ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

06/07/28 風間杜夫ひとり芝居三部作を一挙観劇

2006-08-18 23:57:03 | 観劇
七月大歌舞伎の合間を縫って硬派の『夢の痂』だけでなく、グッとくだけた「風間杜夫ひとり芝居三部作」も観劇してきた。
趣味の落語でもアマチュアの域を大きく超えているという風間杜夫。彼のひとり芝居はけっこう面白いという評判が耳に入っていたので、今回の2年ぶりの新橋演舞場での再演を逃す手はなかった。「カラオケマン」「旅の空」「一人」の三部作の一挙上演で7/28夜の一回公演のみ。1階3列目で大接近で観劇。

あらすじは以下の通り。
1.「カラオケマン」
冒頭の幕外で始まっていた三波春夫の扮装での「俵星玄蕃」。♪~槍は錆びても 此の名は錆びぬ 男玄蕃の 心意気 赤穂浪士の かげとなり 尽くす誠は 槍一筋に~♪
団塊の世代の牛山明はサラリーマンで課長にまで昇進し、妻と娘と息子の4人で暮らしている。彼の趣味はカラオケで接待でも役立つ特技と化している。「俵星玄蕃」は次の接待での目玉曲で自宅で練習しているところだったのだ。子どものことは妻にまかせて仕事ひとすじ。
ではなく、部下の若い女の子としっかり浮気もしている。デートの場所はいつものカラオケルーム。温泉旅行にも何回か行っているらしい。彼女の同僚の女性と彼の部下が結婚することになり、仲人を頼まれる牛山。初めてだしスピーチの練習も真剣だ。ところが結婚願望が募った彼女はその結婚式で不倫を妻に暴露してしまった。騒ぎが起こりそうなところを急遽「俵星玄蕃」の熱唱でおさめる牛山。

2.「旅の空」
交番に現れた中年男。記憶をなくしているらしい。軽装で家を飛び出したままらしく手がかりになる物はなにも持っていない。捜索届けが出ていないかも確認するが該当はない。警察官にすすめられて精神科医を訪れて相談するも、いろいろと想像してみるも全くの手がかりなし。

3.「一人」
記憶喪失に陥った中年男は旅役者一座に入っていた。今日も座長にいいつけられた買い物に出て、暇をみて公園で一人で台詞の練習。老婆や子どもを練習相手に頼んでもみるが…。そこに現れた若い男は自分を父だと言う。親戚が旅公演先で見つけて妻子に知らせたらしい。息子に会っても記憶が戻らないのだが、自分はどうやら牛山明で浮気を妻になじられてカッとなって家を飛び出したのだという。そういう話を聞いても全く記憶は戻らない。息子は母親から預かってきて離婚届けを差し出す。記憶が戻らない以上、元の家族のところには戻る気にもなれず申し出を受け入れる。そうして今一番やる気になっている旅役者暮らしを続けていこうとするところで終わる。

団塊の世代の男が迎えた人生の思秋期。学生時代には♪ああインターナショナル♪と歌い、「安保反対!」とデモをしたが、それは演劇サークルの女の子と一緒に行きたいからだった。そして就職してモーレツ社員になって、夫や父親という役割を果たしてきたが、ついにぶっ飛んでしまったようだ。自分が本当にやりたいことは何だったんだという思いがはじけたらしい。いつもどこかで何かを我慢しながら暮らしていた男が全てをリセット。そして始めた第二の人生はイキイキしているようだ。
ひとり芝居というと、ひとりで何役も演じ分けるイメージがあった。ところが今回の作品は牛山明がひとりでしゃべることで芝居を成立させている。相手とのやりとりは相手がなんとしゃべったかがわかる台詞を牛山がしゃべるという作り方。水谷龍二が作・演出でその脚本がいいのだ。再演ということでその時期にあわせたネタにさしかえていて、今的な笑いも盛り込まれている。
しかし圧倒的に風間杜夫の大熱演がいい。情けない男をあんなに一生懸命熱演されて、私たちは笑いに笑える。その客席のノリでさらに風間はノッテいくのだった。最後の挨拶のハイテンションがそれを伝えている。「ひとりで3時間もやって疲れるだろうと思われますでしょうが、全く疲れておりません」うーん、ハイテンション。

「俵星玄蕃」の科白部分は何を言っているのかわからないところもあったが、それはそれで許せる範囲(何年か前の市村正親の「市村座」での同曲はもっとすごかった)。若かりし頃の「蒲田行進曲」の銀ちゃんでみた喜劇的センスを十二分に発酵させて中年パワーが炸裂したような舞台だった。風間杜夫がひとり芝居を始めて10年たつという。自分で「風間のひとり芝居は熱い」とリーフレットに書いている。その熱さを保ち続けていつまで走ってくれるかと楽しみにしていくことにしよう。

しかしながらこの作品を見て強く思ったことは、今の団塊の世代もその前の世代ももう少し社会に向き合っていてくれればということ。そうすれば現在よりももっとましな社会になっていたのではないかと思うのだ。それは言っても今さらどうしようもないこととはわかりつつ.....。

写真は劇場の2階ロビーにあった風間杜夫の写真を携帯で撮影したもの。実物はもう少し太めだったけれど、やっぱりなかなか二枚目半の優男風でよいのであった。


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