7日)経ってから高熱が出たならば、診察を受ける際に、医師に蚊に刺されたことを告げるのがいいでしょう。デング熱として治療を受けずに、熱が下がる前後に発疹が出たならば、再度受診して、やはり蚊に刺されていることを告げることが必要でしょう。

 デング熱への感染を防ぐには、これからは、私たちは公園などの樹木の多い、蚊に刺されそうなところに出かけるときは、虫よけスプレーをして(肌が露出している部分はもちろん、衣服の上からも。かつ、こまめにかけられるように持って)出かける必要がありそうです。高熱と頭痛などに苦しみたくはないですからね。

 多国籍製薬会社サノフィ(Sanofi S.A.)のワクチン事業部門である「サノフィ・パスツール(Sanofi Pasteur)」は、現在、デング熱のワクチンを開発中だといいます。ウォール・ストリート・ジャーナルの記事によれば、アジアでの研究結果では、開発中ワクチンのデング熱に対する予防効果はデング熱の型(血清型、serotype)によって異なり、DEN-1、DEN-2、DEN-3、DEN-4に対する効果はそれぞれ50%、35%、78%、75%だといいます。今回の日本でのデング熱の国内感染のウイルスの型はDEN-1。50%の予防効果しかないことになります。このデング熱のワクチンは、早ければ2015年に東南アジアで使用できるようになるかも知れないそうです。

(参考) 「デング熱のウイルスは、日本のヒトスジシマカに常在するようになってしまうのか。(1)

(参考) 「デング熱のウイルスは、日本のヒトスジシマカに常在するようになってしまうのか。(2)

                     (この項 健人のパパ) 

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 日本には存在しない(または稀な)感染症で、海外旅行者が渡航先で感染し、自国に帰国するときに持ちこまれたものを「輸入感染症(imported infectious disease)」といいます。海外渡航先での食べ物や水、または蚊に刺されたことなどが原因で感染し、帰国後に発症します。国立感染症研究所感染症情報センターは、輸入感染症を旅行者感染症として、コレラ、細菌性赤痢、腸チフス・パラチフス、デング熱、マラリアなどを例示しています。

 輸入感染症の1つにデング熱があります。2014年のデング熱輸入症例は第33週(8月15日現在)で98症例で、インドネシアからの輸入症例が多いといいます。日本国内でのデング熱とデング出血熱の発生は、2007年…89例、2008年…104例、2009年…92例、2010年…244例、2011年…113例、2012年…220例、2013年…249例あったのですが、今年2014年は8月15日までで98例になっているそうです。



 統計上は、輸入感染症としてのデング熱の最近の年間発症例数は200例強ですが、デング熱に特有の症状はないために、ほかの感染症と考えられて、治療が行われている場合も可能性としてあります。国立感染症研究所のページには、「デング熱を疑う患者の診断指標」が掲載されています。

 Aの2つの所見に加えて、Bの2つ以上の所見を認める場合にデング熱を疑う。
  A)必須所見
   1.突然の発熱(38℃以上) 2.急激な血小板減少(10万/μL以下)
  B)随伴所見
   1.発疹(発病数日後、解熱傾向とともに出現する場合が多い)
   2.悪心・嘔吐
   3.骨関節痛・筋肉痛
   4.頭痛
   5.白血球減少
   6.点状出血(あるいはターニケットテスト陽性)
  C)除外指標;CRPが10mg/dL以上の場合は、まず細菌感染その他の検索を優先してください!!


(注) ターニケットテスト(tourniquet test、止血帯試験)では、血圧を計る要領で、上腕部に止血帯を使って一定の圧力を加えておき、前腕に点状の出血班が見られるかどうかを判定する。毛細血管透過性亢進の有無(デング熱では毛細血管の透過性が増す)と血小板の機能低下の有無(デング熱では急激な血小板減少がみられる。血小板の基準値は、13万~35万/μLほどで、10万/μL以下で血小板減少症、40万/μL以上で血小板増多症とされる)をみる検査方法である。(注の終わり)

(注) CRP(C-reactive protein、C反応性蛋白)は、体内で炎症反応や組織の破壊が起きているときに血中に現れるタンパク質で、その産生量は炎症反応の強さに相関することから、血清中のCRPを定量して炎症反応の指標とすることができる。細菌感染では上昇しやすく、ウイルス感染では強い発熱を伴って発症するものでも上昇はわずかである(アデノウイルスなど一部のウイルス以外)。一般的な基準値は、~0.3mg/dLで、軽い炎症などが疑われる場合で、0.4~0.9mg/dLである。デング熱は強い発熱を伴うウイルス感染症であるが、CRPのそれほどの上昇はみられない。(注の終わり)

 2014年9日1日配信のNHKニュースからです。

 8月、国内でおよそ70年ぶりに感染が確認されたデング熱に、新たに東京などの19人が感染したことが国立感染症研究所の検査で確認されました。厚生労働省によりますと、全員が8月、東京の代々木公園付近を訪れていたということで、厚生労働省は発熱などの症状が出た場合は医療機関を受診するよう呼びかけています。

 デング熱はアジアや中南米など熱帯や亜熱帯の地域で流行している蚊が媒介する感染症で、ヒトからヒトには感染しません。8月、東京の代々木公園を訪れていた東京や埼玉の男女合わせて3人が、およそ70年ぶりに国内でデング熱に感染したことが確認されています。その後も症状を訴える人が相次ぎ、国立感染症研究所が検査したところ、東京や神奈川など6つの都県の合わせて19人がデング熱に感染したことが確認されたということです。これで今回国内でデング熱への感染が確認されたのは、合わせて22人となりました。いずれも重症ではなく快方に向かっているということです。

 厚生労働省によりますと、感染が確認された人は全員が8月、東京の代々木公園付近を訪れていて、最近1か月以内の海外への渡航歴はないということです。厚生労働省は「いずれも代々木公園付近で蚊に刺されたことが原因とみられる。蚊はあまり移動しないため、今のところ感染が大規模に広がることは考えられない」として、冷静な対応を求めるとともに、発熱などの症状が出た場合は医療機関を受診するよう呼びかけています。

 厚生労働省によりますと、新たにデング熱への感染が確認された19人の内訳は、東京都が13人、神奈川県が2人、埼玉県と千葉県、茨城県と新潟県がそれぞれ1人ずつとなっています。これまでに東京都で1人、埼玉県で2人の合わせて3人の感染が明らかになっていて、感染が確認されたのは合わせて22人となりました。年齢は10歳未満の子どもから50代までの男女となっています。


