『梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)』「髪結新三」
河竹黙阿弥が三代目春錦亭柳桜の人情噺「白子屋政談」を元に書いた世話狂言で、五代目尾上菊五郎で初演。六代目、先代の勘三郎、松緑、勘九郎と引き継がれてきている。
「白子屋店先」
材木屋白子屋は主人亡き後借金がかさんでいて、後家のお常(秀太郎)は一人娘お熊(菊之助)に持参金付きの婿をとることになっていた。お熊は恋仲の手代忠七(三津五郎)に自分を連れて逃げてくれるように頼む。その話を廻り髪結の新三が門口でききつけていた。新三は忠七に親切ごかしにお熊を連れて逃げる手助けを申し出、忠七もその話にのってしまう。
「永代橋」
新三の弟子・下剃り勝奴(染五郎)の手引きでお熊は籠に乗せられて新三宅へ。新三と忠七がそれを追っていく途中で花道から相合傘で登場。一人で傘を持って新三がどんどん行こうとするのでそれを止めて一緒に連れて行ってもらいたいと頼む忠七。そこから新三の態度ががらりと変わる。忠七の駆け落ちを助けると言った覚えはなく、自分の情人のお熊が結婚させられるのを嫌って家出するのを助けただけだという。傘づくしの名台詞の後、新三は忠七を番傘で打ち据え下駄で蹴り散々に痛めつけて行ってしまう。店にも帰れなくなった忠七は川に身投げをしようとするが、そこを救ったのが乗物町の親分弥太五郎源七(富十郎)だった。
「長屋 新三内~家主内」
湯屋から戻った新三は、お熊をネタに金をゆすりとるつもりで、その前祝に魚屋から初鰹を買う。庭先には緑もあり「目に青葉~」以下全て揃って初夏の季節を感じさせる。そこに白子屋→縁談の仲介者車力の善八から頼まれた弥太五郎源七が話をつけにくる。当初はとぼけていた新三も金を持ってきていることがわかって話に乗ろうとするが、金包をあけて十両だとわかった途端、金を源七の顔に叩きつけてさんざんに毒づく。源七は顔をつぶされてたが、もう若くないし、表沙汰になって白子屋に迷惑がかかるからとじっと我慢をして帰っていく。
困った善八は次に新三の住む長屋の家主長兵衛(三津五郎の二役)に話をつけてもらうよう頼みに行き、長兵衛がいよいよ新三宅へ。刺青者とわかった上で新三をここに住まわせている大家長兵衛は店子にもつ権限をチラつかせながら三十両でお熊を返せと話をすすめる。この話に応じなければお上に訴え出るとまで言われてしぶしぶ応じる新三。「鰹は半分もらっていく」ということでさらにその金の半分を巻き上げられ、ためていた家賃まで持っていかれる。そこに大家の家に空巣が入って箪笥の中身4~50両分を盗まれたという知らせ。ようやく溜飲をさげたのだった。
「深川閻魔堂橋の場」
白子屋の一件以来、仕事もしなくなった新三は月代も伸ばし放題になってしょっちゅう賭場に出入りしている。今日もその帰り道だが、そこを待ち伏せしている弥太五郎源七に襲われる。恥をかかされた源七は新三を仕返しをする機会をねらっていたのだった。そこで地獄づくしの台詞の入った立ち回り。とうとう新三は殺されて、その後に大岡裁きとつながっていくのが話の筋らしいが、今回も一回斬りつけられた後、ふたりが並んで狂言はこれまでとご挨拶の後で幕。
今回、一番よかったのは三津五郎。前半の手代忠七もお店のお嬢さんに惚れられる二枚目をしっかり演じ、後半の大家役もすごかった。三津五郎の江戸和事の二枚目を初めて観たがけっこうよかった。一転大家で登場するとその演じわけに唸ってしまった。化粧も老けるだけでなく大家の性格もしっかり表現されていたし、表情、声の出し方から何から芝居全部がすごかった。勘三郎の新三もねじふせてしまうような老獪なたたみこみ、最後は空巣の知らせにあわてて戻っていくそのおかしみ。さすがだった。
新三はすごく期待していったのだけど、勘三郎の芝居がちょっと重たかったという印象をもった。白子屋での芝居ももっと軽くしないと永代橋で本性を現す時との差が出ない感じ。後半の三津五郎の大家とのやりとりは、テンポもよく息が合った感じでとてもよかった。染五郎の勝奴もチンピラ風なところがけっこうはまってよかったと思う。
