追悼記事の後は喜劇の感想を一本書いておこう。
彩の国シェイクスピア・シリーズ第20弾【から騒ぎ】
演出:蜷川幸雄 作:W.シェイクスピア 翻訳:松岡和子
今回の配役は以下の通り。
ベネディック=小出恵介 ビアトリス=高橋一生
クローディオ=長谷川博己 ヒアロー=月川悠貴
ドン・ペドロ=吉田鋼太郎 ドン・ジョン=大川浩樹
レオナート=瑳川哲朗 その弟アントーニオ=手塚秀彰
あらすじは公式サイトより以下に引用。
「パデュアの若き貴族ベネディックとメッシーナ知事レオナートの養女ビアトリスは、会えば口論ばかりしている仲だった。ある時、ベネディックの主君ドン・ペドロが異母弟ドン・ジョンとの争いに勝利し、凱旋の途中で一行を連れてメッシーナに立ち寄るが、そこでベネディックの親友でこの度の戦で戦功を挙げたフローレンスの若き貴族クローディオが、知事の跡取り娘ヒアローに恋をしてしまう。ベネディックには勇猛果敢なクローディオの変心を理解できないが、ドン・ペドロは朴訥な彼に代わってこの恋をとりまとめ、ついでにベネディックとビアトリスをもくっつけてしまおうと考える。しかし一行に恨みを持つドン・ジョンがクローディオとヒアローの縁談を壊そうと企んだことから事態は意外な展開をみせ・・・
舞台の手前側と奥側に階段がついた装置に大理石の彫像を模した男女の白い裸像が林立する面白い舞台。そこに上からシャンデリアが降りてくると室内、なくせば屋外となる設定。この舞台装置の活用が今回のドラマのテンポを上げ、軽妙さを増していて秀逸だった。
観劇直前に小出恵介がTVドラマ「のだめカンタービレ」の乙女な男子の真澄ちゃんとわかり、娘役やるんだったっけ?状態となったが、開幕すると立派な立役(笑)だった。初舞台とは思えないほどの堂々たるコメディアンぶりにびっくり。口論の好敵手ビアトリスの高橋一生も普通に綺麗なお姉さんぽい娘役を高い声を綺麗に出して爽やかな口喧嘩を見せてくれた。
ヒアローの月川悠貴はカリスマ的に美しい娘役。蜷川シェイクスピア・オールメールシリーズの「大輪の花」的存在になっている。そのヒアローに惚れ込むクローディオも細身の長身の長谷川博己がノーブルに演じる。ノーブルなカップル誕生に合わせて騒がしい二人もくっつけてしまえという楽しい策略が展開する一方、ドン・ペドロの妾腹の弟で嫉妬心の塊となっているドン・ジョンが家来とともにめぐらす陰謀が光と陰のように展開するのがこの作品の妙である。
大川浩樹は蜷川の舞台で悪い脇役を個性的に演じてくれる常連だが、今回も作品の陰影を濃くしてくれている。その策謀にひっかかって楽しい策略を共に練っていたドン・ペドロとレオナートが仲違いさせられるのだが、吉田鋼太郎と瑳川哲朗という重鎮が幸福に浮かれたり悲嘆にくれたりとふり幅の大きい役どころをしっかりと抑えてくれている。
レオナート家の侍女たちも達者な脇役(岡田正、清家栄一)が楽しく演じてくれていて心地よい。また夜警たちとそれを率いる警察署長ドグペリー(妹尾正文)の面々は無教養な輩たちなのだが、教養をしっかり身につけた人々が見抜けなかった悪事をしっかりと見つけて摘発してくれ、その辺りの皮肉のきかせ方にもさすがにシェイクスピアだと思わされる。しかしながら、無教養さからくる言い間違いばかりの台詞の濫発を楽しめるかどうかは役者たちの芸にかかっていると思われ、今回は井手らっきょたちの個性も生きて軽妙さを楽しめた。夜警に出る前の点検時にやたら防具を身につけたり脱いだりしていると思ったら、ドン・ジョンの家来の悪事の話の立ち聞きに脱いで身体を白く塗って彫像になりすました演出には笑えた!!