 国立感染症研究所の報告した「デング熱国内感染患者 現時点での疫学情報のまとめ」(PDF)によると、デング熱の発症日で最も早いのが、8月16日の東京都の20代男性と埼玉県の10代男性の2人。ともに、8月9、10日に代々木公園を訪れています。潜伏期間は6日ないしは7日。最も遅いのが、8月27日の千葉県の50代男性で、代々木公園周辺に8月15~18、21、23~25日と8回訪れ、8月23日に蚊に刺されたと申告しています。潜伏期間は4日。

 10歳未満の子供もデング熱の発症者の中にいます。東京都の男の子です。8月16日に代々木公園に行き、蚊に刺され、その5日後の8月21日に発症しています。子供がデング熱にかかった場合、その症状は一般的に大人の場合よりも軽く、快復も早いと言われていますが、生命を脅かすデング出血熱に発展する可能性が大人の場合よりも高いようです。

 テレビのロケ中にデング熱に感染した女性タレントの2人は、厚生労働省が発表した22人には含まれていないようです。そうだとするならば、24人がすでにデングウイルスに感染したことになります。デングウイルスを持った蚊が1匹だけでは、これだけの感染者が出るというのは考えにくい。ヒトスジシマカは2~3日おきに吸血し、また、集団でヒトを襲います。海外で感染し日本に入国した人をかなりの数の蚊(数十匹?)が刺して(デングウイルスのキャリアとなったその人物は数回、代々木公園の数か所を訪れ、そのたびに蚊に刺されたのかも知れません)、その体内にウイルスを取り込み、その蚊の数匹ずつが日を分けて(例えば、少なくとも8月10日、11日、16日、17日、18日、20日、21日、23日。「デング熱国内感染患者 現時点での疫学情報のまとめ」から推測した)、かなりの数のヒトを襲ったことで、感染がこれほどの広がりを見せていると考えるべきでしょう。

 デング熱を起こすデングウイルスには、D1(DEN-1、DENV 1)からD4(DEN-4、DENV 4)まで4つの型がありますが、今回の国内感染の事例すべてがD1であったようです。8月に入って、デング熱を発症した輸入感染症の患者からは、D1(旅行先はそれぞれインドネシア・ギリ島、インドネシア・スンバ島)とD2(バングラディッシュ、インド)という2つのタイプが確認されています。

(追記‐2014年9月2日) 2014年9月2日配信の時事通信の記事からです。

 厚生労働省などは9月2日、新たに大阪府や青森、愛媛両県などに住む14人のデング熱感染が確認されたと発表した。いずれも最近の海外渡航歴はなく、東京・代々木公園周辺を訪れていた。これまでに22人の感染が確認されており、感染者は10都府県の計36人になった。

 厚生労働省などによると、14人は未就学児から50代までの男女で、東京7人、大阪3人、青森、新潟、山梨、愛媛各1人。訪問日が確定できない3人を除き、8月5日~26日に代々木公園周辺を訪れており、8月14日~9月1日に発症した。

 発熱や頭痛などの症状があったが、重症化した人はおらず、容体は安定しているという。


 国立感染症研究所の報告した「デング熱国内感染患者 現時点での疫学情報のまとめ(平成26年9月2日)」(PDF)(愛媛県と新潟県各1人のデータは未掲載)によると、2日の追加発表分で、デング熱の発症日で最も早いのが、8月14日の東京都の20代女性で、8月10日に代々木公園及びその周辺を訪れています。潜伏期間は4日。最も遅いのが、9月1日の大阪府の10代女性で、代々木公園に8月25、26日に訪れたが、蚊に刺されたかはわからないと答えています。潜伏期間は6日または7日。大阪府高槻市保健所によると、デング熱に感染していたのは、この女性を含めた大阪府高槻市の10代女性3人で(発症はそれぞれ8月30日、8月31日、9月1日)、現在、入院中だが、容体は安定しているといいます。この3人を含むグループ24人は8月25日から代々木公園北側の宿泊施設に滞在し、25日の夜と26日の朝、代々木公園近くで軽い運動をし、26日午前には代々木公園内を歩いたと申告しているようです。24人のうち半数以上が「蚊に刺されたと思う」と話していることから、発症していない人も経過観察しているということです。平均的な潜伏期間(4日から7日)から考えると、感染していたとしてもこのグループからの発症はこれ以上なさそうです(不顕性感染)。

 厚生労働省などが9月2日に発表したところによると、新たに大阪府など6都府県の計14人について、デング熱の感染が確認され、その居住別の内訳は、東京都7人、大阪府3人、青森、山梨、愛媛、新潟県各1人。愛媛県の10代の少年は、高校の合宿で8月5~13日に代々木公園周辺に宿泊し、8月6日は代々木公園内をランニングしたといいます。愛媛県の少年と同じ合宿に参加した29人のうち、10代の少年1人にも発熱や発疹の症状があるため、国立感染症研究所でデング熱への感染の有無を検査するということです。

 新潟市保健所によると、8月16日から18日にかけて、代々木公園周辺の宿泊施設に滞在しながら、100人以上が参加する説明会に参加していた新潟市の10代の女性は、8月24日に発熱の症状を訴えて新潟市内の医療機関に通院したが、熱が下がらなかったため、5日後に入院し、その後、発疹やむくみの症状が出たが、回復したため、9月1日に退院したそうです。新潟市の研究所が検査したところ、デングウイルスの遺伝子が検出され、感染が確認されたということです。新潟県では、8月20日に代々木公園周辺を通った新発田市の10代男性が、8月24日にデング熱を発症しています。

 さらに、岡山県倉敷市保健所によると、8月中旬に代々木公園内を通ったと話している東京都内の大学に通う20代の男性が、帰省先の倉敷市で受けた血液の迅速検査でデング熱陽性と判明し、国立感染症研究所に確認検査を依頼しているそうです。

 デング熱の代々木公園での感染は、まだまだ広がりそうです。しかし、医療水準が高く、衛生環境の良好な日本において、致死率の低いデング熱をそれほど恐れる必要はありません。問題は、蚊が媒介するウイルス感染症がデング熱だけではないということです。蚊媒介感染症(mosquito-borne infection)は、感染症法上、全数届出疾患のうち四類感染症の対象とされています。対象疾患は、ウエストナイル熱、チクングニア熱、デング熱、日本脳炎、マラリアの5疾患があります。日本には、日本脳炎ウイルスが常在しています。日本脳炎(Japanese encephalitis)は、感染しても発症するのは100~1,000人に1人程度で、大多数は感染しても発症しません(不顕性感染)。しかし、発症したときの致死率は20~40%といわれています。日本脳炎ウイルスに感染しているブタなどを吸血したコガタアカイエカがヒトを刺すことによって感染します。

(参考) 「感染患者報告数の少ない日本脳炎の予防接種は受けるべきではないか?