弥太五郎源七の富十郎がかなり期待はずれだった。いくら50過ぎで年を取っているとはいえ、厄介ごとを顔でなんとかすることができる侠客の雰囲気がしない。町会長さんのような感じ。この役を三津五郎がやっても面白いと思った。源七と大家を二役でというのは過去にあるようだから、忠七をもっと若手にふってみたらいいんじゃないかと次の配役に想像がとぶ。
女形では、お熊の菊之助は濃すぎて浮いていて、ここで使うのは勿体ない感じがした。お熊の母の秀太郎はいつものようにいい感じ。車力の善八の姪役の小山三はかなり若い役(お熊と姉妹のように育ったとの設定)なのに可愛かった。TVの襲名特番で人気が出てファンが増えたせいで気が若やいでいるんじゃないかな。
写真は、歌舞伎座5月公演のポスターを有楽町の駅で撮影。
河竹黙阿弥が三代目春錦亭柳桜の人情噺「白子屋政談」を元に書いた世話狂言で、五代目尾上菊五郎で初演。六代目、先代の勘三郎、松緑、勘九郎と引き継がれてきている。
「白子屋店先」
材木屋白子屋は主人亡き後借金がかさんでいて、後家のお常(秀太郎)は一人娘お熊(菊之助)に持参金付きの婿をとることになっていた。お熊は恋仲の手代忠七(三津五郎)に自分を連れて逃げてくれるように頼む。その話を廻り髪結の新三が門口でききつけていた。新三は忠七に親切ごかしにお熊を連れて逃げる手助けを申し出、忠七もその話にのってしまう。
「永代橋」
新三の弟子・下剃り勝奴(染五郎)の手引きでお熊は籠に乗せられて新三宅へ。新三と忠七がそれを追っていく途中で花道から相合傘で登場。一人で傘を持って新三がどんどん行こうとするのでそれを止めて一緒に連れて行ってもらいたいと頼む忠七。そこから新三の態度ががらりと変わる。忠七の駆け落ちを助けると言った覚えはなく、自分の情人のお熊が結婚させられるのを嫌って家出するのを助けただけだという。傘づくしの名台詞の後、新三は忠七を番傘で打ち据え下駄で蹴り散々に痛めつけて行ってしまう。店にも帰れなくなった忠七は川に身投げをしようとするが、そこを救ったのが乗物町の親分弥太五郎源七(富十郎)だった。
「長屋 新三内~家主内」
湯屋から戻った新三は、お熊をネタに金をゆすりとるつもりで、その前祝に魚屋から初鰹を買う。庭先には緑もあり「目に青葉~」以下全て揃って初夏の季節を感じさせる。そこに白子屋→縁談の仲介者車力の善八から頼まれた弥太五郎源七が話をつけにくる。当初はとぼけていた新三も金を持ってきていることがわかって話に乗ろうとするが、金包をあけて十両だとわかった途端、金を源七の顔に叩きつけてさんざんに毒づく。源七は顔をつぶされてたが、もう若くないし、表沙汰になって白子屋に迷惑がかかるからとじっと我慢をして帰っていく。
困った善八は次に新三の住む長屋の家主長兵衛(三津五郎の二役)に話をつけてもらうよう頼みに行き、長兵衛がいよいよ新三宅へ。刺青者とわかった上で新三をここに住まわせている大家長兵衛は店子にもつ権限をチラつかせながら三十両でお熊を返せと話をすすめる。この話に応じなければお上に訴え出るとまで言われてしぶしぶ応じる新三。「鰹は半分もらっていく」ということでさらにその金の半分を巻き上げられ、ためていた家賃まで持っていかれる。そこに大家の家に空巣が入って箪笥の中身4~50両分を盗まれたという知らせ。ようやく溜飲をさげたのだった。
「深川閻魔堂橋の場」
白子屋の一件以来、仕事もしなくなった新三は月代も伸ばし放題になってしょっちゅう賭場に出入りしている。今日もその帰り道だが、そこを待ち伏せしている弥太五郎源七に襲われる。恥をかかされた源七は新三を仕返しをする機会をねらっていたのだった。そこで地獄づくしの台詞の入った立ち回り。とうとう新三は殺されて、その後に大岡裁きとつながっていくのが話の筋らしいが、今回も一回斬りつけられた後、ふたりが並んで狂言はこれまでとご挨拶の後で幕。