これまでのオールメールシリーズでは「間違いの喜劇」が面白かったが、それを超えてしまった。「から騒ぎ」の方が陰謀がらみの陰影のあるストーリー展開ということもあるし、夜警たちの場面も面白く思わせる脇役たちまで役者が揃って演出が成功しているためでもあると思う(夜警たちの場面で盛り下がりやすいので上演頻度が高くないのだと推測している)。
今回の「から騒ぎ」は無条件に楽しめた舞台だった。思い出してこれを書いているだけで気分が明るくなる。楽しく反芻できる舞台と出会えることは幸せだ。
写真はこの公演の宣伝画像。
観劇直後の感想とミニミニオフ会の記事はこちら
(11/23追記)
ドン・ペドロとクローディオって「ヴェニスの商人」のアントーニオとバサーニオと同じような関係なのかぁと西岡徳馬と藤原竜也のいちゃつきシーンも重なってニヤニヤしてしまった。そういえばシェイクスピアってそういう人だという話もあったっけ(^^ゞ
彩の国シェイクスピア・シリーズ第20弾【から騒ぎ】
演出:蜷川幸雄 作:W.シェイクスピア 翻訳:松岡和子
今回の配役は以下の通り。
ベネディック=小出恵介 ビアトリス=高橋一生
クローディオ=長谷川博己 ヒアロー=月川悠貴
ドン・ペドロ=吉田鋼太郎 ドン・ジョン=大川浩樹
レオナート=瑳川哲朗 その弟アントーニオ=手塚秀彰
あらすじは公式サイトより以下に引用。
「パデュアの若き貴族ベネディックとメッシーナ知事レオナートの養女ビアトリスは、会えば口論ばかりしている仲だった。ある時、ベネディックの主君ドン・ペドロが異母弟ドン・ジョンとの争いに勝利し、凱旋の途中で一行を連れてメッシーナに立ち寄るが、そこでベネディックの親友でこの度の戦で戦功を挙げたフローレンスの若き貴族クローディオが、知事の跡取り娘ヒアローに恋をしてしまう。ベネディックには勇猛果敢なクローディオの変心を理解できないが、ドン・ペドロは朴訥な彼に代わってこの恋をとりまとめ、ついでにベネディックとビアトリスをもくっつけてしまおうと考える。しかし一行に恨みを持つドン・ジョンがクローディオとヒアローの縁談を壊そうと企んだことから事態は意外な展開をみせ・・・
舞台の手前側と奥側に階段がついた装置に大理石の彫像を模した男女の白い裸像が林立する面白い舞台。そこに上からシャンデリアが降りてくると室内、なくせば屋外となる設定。この舞台装置の活用が今回のドラマのテンポを上げ、軽妙さを増していて秀逸だった。
観劇直前に小出恵介がTVドラマ「のだめカンタービレ」の乙女な男子の真澄ちゃんとわかり、娘役やるんだったっけ?状態となったが、開幕すると立派な立役(笑)だった。初舞台とは思えないほどの堂々たるコメディアンぶりにびっくり。口論の好敵手ビアトリスの高橋一生も普通に綺麗なお姉さんぽい娘役を高い声を綺麗に出して爽やかな口喧嘩を見せてくれた。
ヒアローの月川悠貴はカリスマ的に美しい娘役。蜷川シェイクスピア・オールメールシリーズの「大輪の花」的存在になっている。そのヒアローに惚れ込むクローディオも細身の長身の長谷川博己がノーブルに演じる。ノーブルなカップル誕生に合わせて騒がしい二人もくっつけてしまえという楽しい策略が展開する一方、ドン・ペドロの妾腹の弟で嫉妬心の塊となっているドン・ジョンが家来とともにめぐらす陰謀が光と陰のように展開するのがこの作品の妙である。
大川浩樹は蜷川の舞台で悪い脇役を個性的に演じてくれる常連だが、今回も作品の陰影を濃くしてくれている。その策謀にひっかかって楽しい策略を共に練っていたドン・ペドロとレオナートが仲違いさせられるのだが、吉田鋼太郎と瑳川哲朗という重鎮が幸福に浮かれたり悲嘆にくれたりとふり幅の大きい役どころをしっかりと抑えてくれている。
レオナート家の侍女たちも達者な脇役(岡田正、清家栄一)が楽しく演じてくれていて心地よい。また夜警たちとそれを率いる警察署長ドグペリー(妹尾正文)の面々は無教養な輩たちなのだが、教養をしっかり身につけた人々が見抜けなかった悪事をしっかりと見つけて摘発してくれ、その辺りの皮肉のきかせ方にもさすがにシェイクスピアだと思わされる。しかしながら、無教養さからくる言い間違いばかりの台詞の濫発を楽しめるかどうかは役者たちの芸にかかっていると思われ、今回は井手らっきょたちの個性も生きて軽妙さを楽しめた。夜警に出る前の点検時にやたら防具を身につけたり脱いだりしていると思ったら、ドン・ジョンの家来の悪事の話の立ち聞きに脱いで身体を白く塗って彫像になりすました演出には笑えた!!