 ウエストナイル熱(West Nile fever)は、2014年8月26日現在、アメリカでは、カリフォルニア州(93人)、ルイジアナ州(43人)、テキサス州(30人)、サウスダコタ州(22人)など34の州と地域から12人の死亡を含む297人の患者(髄膜炎もしくは脳炎のような神経侵襲性疾患(neuroinvasive disease)を起こしたのは、そのうち53%ほど)がCDC(アメリカ疾病対策センター)に報告されているといいます。医療水準の高いアメリカで、このデータからはその致死率は4%ほど。25人に1人は死に至ることになります。日本では、2005年8月24日に出国し、8月28日から9月4日までロサンゼルスに滞在後、9月5日に帰国した30代男性が、ウエストナイル熱を発症しています。帰国時に発熱及び頭痛、その後発疹しました。9月7日に近くの医療機関を受診し、さらに9月10日、川崎市立川崎病院を受診することになります。ELISA試験で、ウエストナイルウイルスに対する特異的IgM抗体陽性となりました。中和試験でも、ウエストナイルウイルスに対する特異的中和抗体を認め、ペア血清で4倍以上の上昇があったようです。その後回復したそうです。ウエストナイル熱の潜伏期間は3〜15日で、感染しても発症しないことが多く、発症する人の割合は5人に1人ほど(約20%)です。

 ウエストナイルウイルスはカラスやスズメなど鳥の体内で増殖し、その血液を吸った蚊に刺されることで、人に感染します。

 デング熱の予後(病気が治った後の経過)は、比較的良好だといわれています。後遺症を伴うことは殆どないのです。それに対して、日本脳炎やウエストナイル脳炎などの脳炎を起こすウイルス感染症は非常に恐ろしい病気です。神経系を標的として感染し、その機能に障害を与えるので、後遺症を伴いやすく、後遺症が残った場合は深刻な状態になります(ウエストナイル熱の発症者の100人に3人ほどがウエストナイル脳炎を起こすと言われている。日本脳炎は発症者の5人に1人は亡くなり、5人に1人は後遺症が残り、完全に治癒するのは5人に3人ほどだという)。(追記の終わり)

(追記‐2014年9月3日) 厚生労働省などは9月3日、新たに北海道や千葉県など4都道県の計12人について、デング熱の感染が確認されたと発表しました。いずれも8月に代々木公園やその周辺を訪れていました。これで、国内の感染者は11都道府県の計48人になりました。

 厚生労働省などによると、12人は10代から70代の男女で、居住別の内訳は東京都9人、北海道、千葉県、山梨県各1人。重症者はなく、入院中の患者を含めて全員快方に向かっているといいます。

 北海道の患者は40代の女性で、8月22日に代々木公園の周辺で蚊に刺され(代々木公園に隣接する明治神宮で、蚊に刺されて感染したものとみられている)、8月29日に発熱や頭痛を発症したといいます。潜伏期間7日。千葉県の患者は70代の男性で、8月に数日間、代々木公園内で土木作業を行い、8月24日に発症したそうです(詳細は、「デング熱国内感染患者 現時点での疫学情報のまとめ(平成26年9月3日)」)(PDF)(9月2日の愛媛県と新潟県各1人のデータは掲載された。また、帰省先の岡山県倉敷市で8月24日に発症した20代の男子学生も感染が確認された。千葉県の人のデータは未掲載)。(追記の終わり)

(追記‐2014年9月4日) 2014年9月4日配信の時事通信の記事からです。

 東京都は9月4日、代々木公園で採集した複数の蚊からデング熱のウイルスが検出されたため、同日午後2時から一部を除き同公園を閉鎖したと発表した。

 東京都によると、立ち入りが禁止されたのは中央広場や噴水池のある公園北側の地区(約44万6000平方メートル)で、道路を挟んで南側の陸上競技場や野外ステージのある地区(約9万4000平方メートル)は含まれない。期間は当分の間で、再開時期は未定。

 採集装置は園内10カ所に設置され、276匹のヒトスジシマカが採集された。このうち北側の地区4カ所
(「日本航空発始之地記念碑」周辺、渋谷門の北の「桜の園」周辺、西門の北のサービスセンター周辺、サイクリングセンター周辺(その北に国立オリンピック記念青少年総合センターがある))で採集した蚊からウイルスを検出。広範囲に及んだため、北側の地区全体を閉鎖することとした。同公園には路上生活者が約30人いるが、希望者には福祉施設などを紹介する方針。

 東京都は9月4日午後、国立感染症研究所の専門家とともに園内を視察。5日以降、生態系への影響を踏まえた上で蚊の駆除を行うほか、蚊の採集場所を20カ所に増やし、ウイルスの保有状況を追加調査する。


 厚生労働省などは9月4日、新たに群馬県などの7人のデング熱感染が確認されたと発表しました。10代から70代の男女で、東京6人、群馬1人。いずれも代々木公園周辺で蚊に刺されたとみられるそうです。これで感染者は、北海道、青森、茨城、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨、大阪、愛媛の12都道府県の計56人となりました(詳細は、「デング熱国内感染患者 現時点での疫学情報のまとめ(平成26年9月4日)」)(PDF)(9月3日の千葉県の人のデータは掲載された。群馬県の人のデータは未掲載)。

 群馬県は9月4日、県内の10代の男性がデング熱に感染したと発表しました。男性は8月29日に発熱し、病院を受診しましたが、熱が引かないため、9月に入って入院したといいます。8月に代々木公園を訪れ、蚊に刺されたことがあったということから、9月4日に群馬県衛生環境研究所が検査を行い、デング熱と確定しました。

