さらさへ
淡い白のアーモンドの花が満開の中東の春。降水量の多いこの季節、雨で春霞むテヘランの街をしばし抜け出して、さらさの憧憬と思い出の地、ギリシャへ向かいました。ギリシャを旅したのは13年ぶり。その間もギリシャという地は私なりに思い入れの強い土地のひとつでした。
かつて神話研究を志していた私にとって、ギリシャは未だ神々が住まう国であり、地中海の碧さに魅せられる者のひとりとして、エーゲの碧は常に心が求めてやまない「青」。また、ギリシャには魅力的な路地も多く、そこから聞こえてくる音楽や人々のおしゃべりは、土地の人々の息遣いを求める「旅人」にとって、なんとも魅惑的なのです。
そして何より、この『地球散歩』でのさらさとの往復書簡により、ギリシャの春を見てみたいという願いが少しずつ芽生えてきました。
私が碧とさらさの「散歩」に同行するよりも前、遺跡の写真に添えられた、春にまつわる深遠なギリシャ神話の紹介文を読み、また、自然と柔らかに調和したギリシャの人々の暮らしや宗教行事(復活祭)を読むに付け、さらさが恋焦がれてやまないギリシャの春をこの目で見てみたくなったのです。
バイロンが詩に詠ったような葡萄酒色の海、どこまでも抜けるような蒼穹、強烈な光と影が織り成す白い路地と遺跡の風景、そんなギリシャも勿論魅力的だけど、冬を越し新しい生命が芽吹き出す穏やかなギリシャの春の光に包まれたい、そんな気持ちで、さらさのかつて暮らしたギリシャを「散歩」してきました。
テヘランからイスタンブルを経て、アテネへ。
さらさもいつも意識しているように、古代史において、ペルシャとギリシャは良きにつけ悪しきにつけ、互いに影響を与え合った過去を持ちます。そして近代史において(その多くは負の遺産ではあれど)トルコとギリシャも忘れがたい関係を持ってきました。その歴史の流れを感じつつ、私たちふたりが大きく関係を持った国々を旅できればと思ったのです。
限られた時間、逸る気持ちを抑えつつ、さらさが足しげく通ったであろう路地を散歩し、さらさが薦めてくれたレストランや博物館へ向かい・・・。そんな時、路地から聞こえてくるのは「シガシガ(ゆっくり)」という人々の言葉。ギリシャ滞在中、何度この言葉を無意識のうちに聞いたことか。
そして、かつてペルシャが破壊した小花咲くアクロポリスの丘へ・・・
でもそこには、かつての両国の戦火の跡を見ることはできず、ただただ現在のギリシャという国の醸し出す穏やかさ、人々の暖かさ・英知、自然と調和した魅惑的な現代の首都を発見することになりました。
心に様々な葛藤と痛みをも抱えた旅路。
雨と靄が心を覆ってしまっていた出発の時。
だけど、辺りを優しく包み込むような淡い光と色に彩られたギリシャの春は、旅人の心を穏やかに溶けていく薬のように癒してくれることを肌で感じました。
早春のギリシャ散歩中、さらさが教えてくれた「もうひとつのギリシャ」が、パステルカラーの絵を私の心の中に描き続けていましたよ!
mitra
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