今回、一番よかったのは三津五郎。前半の手代忠七もお店のお嬢さんに惚れられる二枚目をしっかり演じ、後半の大家役もすごかった。三津五郎の江戸和事の二枚目を初めて観たがけっこうよかった。一転大家で登場するとその演じわけに唸ってしまった。化粧も老けるだけでなく大家の性格もしっかり表現されていたし、表情、声の出し方から何から芝居全部がすごかった。勘三郎の新三もねじふせてしまうような老獪なたたみこみ、最後は空巣の知らせにあわてて戻っていくそのおかしみ。さすがだった。
新三はすごく期待していったのだけど、勘三郎の芝居がちょっと重たかったという印象をもった。白子屋での芝居ももっと軽くしないと永代橋で本性を現す時との差が出ない感じ。後半の三津五郎の大家とのやりとりは、テンポもよく息が合った感じでとてもよかった。染五郎の勝奴もチンピラ風なところがけっこうはまってよかったと思う。
弥太五郎源七の富十郎がかなり期待はずれだった。いくら50過ぎで年を取っているとはいえ、厄介ごとを顔でなんとかすることができる侠客の雰囲気がしない。町会長さんのような感じ。この役を三津五郎がやっても面白いと思った。源七と大家を二役でというのは過去にあるようだから、忠七をもっと若手にふってみたらいいんじゃないかと次の配役に想像がとぶ。
女形では、お熊の菊之助は濃すぎて浮いていて、ここで使うのは勿体ない感じがした。お熊の母の秀太郎はいつものようにいい感じ。車力の善八の姪役の小山三はかなり若い役(お熊と姉妹のように育ったとの設定)なのに可愛かった。TVの襲名特番で人気が出てファンが増えたせいで気が若やいでいるんじゃないかな。
写真は、歌舞伎座5月公演のポスターを有楽町の駅で撮影。
だからそういうお馬鹿で可哀想な娘は菊之助ではちょっと合わないと思う。凛としすぎてる。だからって、お馬鹿で可哀想な娘を演じてはまる女形って誰だろう。
そうそう、今日は歌舞伎のチラシを整理したい一心でクリアファイルを買ってきて整理しました。表表紙は3月の八重垣姫の絵の方のチラシ。裏表紙は昔から別のファイルに入れてあった玉三郎の舞踊DVDの『鷺娘』のチラシ。ああ、こういう整理は大好きなのに部屋の整理は見ないフリとか見たくないから出かけるとかね。ハハハハハ。
そうそう、最後は二人ならんで、ご挨拶だったんですよね。忘れてた。
私も昼の部の感想 書いたんですが、やっぱり、筋書きがないと、いろいろ記憶の欠如が…(^_^;)
なくて気が付く 筋書きのありがたさ。です。
歌舞伎のチラシ、私も観始めたときから集めているのですが、いいかげん、収集つかなくなってます(^_^;)>゛。おまけにイヤホンガイドの冊子も、歌舞伎座のチラシも 途中で判型が変わってしまったんで、整理に悩む日々です。
確かに歌舞伎座のチラシは3月公演の写真入りチラシからA4判になってしまいましたね。文字チラシまではB5だったのに。A4だと2つに折ってもキャビネ判クリアファイルで整理している舞台写真に一緒に入らなくなってしまい、ちょっとがっかりしていたのです。A4判のクリアファイルで以前から舞台全部を一緒にチラシのファイルをしていたのですが、重くなりすぎて取り出すのがおっくうになってしまっていました。チケットもそこに一緒に入れていたのですが紛れ込んだりしてね。
そこで昨日は歌舞伎以外を整理しようと、もう1冊買いに行きました。SATYでは300円もしたので今度は100円ショップに行ったら、欲しかった40ポケットタイプはラスト1冊!娘に石油高騰でクリアファイルが100円ショップでは品薄になっていると聞いたところでしたが、本当でした。バイトのお姉さんにラスト1冊だったとその話をしたら知らなかったって(笑)。
やはりプラスチック製品って石油からできてるんですね。こういうところからも世の中の動きがわかりました。
『盟三五大切』の原稿を書くために『歌舞伎名作ガイド50選』を見ていたら、作品がアイウエオ順になっているので『髪結新三』が次のページにきてました。そのページの写真がちょうど、勘九郎の新三、仁左衛門の源七、芝勘の忠七でした。
やっぱり、富十郎の源七ではねえ、物足りなかったんですよ。次に観るとしたら仁左衛門の源七がいいなあ。そうすれば、最後のふたりの勝負も観る価値がある。お熊は七之助か芝のぶが騙される馬鹿な小娘の雰囲気が出ると思う。