地球散歩

地球は広いようで狭い。言葉は違うようで似ている。人生は長いようで短い。一度しかない人生面白おかしく歩いてしまおう。

2009-02-21 00:00:00 | トルコ語

balık(バルック)

世界三大料理に数えられるトルコ料理。トルコの両隣、ギリシャともイランとも相似した料理が数多く見られるが、似て非なるはトルコ料理、である。イランやギリシャと同じ料理に見えてもその実、下ごしらえには数段の手間がかかり、盛り付けも断然美しい。伊達にオスマン朝時代、「世界帝国」の歴代のスルタンの舌と目を満足させてきた過去を持っているわけではない。

しかし、そのトルコ料理にしてみても、肉料理の充実度に比べると魚料理はお世辞にもこった料理とは言い難い。
私が知る限り、魚介類を使った料理は周囲の国々と然程は変わらない。基本は、フライとグリルである。とは言っても、さすがはトルコ。戒律の厳しいイスラームの国であっても、口に運ばれる魚介類の種類は、イランに比べたら断然多い。

さて、トルコの玄関口イスタンブルからトルコの旅を始めてみよう。
この魅惑的な都市で出逢う魚料理で誰もが知っているものと言えば、ガラタ橋の袂で食べる鯖サンドではないだろうか。塩コショウした鯖をフライにし、「世界一美味しい」トルコのバゲット、エキメッキに挟んで供される。シンプルながらも、日本人の舌に良く合う一品だ。裸で渡された鯖サンドを頬張りながらふと頭上を見上げると、ガラタ橋の上から無数の釣り糸が垂れているのが目に入る。これもイスタンブルを象徴する光景のひとつ。釣りに興じる男たちに混じって鯖サンドに舌鼓を打つ。ふと背後を見やれば千のモスク。ミナレットからアザーンの声が聞こえてくる。

次に、旧市街からガラタ橋を渡り、イスタンブル新市街に歩を進めてみる。
カフェやブティックが立ち並ぶ目抜き通りイスティクラルをそぞろ歩き。
そして、ヨーロッパ調のエリアから一歩路地に足を踏み入れると、そこにはアジアの混沌が広がっている。喧騒と人ごみ。イスタンブルの胃袋のひとつ、魚市場が現れる。その市場の中、魚介料理レストランが立ち並ぶアーケード、チチェッキ・パサジュは、喩えるなら築地市場内に軒を連ねる寿司屋のようなものだろうか。肉料理に飽きた頃にふらりと訪れたい場所だ。

そもそも中央アジアの遊牧民を祖先に持つトルコ民族。遊牧生活に適した肉食が食の中心となったのは当然である。
しかし、世界帝国となったオスマン朝の時代、様々な国や地域から多種多様な文物がこの地にもたらされていたことを考えると、魚料理のレパートリーが少ないことには少し驚かされる。かつて、魚は保存が難しく輸入には不向きだったのかもしれないが、それでもポルトガルの干し鱈のような保存法は存在したはずだ。輸送手段の困難さが理由というよりは、やはり遺伝子的にトルコ民族の舌に魚料理はあまり合わないということだろうか。トルコ料理の世界は、まだまだ深い。(m)

写真:アンカラ、サカリヤ地区の魚屋

*エジプトの魚はナイルの賜物 フィッシュ&チップスのイギリス エーゲ海の幸ギリシャ マグロはスペインから 日本の魚はやっぱり寿司! ポルトガルと言えば干し鱈料理 イランは当然キャビアかな?クロアチアはアドリア海の海の幸・沖縄の市場は不思議な魚介類でいっぱい!

イランの魚の名称はトルコから?トルコの魚の名称はギリシャから??(by yokocanさん)料理を巡って文化は巡る・・・『地球散歩』は、料理の文化交流も追及していきます。応援クリックよろしくね。
人気blogランキングへ



最新の画像もっと見る

10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
トルコ料理! (yuu)
2009-02-21 11:00:46
yokocanさんのところで散々美味しそうなものを見て、もうすっかりお腹はいつもトルコへ飛びまくり…
欲張って、季節のいいときに行こうとタイミングを狙い続け、はや数年…(笑)
ああ~~、いつか必ず行きます、食べに!!(笑)
返信する
フライ (オルサ)
2009-02-21 17:48:09
私、魚の最も好きな調理法がフライなんです。お刺身よりも焼き魚よりも好きなんです。ですから、鯖サンドを一度食べたら、きっと病み付きになるんじゃないかと思います。
鯖サンドを食べに、ふらっと出かけてみたいです。今は無理なんですけどね。
返信する
yuuさん (mitra)
2009-02-22 12:54:23
そうそう、私もyokocanさんのところで、いつも食の誘惑を受けています。トルコ料理って本当、奥が深いし、充実しているのですよね~。初夏のイスタンブールは全てが青く、本当に美しい。私もまた、その季節に行きたいな~と、いつも思っています。yuuさんも近く、トルコに食満喫の旅に出られるといいですね!
返信する
オルサさん (mitra)
2009-02-22 12:56:39
魚のフライ、美味しいですよね。カリッカリになるまで焼いたカレイなどの白身魚や南蛮漬け用の鯵のフライなど、特に好きです。確かに、オルサさんは鯖サンドの虜になりそう!
鯖サンドを食べにふらっとガラタ橋を訪れる・・・そんな生活、憧れます(笑)。
返信する
サバ (マーク)
2009-02-23 18:56:03
一瞬、サバからSAVAへ連想が行ったのは、私の気のせいですね・・・・