 今までの発症者のデータで、一番早く発症したのは、東京都の20代の女性で、8月4日に代々木公園を訪れており、8月12日に発症しています。潜伏期間は8日(第52症例)。次は、8月14日の発症の東京都の20代女性で、8月10日に蚊に刺されています。潜伏期間は4日(第25症例)。同じく、8月14日の発症の東京都の20代女性で、8月9日に蚊に刺されています。潜伏期間は5日(第50症例)。第34症例の愛媛県の10代男性も8月14日に発症していますが、蚊に刺されたかは本人に記憶がなく、感染地を特定することは難しかったかも知れません。あくまでもしもの話しですが、デング熱の検査キットが普及していて、デング熱を疑う態勢ができていれば、この後、数日で集団発生事例として、感染地が特定され、蚊の駆除が始まっていたでしょう。そのときは、これだけの発症者が発生することは防げたかも知れません。

 気になるのですが、代々木公園には路上生活者がいるということですから、その路上生活者の中にデング熱に感染したが発症しなかった人がいた(または発症したが病院には行けなかった)とすれば、蚊に刺され続けることで継続的にデングウイルスを蚊に供給していたということが考えられないのでしょうか。そのために、ウイルスを持った蚊が数十匹も存在することになったと、、、路上生活者に対する聞き取りはなされるのでしょうか。路上生活者のデングウイルスへの感染の有無の検査はなされるのでしょうか。路上生活者を代々木公園から外へ出すことでウイルスを拡散させてしまう可能性はないのでしょうか。(追記の終わり)

(追記-2014年9月5日) “The Wall Street Journal”の2014年9月4日の記事によると、マレーシアでデング熱患者の急激な増加(deadly outbreak of dengue)が起こっており、特に首都クアラルンプールを取り囲み、日系企業が数多く進出している、人口密度の高いセランゴール州で深刻だといいます。

 今年は、8月30日までで、マレーシアでのデング熱による死者は131人(131 dengue-related deaths)。これは前年の同じ時期の38人のおよそ3.4倍になります。今年の感染者は6万8千人ほどで、このデータからは致死率はおよそ0.2%(感染者500人に1人が死亡する)。昨年(2013年)の感染者は1万9千人ほどで致死率は約0.2%。

 デング熱感染者の急激な増加の原因を研究者は、DEN-2という伝染性の強いタイプ(more virulent strain of dengue)(デングウイルスにはDEN-1、DEN-2、DEN-3、DEN-4の4タイプがある)のデングウイルスの流行だと指摘しているようです。

 デングウイルスのキャリアのヒトから吸血したメスのネッタイシマカの体内に移動したデングウイルスは、蚊の消化管から中腸(mid gut)(昆虫では胃にあたる)に移動し、その周辺で増殖(replication)を行います。およそ5日後、ウイルスは蚊の唾液腺(salivary glands)にも移動します。これで、ウイルスはヒトへの感染を準備したことになります。

 蚊は、吸血するとき、吸血しやすいように、血が凝固することを防止するための物質(抗凝血作用物質)を含んだ唾液をヒトに注入するのですが、そのときにウイルスもヒトの血管内に移動することになります。すべての種類のウイルスが、蚊の「胃」で増殖できるわけではなく、蚊媒介感染症のウイルスだけがそれをできるから、蚊を媒介としてデングウイルスなどがヒトに感染するのです。(追記の終わり)

(追記‐2014年9月5日) 2014年9日5日配信の産経新聞の記事からです。

 厚生労働省は9月5日、東京都新宿区の区立新宿中央公園で蚊に刺され、デング熱を発症したとみられる患者が確認されたと発表した。代々木公園周辺以外で感染者が確認されたのは初めて。新宿区は公園の蚊の駆除を始めた。

 厚生労働省によると、患者は埼玉県の30代男性で8月中旬から下旬、5回にわたり新宿中央公園を訪れた。8月30日に発熱や頭痛などの症状を訴えたが、入院はせず、容体は安定している。男性から検出されたウイルスの遺伝子配列は代々木公園で感染した患者と一致しており、同じウイルスが新宿中央公園に広がったとみられる。

 新宿中央公園は代々木公園の北約2kmで、行動範囲が100m以内とされる蚊が移動したとは考えにくいことから、厚労省は代々木公園周辺で蚊に刺された患者が、新宿中央公園周辺で別の蚊に刺されたことで感染が広がった可能性が高いとしている。

 厚労省などによると、岩手県と山口県でも初めて国内感染の患者が確認され、9月5日までに感染が明らかになった患者は14都道府県で71人。いずれも最近の海外渡航歴はなく、新宿中央公園の例を除き、70人は東京の代々木公園周辺を訪れていた。重い症状の患者はいない。


 岩手県は9月5日、県内に住む10代の女性がデング熱に感染したと発表しました。岩手県によると、デング熱への感染が確認された女性は、8月17日から18日の間に代々木公園の周辺で蚊に刺され、8月23日に発熱や頭痛、発疹などの症状が出て、岩手県で医療機関を受診したようです。潜伏期間は5日または6日。検査でデングウイルスが確認され、デング熱と確定したということです。

 2014年9月5日配信の時事通信の記事からです。

 神奈川県横浜市は9月5日、東京・代々木公園で蚊に刺されてデング熱に感染した横浜市南区の20代女性(「デング熱国内感染患者 現時点での疫学情報のまとめ(平成26年9月5日)」)(PDF)の第49症例)が、発症3日後に横浜市金沢区の「海の公園」で蚊に刺されていたと発表した。横浜市は同日、女性が蚊に刺された公園内の「犬の遊び場」2カ所を閉鎖。蚊を捕獲してウイルス検査を行う。

 女性は8月17日と24日に代々木公園で蚊に刺され、8月28日に発熱などの症状が出た。8月31日午後3~4時ごろ、海の公園を訪れ、蚊に4カ所程度を刺された。9月3日になってデング熱と診断された。横浜市は今後、ウイルスを持つ蚊が確認されれば駆除を行う。
(追記の終わり)

 残念ながら、デングウイルスが拡散している可能性が出てきてしまいました。

(参考) 「デング熱のウイルスは、日本のヒトスジシマカに常在するようになってしまうのか。(1)

(参考) 「デング熱のウイルスは、日本のヒトスジシマカに常在するようになってしまうのか。(3)

                   (この項 健人のパパ)

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(参考) 「デング熱のウイルスは、日本のヒトスジシマカに常在するようになってしまうのか。(2)

(参考) 「デング熱のウイルスは、日本のヒトスジシマカに常在するようになってしまうのか。(3)

