ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

05/05/24 『レ・ミゼラブル』2000回記念公演--感想その3

2005-05-28 23:57:58 | 観劇
今日はファンテーヌとエポニーヌについて書く。
ファンテーヌ=岩崎宏美
岩崎宏美のファンテーヌは、薄幸の女を感じさせる。最初の工場での女工姿の登場からしても影がある。歌が上手くてもこういう風情を漂わせられない人だとハマらない。透明感のある声もぴったりだ。初演の頃の記憶は本当に歌がいいなくらいだったが、子育てひと段落後に再登場した時、やはり母親役が似合うようになっていて感心した。特に倒れて運び込まれた病院のベッドで気がついてコゼットの幻影を見ながら歌う場面がよくなっていた。
今回の記念公演でも、その場面が秀逸。歌いながら両の目が光ってくる。バルジャンにコゼットを託し、♪「この手冷たくなるわ」♪でバルジャンに手を握ってもらいながら♪「抱いていて眠るまで 目覚めたらあの子に会いにいくわ」♪で絶命。ベッドに横たわらされると涙がツーっと目じりをつたう。薄幸の人生の最後に、唯一の気がかりの娘を託せて♪「神が使わした人」♪と思える人のぬくもりを感じながら死んでいけたことだけは本当によかったねと言ってやりたいくらいだ。私もここでもらい泣き。
追記:彼女の「夢やぶれて」は地声中心に歌っているようだ。地声が甘く切なく、裏声が澄んでいて透明感がある。声量もあり、地声から裏声への切り替えが実にきれい。安定感があってたっぷりと情感を楽しめていいのだ。ファンテーヌはやはり岩崎宏美が一番好きだ。

エポニーヌ=島田歌穂
かなり痩せられたようでちょっとびっくり。『葉っぱのフレディ』のような少年役が続いているからだろうかなどと思ってしまった。まあ、この役もかなり少年っぽいイメージだからいいんだけど。後で2000回記念のパンフで初演の頃の写真を見てあらためてびっくり。初期の頃はけっこう丸い顔をしてたのに今は顔もあきらかに痩せている。う、羨ましい。
大きなこぼれるような目の魅力は相変わらず。マリウスの頼みでコゼットの家を見つけ、学生仲間から引き離して連れていくと、マリウスは感謝の余り抱きしめてくれるがとっととコゼットのもとへ。♪「こんなもんよ私の恋 笑っちゃうわねホント」♪の寂しそうな顔。会わせてすぐに二人は両思いを確認して盛り上がってくれる。それを見ながら♪「夢なら消えた~」♪の三重唱(二人は「夢ではないわ」と盛り上がるのとハーモニー)。この大きな目に寂寥感をたたえて歌ってくれるのである。切ない!エポニーヌ切ない!とこっちも胸がしめつけられる。
二幕冒頭の「オン・マイ・オウン」もたっぷり聞かせてくれる。新演出後はテンポアップもされていて若いキャストがどんどん早回しのように歌ってしまう「オン・マイ・オウン」が気に入らなかった。アンケートにもそういう意見を書いて出してきたものだが。その後、ゆっくり歌うキャストも出てきていたが、島田歌穂は本当にたっぷりと情感をこめて歌ってくれて、その間(ま)も余韻も楽しめる。大体オーケストラも歌い手側のきっかけで次の演奏にいくところもあるのだから、その両者の連携でせめてこの歌だけでも、島田歌穂的なたっぷりテンポで今後もやってもらいたいと思うのは私だけだろうか。
マリウスのコゼットへの手紙を届けたことをきちんと報告したくて砦に戻る途中に政府軍に撃たれてしまい、その痛みに耐えながら砦にたどりつきマリウスの腕の中へ倒れこむ。重傷に気づいたマリウスに♪「大丈夫ムッシュ・マリウス痛くないわ」♪と「恵みの雨」で歌うシーンもマリウスの心の負担を減らすような気遣いにあふれている。鈍感なマリウスだったが、最後に彼女の気持ちに気づき、「生きてよポニーヌ 神様 愛で治せるならば~」と言ってくれ、彼の腕の中で死んでいけたのだ。島田歌穂のエポニーヌがやはり最高!


『レミゼ』の薄幸な女ふたりは最後は男の腕の中で死んでいく。いいなあ。私も最後は誰かに看取られて死んでいきたいなあ。いい死に方をするためにもその前の生き方が問われてくるだろうなあ。
さあ、明日はいよいよスペシャルバージョン千秋楽だ。また泣いてきます!


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