魚の輸送手段と保存方法というと、すぐにフレンチの凝ったソースを思い浮かべてしまいますが、世界帝国たるトルコではそんなマヤカシは許されなかったのかもしれませんね。(←根拠の無い発言です)

「鯖サンド」は初めて知りました。
日本のいわゆるフィレオフィッシュみたいなものとは全然違うのでしょうね。

う~ん、食べてみたい♪
返信する
マークさん (mitra)
2009-02-23 21:53:26
SAVAとは、京橋にあるあのSAVAでしょうか??
マークさんだと、つい京橋に結び付けてしまいます。
ソース、そうですよね。フレンチと言えばソースが決め手。トルコ料理は直球勝負なのでしょうか・・・。いや、私が知らないだけで、トルコにももっとこった魚料理があるのかもしれません。黒海の辺りにはまだ行ったことがないのですが、あの辺り何か臭います(笑)。
鯖サンド、素朴だけど美味しいです。
あ~、また食べたくなってきました!
返信する
Unknown (yokocan21)
2009-02-24 04:20:49
おぉ、名前が出てびっくりしましたよ。元々、トルコ人って魚を食べる習慣がなかったのでしょうね。何せ遊牧民ですから。そこで、このアナトリアに古くから住んでいたギリシャ人に魚料理はお任せだったんではないでしょうか。その名残として、魚の名前の殆どはギリシャ語、という。あくまでも私の推測ですが。
黒海地方、臭いますかぁ?あの辺は、兎に角カタクチイワシを使ったお料理が凄いです。揚げたり焼いたりは勿論、ピラフにしたり、パンに入れたり、バラエティー豊かですよ。私はちょっと苦手なんですけど、mitraさん、是非体験してみてください!

返信する
yokocanさん (mitra)
2009-02-24 11:49:53
yokocanさん登場!(勝手に文中に登場させてしまい、ごめんなさい!)
なるほどなるほど、魚にギリシャ名が多い理由、納得。そうですよね、アナトリアは古くからいろんな民族が住み行き交っていたから、いわゆる「トルコ人」以外の文化・風物もたくさん残っていますものね。
黒海「事情」も教えていただき、ありがたいです。なんだかこの記事、yokocanさんに教えていただくために書いたような(笑)。カタクチイワシですか~。アンチョビのイメージしか浮かびませんが、確かにカタクチイワシだったらパンに混ぜ込んでも行けそうですね。やはり塩漬けにしたものなどが利用されるのでしょうか。イランにいるうちに黒海沿岸に必ずや行ってみたいです。
yokocanさん、丁寧な解説、ありがとうございました。
返信する
Unknown (タヌ子)
2009-02-25 03:02:25
鯖サンド、美味しそうですね。
ギリシャ滞在中に一度本場のトルコ料理を食べてみたいと思っていたけれど、願いが叶わず、いつ食べられるものやら・・・
ギリシャ在住のフランス人がトルコに観光で行った時、ギリシャ料理と煮ているけれど、トルコ料理の方がずっと繊細だと言っていました。
トルコは海に囲まれているのに、お魚料理があまりないって意外でした。
先日ハンガリーに行ってきましたが、トルコ料理の影響ってバルカンとその周辺には根強く残っていることを実感しました。
返信する
タヌ子さん (mitra)
2009-02-26 15:56:38
タヌ子さん、トルコ訪問はまだでしたか。でもバルカン半島の国々や東欧諸国、フランスの近辺等かなり廻られているようで、うらやましいです。それに、やはり料理にとてもお詳しくて、旅のスタイルがとても素敵だといつも思ってブログを拝見しています。
ギリシャにお住まいの方も、やはりトルコ料理の繊細さについておっしゃっていましたか。
両者は本当に似ているけれど、時間のかけ方の差なのかなと思います。ギリシャ料理も、素材の良さを生かす調理法で、私は好きなんですけれど。
トルコの魚料理、yokocanさんが書いてくださったように、やはり黒海の沿岸などにはいろいろありそうです。いずれその辺りにも行って、リサーチ(は大袈裟ですね)したいです。
最近忙しく、なかなかブログにお邪魔できず申し訳ありません。時間が出来たらゆっくり伺いますね。
返信する

コメントを投稿