 2013年9月1日、51歳のドイツ人女性が2週間の日本旅行を終えてフランクフルトの空港に降り立ちました。生来健康でしたが、9月3日より、40度の高熱を発し、吐き気に襲われ、続いて、小さく盛り上がって痒みを伴う発疹が体のあちらこちらにでき始めた(斑状丘疹状皮疹、maculo papular)といいます。9月9日にベルリンの病院を受診し、入院しました。鑑別診断の結果、臨床像より、デング熱(dengue fever、デンギー・フィーヴァ)を疑われることになります。9月10日(発症後7日目)に採取された、血清サンプルにおいて、デングウイルス(Dengue virus)IgM及びIgG抗体(間接蛍光抗体法、迅速試験)とデングウイルスNS1抗原(ELISA法、迅速試験)ともに陽性であったことから、彼女はデングウイルスに感染していることが確認されました。入院1週間後、回復して退院しました。

 長野県上田市(8月19~21日)、山梨県笛吹市(21~24日)、広島県(24~25日)、京都府(25~28日)、東京都(28~31日)という旅程をとった女性は、笛吹市で、複数個所、蚊に刺されたと申告したそうです。デング熱の潜伏期間(感染してから症状が出るまでの期間)は、3日から14日である(ほとんどの場合、4日から7日)ことから、笛吹市で感染した可能性が高いといえそうです。

 日本国内で行われている捕集蚊のサーベイランスにおいて、これまでデングウイルスが検出されたという報告はないことから、海外で感染し日本で発症した急性期の患者(診察を受けていないか、デング熱とは認識されず治療を受けた。デング熱に特有な症状はないので、他の感染症として治療され回復している例がかなりあるのではないかと考えられている。デング熱であれば、感染症法によって医師は診断後直ちに都道府県知事などに届け出る)の血液を吸血したヒトスジシマカに刺されることによりデング熱に感染した可能性が考えられます。


                    「デング熱発生届」の一部

 厚生労働省は、2014年8月27日、海外への渡航歴がない女性がデング熱に感染し、発症したと発表しました。デング熱を発症したのは、埼玉県内に住み東京都内の学校に在学中の10代の女性で、国内で感染したものとみられています。女性は、8月20日ごろに高熱などの症状がみられ、さいたま市内の医療機関を受診しました。国立感染症研究所が血液検体を調べたところ、8月26日にデングウイルスへの感染が確認されました。現在、容体は安定しているようです。東南アジアなどを旅行中に感染し、帰国後に発症する輸入感染症の症例は増えています(2014年は8月17日までに98人で、昨年(2013年)は249人だった)が、国内での感染は1945年に確認されて以来、報告がないということです。つまり、69年ぶりということになります。

(参考) 「輸入感染症 - ウイルス感染症の「デング熱」にバリ島で感染し、日本に

 WHO(世界保健機構)のページによれば、デング熱の発生率は過去50年間で30倍に増加しているといいます(The incidence of dengue has increased 30-fold over the last 50 years.)。1970年以前は、デング熱の深刻な流行のあった国は、9か国に過ぎなかったのが、現在では、アフリカ、南アメリカ、東地中海、東南アジア、西太平洋地域の100か国以上で流行しています。南アメリカ、東南アジア、西太平洋地域は、最も深刻で、2008年には120万人以上、2010年には230万以上が感染し発症したと報告されています。

 台湾では、南部の高雄市などで、デング熱(中国語では、音訳して「登革熱(denggere、1-2-4声)」)が流行しているようです。2014年8月26日配信の中央社の記事からです。

 疾管署公布今年至今本土登革熱病例984例,上週新増226例本土病例,副署長周志浩説,這是自2003年来単週最高,創11年新高。(台湾の衛生福利部疾病管制署は、今年のこれまでの国内でのデング熱感染例が984例となり、また、8月19日から25日までの1週間での国内での感染例は226例に及んだと発表した。1週間の記録としては2003年以来で最多となり、11年ぶりの高水準になったと副所長周志浩氏は語った)

 国内で感染し発症した984例の他に、海外で感染し国内で発症した例は129例あったようです。

 他説、境外移入病例感染来源分別為印尼49例,馬来西亜39例,菲律賓20例,新加坡7例,泰国4例,諾魯及緬甸各2例,柬埔寨、法属玻里尼西亜、沙烏地阿拉伯、印度、中国大陸及吐瓦魯各1例。(感染した場所は、インドネシアで49例、マレーシア39例、フィリピン20例、シンガポール7例、タイ4例、ナウル、ミャンマーがそれぞれ2例、カンボジア、フランス領ポリネシア、サウジアラビア、インド、中国、ツバルがそれぞれ1例だったと周氏は語った。)



 外務省の海外安全ホームページの「感染症(新型インフルエンザ等)関連情報」を読むと、2014年7、8月とも、台湾に関しては「感染症スポット情報」が発出されていません。少なくとも台湾南部において、デング熱のウイルスは常在していて、この感染例の数でも例年と大きく変わらないのでしょうか。2007年8月に台湾におけるデング熱発生状況を現地調査した日本の国立感染症研究所の研究員の報告するところによると、デングウイルスの流行した地区は衛生環境が良いにもかかわらず、狭い範囲で短期間に感染が広がったといい、雨季(高雄市は、6月から8月)においては、デングウイルス媒介蚊に対策を講じることは難しいようです。

 日本にも雨の多く降る時期はあります。梅雨期と秋雨期です。温暖化が進み、デングウイルス媒介蚊の繁殖を大きく許すようになれば(例えば、ヒトスジシマカが成虫のまま冬を越すことができるようになれば)、デング熱への感染のリスクが高くなります。デング熱が日本でも流行する可能性は、近い将来高くなるかも知れません。

 外務省の 海外安全ホームページ の2014年2月14日発出(本情報は2014年8月28日現在有効)の感染症スポット情報「東ティモール:デング熱の流行」からです。

 東ティモールでは、2014年に入ってデング熱の患者が急増しています。
 東ティモール保健省によれば、2013年12月28日~2014年2月7日までの患者数は242名で、同時期の患者数としては2009年以降で最も多くなっています。デング出血熱やデングショック症候群といった重症患者も多く発生しており、患者の約40%がこうした重症患者です。また、患者の約90%は首都のあるディリ県で発生しています。
 また、東ティモール国内の医療設備は十分ではなく、デング出血熱やデングショック症候群の治療を十分に行うことはできないため、このような状態が疑われた場合は、直ちにシンガポールなど、近隣の医療先進国への緊急移送が必要となります。