これまでのオールメールシリーズでは「間違いの喜劇」が面白かったが、それを超えてしまった。「から騒ぎ」の方が陰謀がらみの陰影のあるストーリー展開ということもあるし、夜警たちの場面も面白く思わせる脇役たちまで役者が揃って演出が成功しているためでもあると思う(夜警たちの場面で盛り下がりやすいので上演頻度が高くないのだと推測している)。
今回の「から騒ぎ」は無条件に楽しめた舞台だった。思い出してこれを書いているだけで気分が明るくなる。楽しく反芻できる舞台と出会えることは幸せだ。
写真はこの公演の宣伝画像。
観劇直後の感想とミニミニオフ会の記事はこちら
(11/23追記)
ドン・ペドロとクローディオって「ヴェニスの商人」のアントーニオとバサーニオと同じような関係なのかぁと西岡徳馬と藤原竜也のいちゃつきシーンも重なってニヤニヤしてしまった。そういえばシェイクスピアってそういう人だという話もあったっけ(^^ゞ
役者さんたちの熱演も演出の妙も、
とても楽しめた舞台でしたね。
ノーブルなカップルと騒がしいカップル・・・
まさにその通りで、大受けしてしまいました(笑)。
個人的には、月川さんの演技に心惹かれました。
次の喜劇はいつですかねー。
今からとても楽しみですv
この作品は夜警たちの場面の役者が揃わなかったり演出がよくないと盛り下がってしまって全体の面白味も削いでしまうと思うのですが、ここもクリアしてくれたことで一気に蜷川さんの喜劇の代表作になった気がしています。
松岡さんの翻訳本の解説を読むと、このおかしな言い間違いはマラプロピズムというそうで、シェイクスピアの喜劇には重要な要素のようです。英語の言い間違いの可笑しさを日本語に置き換えるのは大変だと思います。松岡和子さんの翻訳は私はけっこう好きなので、頑張って全作品の翻訳を達成していただきたいです。
私もオールメールシリーズでは「間違いの喜劇」が一番好きだったのですが、この作品はほんとにおもしろかったですし、役者さんが皆とても楽しそうに演じていらしたのが印象的でした。
特に若いカップルを見守る鋼太郎さんのはじけっぷりが楽しかったです♪
次回作も楽しみですね。
シェークスピアの喜劇の中でもこれはあたりの上演だったと思います。
★「地獄ごくらくdiary」のスキップさま
>のびやかに演じる若手と脇を固める演技派のベテランの構図......シェイクスピア喜劇の成立はなかなか難しいと思うのに蜷川さんのキャスティングと演出でしっかりと今回も見応えある舞台になっていたのは嬉しい限りでした。
オールメールシリーズは本当に楽しいです。次に何がくるか楽しみです。
★どら猫さま
この作品は夜警たちの場面の役者が揃わなかったり演出がよくないと盛り下がってしまって全体の面白味も削いでしまうので日本での上演頻度が高くないのだと思いました。今回はここもクリアしてくれたことで一気に蜷川さんの喜劇の代表作になった気がしています。
10月は歌舞伎と「サド侯爵夫人」、花組芝居の「牡丹燈籠」とこの作品を観劇。やっぱりオールメールでした。今、日本の女優さんで存在感の大きくて何がなんでも観たい人って少ないなぁとあらためて気づいてしまいました。
終演後、花びらを大量に、景気よくブーケだ、米だ、いた噴水だ、と、かまびすしく盛り上がりました。
シリーズは見逃せませんね。菊さまの洋装希望。
>そういえばシェイクスピアってそういう人だという話もあったっけ(^^ゞ
そうなんですかっ!!知らなかった!
・・という知識を入れてみるとまた違った見方ができるので
面白い・・・です♪むふふ♪
『間違い・・』よりは、私もはるかに面白かったです。
小栗君より小出君のほうに引き付けられる自分がいたのも確かですが、でもやっぱり
小栗君って品があるなあ・・とも思ったりして・・。
ぴかちゅうさま、映画『キサラギ』はご覧になりましたか?(小出君・小栗君ご出演)
めっちゃ面白いです!後悔させません!もしご覧になってなかったら是非是非♪もうレンタルされていますから・・♪
TBもさせていただきました♪♪
恒例の“降りもの”、白を基調にした舞台装置に赤い花が降ってきたのはそれはそれは美しかったですね。もしかして「卒塔婆小町」の時の赤い花と同じかもって思いながら観ていました。
★かずりん様
お名前もれの件、了解です。
上川さんの「ウーマン・イン・ブラック」ロンドン公演に行かれた際にシェイクスピア所縁の地をたずねられたかずりんさんはもうシェイクスピアの虜でしょう!
楽しく蜷川シェイクスピア劇を追っかけましょう(^O^)/
TBはうまくできていないようです。下記にかずりんさんの記事をご紹介させていただきますm(_ _)m
http://blog.goo.ne.jp/toukisyou/d/20081120
それと「キサラギ」はTVで観ました。前半は御飯をつくりながらでしたけれど、すごく面白かったです。もう一度じっくり観たい作品だと思いました。お父さん役の香川照之もよかった!若者にひとりおじさんが混じって最後のダンスも頑張ってましたよね。好きだなぁ、そういうの(笑)