 オーストラリアの北にティモール海を隔てて小スンダ列島の東端にある島がティモール島です。ティモール島は、独立国である東ティモール(East Timor、Timor-Leste(ティモール・レシュテイ)、インドネシア語では、“timur”は、「東」を意味します)と、インドネシアの東ヌサ・トゥンガラ州の一部である西ティモールとに分かれています。

(追記) 2014年8月28日(木)配信のNNNニュースからです。

 厚生労働省は、国内でデング熱に感染した人が、8月27日に発表した女性に加え、さらに2人確認されたと発表した。3人は同級生で、東京の代々木公園でデングウイルスを保有する蚊に刺されて感染した可能性があるという。

 厚生労働省などによると、新たにデング熱への感染が確認されたのは、東京都に住む20代の男性と埼玉県に住む20代の女性で、いずれも海外渡航歴はないという。2人とも入院しているが、快方に向かっている。

 8月26日、埼玉県に住む10代の女性が、デング熱に感染したことが確認されたが、この3人は、東京都内の同じ学校の同級生で、学園祭の練習のため、今月上旬から中旬
(8月11日、14日、18日)にかけて、一緒に週に3回ほど代々木公園に出かけ、蚊に刺されたという。

 厚生労働省によると、蚊がデング熱に感染した人を刺すと、蚊の中で、1週間ほどかけてウイルスが増殖するという。都は8月26日から27日にかけて、3人が蚊に刺された渋谷門付近で35匹の蚊を調べた結果、デング熱のウイルスを持つ蚊は見つからなかったという。

 しかし、都は、代々木公園でデングウイルスを保有する蚊に刺されて感染した可能性もあるとして、この付近を8月29日朝まで立ち入り禁止にして、蚊の駆除を行うという。


 この3人は今月(8月)中旬まで、東京・渋谷区の代々木公園で、30人ほどでダンスの練習をしていたといいます。その機会にデングウイルスを持った蚊に刺され、感染したとみられています。30人ほどでダンスをしていたならば、ほかにも刺された人はいる可能性があります。感染しても全員が発症するわけではないので、不顕性感染者はいることになります。デングウイルスに対する抗体を持っているかの調査は行われるのでしょう(3人以外に感染が疑われる学生はいないと発表されています)。

 いろいろな可能性が考えられます。8月上旬ころ、デングウイルスを持っているヒトを刺した蚊は1匹だった?それとも数匹だった? ヒトスジシマカのオスもメスも花の蜜や樹液などを主なエサとしていますが、メスは機会を見て吸血するとそれを栄養として卵巣を発達させ卵を産み落とすといいます。成虫は30日ほどの寿命であり、メスはその間に4、5回産卵するといいます。

 デングウイルスを持ったメスのヒトスジシマカが1匹だけだった場合は、すでに寿命が尽きて、死んでしまっている可能性もありますが、数匹だった場合は、いまだデング熱を感染させる可能性があります。代々木公園では、8月28日午後5時から1時間半ほどかけて、デング熱の感染が確認された3人が蚊に刺されたとみられる入り口付近を中心に、蚊の駆除作業が行われたそうです。(追記の終わり)

(追記‐2014年8月31日)

 新潟県は8月31日、海外渡航歴がない県内の10代の男性がデング熱に感染した疑いがあると発表しました。この男性は8月20日に学校行事で代々木公園を訪れていて、蚊に刺された可能性があるといいます。8月24日に発熱や頭痛などの症状を訴えて入院。現在は、快方に向かっているそうです。同じ学校で他に症状が出ている人はいなようです。

 8月30日に新潟県の保健環境科学研究所がスクリーニング検査を行ったところ、デング熱に陽性の結果が出ました。新潟県は男性の検体を国立感染症研究所に送り、研究所はデング熱に感染したものかどうかの確認の検査を行っています。検査の結果は早ければ9月1日に判明するそうです。

 スクリーニング検査においては、発熱、強い頭痛などがあるという患者の検体をELISA法などでできる限り多く検査し、その中から陽性反応を示すものを拾い上げ、それに対して確認検査を行います。(追記の終わり)

(追記-2014年9月1日)

 横浜市は8月31日、神奈川県内の10代の女子高校生と20代の男子大学生の2人が、8月末に39度以上の発熱などを訴え、検査の結果、デング熱の陽性反応が出たと発表しました。2人とも代々木公園を訪れており、女子高校生は8月16日から18日にかけてセミナーの合宿で代々木公園付近に滞在し、男子大学生は8月18日、代々木公園を知人と訪れていたといいます。この日本国内でのデング熱感染はどれほどの広がりを持つようになるのでしょうか。

 この3人とは別に、少なくとも10人以上が、デング熱に感染した疑いがあるとみられており、検査が行われているといいます。9月1日昼ごろに、その結果が判明するようです。(追記の終わり)

(追記 -2014年9月1日)

 東京・代々木公園で民放の情報番組の収録をしたタレントの20代の女性2人がデング熱に感染していたことが9月1日、判明したようです。2人は現在治療中といいます。2人は8月21日午後、リポーターとして代々木公園で収録をしていた際、蚊に刺されて感染したとみられるそうです。収録には2人のほか番組スタッフら5人が参加しており、今後検査を受ける予定といいます。

 この女性タレントの1人は、ロケ翌日の8月22日、「両足を32~33か所蚊に刺された」と話していたといいます。26日に熱が出て、病院では風邪と診断され、解熱剤を飲んだことで、熱が下がったようです。ところが、29日夜に再び発熱し、「目の奥が痛い」と訴えたため、30日に別の病院へ行き、デング熱に感染した疑いがあることがわかったといいます。(追記の終わり)

                         (この項 健人のパパ)

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 長い間、ブログの更新ができていませんでしたが、そんなブログでも丁寧に読んでくださる方がいて、骨粗鬆症、日本脳炎、インフルエンザなどの記事はページビューが多いようです。次のようなコメントを当ブログの読者の方から頂戴しました。

 テリボンをすすめられ毎週1回打ってもらっています。42回目で骨密度を測りましたら、始めた頃よりあまりupが無く、先生は横ばいだから続けましょうと言われました。その日は数時間後に吐き気が酷く夕飯があんぱん1個というぐらいです。50回でもと言うのですが折角ここまで来たのにとあきらめられませんが吐き気も辛く逡巡しています。71歳です。骨密度は若い人に比べると50%ぐらいで、同年代に比べると83%です。宜しくご指導ください。(2013-09-26 15:05:26)

 骨粗鬆症への対応として、ヒト副甲状腺ホルモン製剤テリパラチド(商品名「テリボン」、「フォルテオ」)を用いていられる方もおり、その投与の副作用として、吐き気などの副作用に苦しんでおられる方も多くいます。「テリボン 副作用」の検索でこのブログに辿り着く方も多く、また「テリボン」の記事にコメントをお寄せくださる方の多く(コメントの掲載は選択させていただいております)がその副作用についてです。

 フォルテオの自己注射を始めて5か月になります。最近、神経痛のような症状が出て悩まされています。他に思い当たる原因もないので、もしやフォルテオの副作用かも? とあちこち検索しててこのブログに行き当たりました。詳しく分かりやすく書いてくださってて助かりました。現在の症状が副作用かどうかは未知数ですが、いろんな情報を参考にして対処していきたいと思っています。有難うございました。(2013-06-14 10:03:07)

 骨粗鬆症の怖いところは、「椎体圧迫骨折」をして、寝たきりになってしまうことです。「寝たきり」の生活は当然辛いものです。少し前から、寝たきりに近い状態になってしまった母は、「早くお迎えが来てほしい」とよく口にするようになりました。ベッドでテレビを見て1日を過ごすだけの生活に苦痛を感じているのです。踊りの先生をしていて、多くの生徒さんを教えて、発表会で「お弟子さん、とても上手に踊られるようになりましたね」という言葉を聞くのをとても楽しんでいた母にとって、人に会わず(自分の弱った姿を見られたくないためにお弟子さんの面会を拒んでいる)、日が暮れて眠くなるのを待つ1日はそれはそれは辛いものでしょう。

 テリボンの副作用に苦しむ皆さん。ここで、その辛さを吐き出してみませんか。辛さを共有できれば、少しは楽になれると思います。コメントに書き込んでください。本文に転載します。

 「テリボン」の販売元「旭化成ファーマ株式会社」が2012年年7月に「市販直後調査期間中の副作用発現状況のご報告(調査期間:平成23年11月25日~平成24年5月24日)」という文書を出しています。そこに記述される骨粗鬆症治療薬『テリボン皮下注用56.5μg』(一般名:テリパラチド酢酸塩)の副作用の発現状況を見てみましょう。



 販売開始から6ヵ月間にテリボンを投与されたと推定される症例数は約28,000例で、調査の対象となった医療機関6,828施設から収集した副作用は、1009例1584件だったようです。これによると、28例に1例は副作用が報告されたことになります。その主な副作用は、「悪心」417件、「嘔吐」147件、「浮動性めまい」114件、「頭痛」112件、「発熱」80件、「動悸」68件、「血圧低下(低血圧を含む)」67件などでした。悪心は、投与により副作用を経験する人の26%(4人に1人)ほどに発現することになり、投与後2時間以内に悪心が発現するのは75.9%と高率になったようです。





 悪心(おしん、nausea(ノーズィア))とは、今にも吐きそうな実に不快な感覚で、車酔いや船酔いで味わうあの感覚です。「吐き気」という言葉にしてしまうと伝わらない不快さがあります。テリボン投与後、2時間以内にこの悪心が発現し(75.9%、4分の1の人は2時間よりも後に発現)、それは4時間以内に消失した(61.5%)という報告があります。このことは長くとも4時間耐えれば(十分に短いということが言える持続時間ではありません)、悪心が消えるということであり、また4時間以上続く人も4割ほどもいるということでもあります。悪心から嘔吐に至るケースもあり、嘔吐に至った場合、86.0%において、投与から3時間以内に嘔吐したとあります。嘔吐は始まってから3時間以内に消失する(63.6%)といいますが、それほどにも続くとも読み取れます。




 テリボンの投与を受けた200人に3人(1.49%)は悪心を経験することになり、悪心を感じた人の中で、投与後30分以内に現れた人は22.6%、30分~1時間以内では18.8%、1~2時間以内では34.6%で、投与後悪心の現れた人の5人に2人(41.4%)は1時間以内であり、3人に1人(34.6%)は1時間を過ぎ2時間以内であったことになります。悪心が続いた時間は、1時間以内であった人は28.6%、1~2時間であった人は15.4%、2~3時間であった人は14.1%だったそうです。



 血中のある種の薬物や毒物などに反応して、嘔吐中枢に刺激を送り、嘔吐を誘発する受容器があります。ドーパミンD2受容体、5-HT3受容体、ムスカリンM1受容体などです。これらの受容器のある領域を「化学受容器引き金帯(chemoreceptor trigger zone、CTZ)」と呼んでいます。テリボンの投与で、悪心や嘔吐が起きることがあるのは、この受容体がテリボンで活性化するためと思われます。

 上部消化管や延髄のCTZに存在するドーパミンD2受容体などが活性化すると吐き気や嘔吐が起こることから、この受容体への拮抗作用により吐き気を抑える薬剤があります。「ドンペリドン(domperidone、商品名はナウゼリン(協和発酵キリン))」は、主に上部消化管のドーパミンD2受容体に作用します。「メトクロプラミド(metoclopramide、商品名はプリンペラン(アステラス製薬))」は、CTZにも移行し、ドーパミンD2受容体に作用します。



 悪心という副作用に際して、テリボンの投与を「継続」した症例は、投与を「中止」した症例の半分以下と少ないですが、悪心、嘔吐の処置薬としてドンペリドンやメトクロプラミドが投与されて、テリボンの投与が継続されたケースが報告されています。

 喩えてみましょう。私たちの体の中には「吐き気スイッチ」がついています。ある種の薬物や毒物が入ってくると、このスイッチが入れられます。すると、吐き気を催すのです。吐くことによって、その薬物や毒物は体外に排出されます。生体の防御作用を担っているのです。しかし、どの薬物・毒物に反応してスイッチが入るかは、個人差があるようです。もちろん、その濃度や体調にもよるのでしょう。データによると、テリボンという薬物に対しては、200人に3人は「吐き気スイッチ」が入ったということになるのでしょう。

 この「吐き気スイッチ」に蓋をしてしまい、スイッチが入らないようにしてしまうのが受容体阻害薬である「ドンペリドン(domperidone)」や「メトクロプラミド(metoclopramide)」という薬剤です。

 メトクロプラミドは、人によっては、腹痛や下痢、めまい感や眠気が現れます。「悪心」というテリボンによる副作用を抑えようとして、メトクロプラミドによる別の副作用を経験することもあるようです。あるブログにこんな記述がありました。午後遅くに病院に行き、テリボンを投与してもらい、夕食を食べたら、吐き気止めにもらったメトクロプラミド(「プリンペラン」、ジェネリック医薬品もある)を服用する。すると、入浴などをしているうちに、やがてメトクロプラミドの副作用で眠気がさしてくるから、就寝。朝まで目が覚めなければ、悪心も感じない。

 メトクロプラミドは、通常成人1日7.67~23.04mg(年齢・症状による)を2~3回に分割し、食前に経口服用します。

(参考) 「注目の新薬「テリボン」は骨粗鬆症の治療に劇的な効果を上げるか。

 匿名さんから次のようなコメントをいただきました(2014-07-06 00:03:47)。同じような経験をなさっておられるご家族は数多くいらっしゃると思われます。皆さんだったらどのようなお返事をなさいますか。コメント欄に書き込んでいただくと有難いです。

 今年の元旦に80歳を迎えた私の母親は、昨年末辺りに腰の骨を圧迫骨折してしまい、テリボン注射を毎週一回打ちに行っています。が、今年の3月に階段から足を踏み外して左脚の踵を骨折し、二ヶ月に及ぶ入院生活を余儀無くさせられておりました。元々母親は高血圧なので、その薬を飲んでいましたが、低血圧のせいで何度か意識がなくなり大変な状態になりました。退院をしても1度キッチンの入り口で倒れてしまい、顔を叩いて名前を呼んだのですが、中々意識が戻らなくて焦りました。

 今では、ふらつきとかは無くなったものの、毎週の注射は連れて行く方も大変です。何故なら母親は左目の視力が殆んど無く、右目も微かにしか見えていない状態なので、車椅子で病院に連れて行っています。晴れた日は何とかなりますが、雨の日は大変です。テリボンよりも良くて飲むことが出来る薬は無いのでしょうか?母親よりも先に私の方が倒れそうです。


(参考) 起立性低血圧(orthostatic hypotension)という症状があります。寝ていた状態や座っていた状態から急に立ち上がったときに、血圧が急激に下がり、ふらつきやめまいなどを感じ、時には心神してしまうことです。起立性低血圧という症状が現れる原因の一つに薬剤があります。
 テリボンの添付文書には、「(1)一過性の血圧低下、意識消失(投与直後から数時間後にかけて)があらわれることがあるので、投与後に血圧低下、めまい、立ちくらみ、動悸等が生じた場合には、症状がおさまるまで座るか横になるように患者に指導すること。(2)一過性の血圧低下に基づくめまいや立ちくらみ、意識消失等があらわれることがあるので、高所での作業、自動車の運転等危険を伴う作業に従事する場合には注意させること」という記述があります。(参考の終わり)

 オレンジさんから次のようなコメントがありました(2014-07-18 11:56:31)。投稿者の経験した事柄について、掲載してあります。

 ワタシの母は81歳です。昨年5月の連休に圧迫骨折をし、連休中に診療している整形外科でテリボンを毎週注射するようになりました。今年の2月に一度、一瞬の意識消失があり、血圧の低下が見られました。同じクリニックの内科で診ていただき、朝晩血圧を測るように言われ、様子を見ていました。

 5月初旬に眼科の緑内障の視野検査後にまた一瞬の意識消失がありました。掛かりつけの内科に相談したところ、すぐに脳神経外科に行くように言われ、CTやMRIの検査をして頂きましたが、問題はありませんでした。

 5月15日に整形外科でテリボン注射後、お会計等のころにまた意識消失があり、血圧の低下が認められたようです。すぐに向かったところ、すでに救急車が到着し、ワタシもすぐに乗り込み、クリニックのスタッフとは何があったのか話を聞いておりませんが、救急車の中では血圧の急上昇があり、200近くになっていました。本人、意識は戻っていましたが、意識障害、パニック状態、ずっと排尿してるような状態で、ワタシのこともわかりませんでした。

 病院に到着し、CTを撮り出血がないので、脳梗塞の疑いがあるのでそちらの治療をしてくださいました。本人動いてしまって、MRIは撮れる状態ではありませんでした。翌日病院に行き少し回復し、ワタシのことはわかるようになりましたが、失語症のような症状がありました。

 3日目はまた更に回復し、MRIも撮り、脳梗塞もないことが確認され、治療は中断されました、飲んでいた薬が体から抜け、どんどん回復していました。首のエコーや脳波も異常はなく、先生も原因はわからない状態ですが、投薬していた薬の中に、サインバルタという抗鬱剤もあったようで、その副作用も気になりますが、いつも注射のあとに倒れていたので、テリボンが体に蓄積されて限界を超えてしまったのかなと身内では考えています。




 次のようなコメントを当ブログの読者、70歳主婦の方から頂戴しました。(2015-01-05 12:28:44)

 昨年9月、風邪の咳から胸椎椎体圧迫骨折で(テリボンの)注射を週一しております。痛みは取れつつありますが、(骨密度の検査値の)数値が上がりませんので、現在も継続しています。
 副作用は吐き気です。注射してから2~3時間後に出ます。でも、ひと寝入りしますと治まります。当日はやはり無理しないことですね。リハビリもがんばっています。もう少し人生を楽しみたいですね。

 前向きに考えて暮らしていらしゃるのはうれしいですね。これからも楽しい人生でありますように。

 次のようなコメントを当ブログの読者から頂戴しました。(2015-02-16 17:35:45)

 デリボン注射を骨粗鬆症治療目的で投与し、意識喪失し、救急車で入院。高Ca血症を起こし、腎不全となりました。大変思いがけない出来事で現在もまだ以前どおりの生活は不可能です。

 高カルシウム血症(hypercalcaemia)とは、血漿中のカルシウム濃度が10mg/dLほどという正常域の高値を大きく逸脱し、異常に高値を示す状態です。血漿カルシウム濃度が12mg/dLを上回ると、嗜眠、意識混濁、昏迷(激しい物理的な刺激によってのみ覚醒させることができる状態)、昏睡(激しい物理的な刺激でも覚醒させることができない状態)といった意識障害を引き起こします。

(参考) 「骨粗鬆症治療薬「フォルテオ」の副作用にはどのようなものがあるか。

  ----- この記事は、徐々に記述していきます -----

                      (この項 健人のパパ)



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