ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

11/09/17 秀山祭夜の部③「口上」又五郎・歌昇襲名について考える

2011-10-12 23:58:00 | 観劇

9月秀山祭の公演の主題であるお二人の襲名披露の「口上」が夜の部にあった。
【又五郎・歌昇襲名披露「口上」】(以下、「歌舞伎美人」の公演情報より引用)
中村歌昇改め 三代目 中村又五郎襲名披露
中村種太郎改め 四代目 中村歌昇襲名披露
「又五郎の名跡は、播磨屋一門にとって大切な名跡で、その名を襲名することになった歌昇改め三代目又五郎、種太郎改め四代目歌昇と、幹部俳優が揃って、襲名披露のご挨拶を申し上げます。」
筋書の舞台写真には中央に芝翫が座っている。襲名披露公演の初日だけでも出演していただいたことには大きな意味があったのだと思わされる。二日目以降は吉右衛門が代わってと言って仕切っていて、新又五郎は足の怪我が目立たないように袴から出てしまう足先を緋毛氈と同じ赤い布で覆っていた。
上手への順=魁春、福助、松緑、芝雀、東蔵、藤十郎
下手からの順=梅玉、段四郎、染五郎、種之助、錦之介、歌六、新歌昇、新又五郎

皆さんの挨拶で披露したエピソードは省略。
「歌舞伎美人」のニュースの中で襲名披露公演の記者会見の記事はこちら
今回の公演を観、記者会見の内容や筋書のインタビューを読んで、播磨屋一門における今回の襲名の意味を考えたことをちょっと書いておきたい。

先代の又五郎は幼少期から初代吉右衛門のもとで修行し、劇団の「お師匠番」も勤めていたという。「お師匠番」というのは、通常は師匠の芸を次代へ伝えていく役割を果たすお弟子のこと。(福助のオフィシャルサイトで「お師匠番」について書いている記事がわかりやすい)
しかしながら、又五郎は脇役で初めて人間国宝になった役者であり、「お師匠番」の中でも大きな名前である。だからこそ既にひとかどの役者になっている歌昇がその名跡を継承するのだろう。
その特別な名前を継承する新又五郎に、吉右衛門は播磨屋の「お師匠番」になってくれると期待しているという。吉右衛門には子息がいないし、後継者をどうするのだろうということが心配されてもきた。それが今回の二人の襲名で、ある程度は明らかにされたように思う。
新歌昇が今回の襲名披露のお役で実に花形役者らしい姿に成長していることを見せてもらった。舞台で彼を見ていたら吉右衛門の後継者になってくれるんじゃないかとピンときた。

筋書きのインタビューで新歌昇が将来の夢として吉右衛門が演じてきたお役をいくつか挙げている。それと昼の部の「舌出三番叟」で染五郎と二人で踊っている。染五郎も叔父の芸を継承するようであるが、やはり高麗屋の跡継ぎであるわけで、播磨屋の立役としては新歌昇を育てていくということを打ち出してきたように思う。

記者会見で吉右衛門が以下のように語っていることからもその方向性を感じることができる。「同時に、種太郎さんがお父様の歌昇という名前をお継ぎになります。これからもお父様に厳しくご指導していただいて、もちろん私も見させていただきますが、ひとかどの役者になられることを期待しております。」

まだまだその可能性を強くにおわせるくらいの感じではあったが、今回の播磨屋一門の父子二人の襲名で、ポスト吉右衛門のひとつの手が打たれたように感じた。
昨年の秀山祭で、歌六・歌昇の兄弟とその子息たちが萬屋から播磨屋へ屋号を戻して一門を形成し、その中で種太郎=新歌昇を吉右衛門の継承者として育てていくという道が拓かれたのだと思った。
新歌昇と染五郎で切磋琢磨し、当代吉右衛門の芸の継承をしていってくれるのだろう。その時に「播磨屋のお師匠番」がしっかりと次代の後継者を育ててくれるというシフトを固めたように思えた。吉右衛門も新又五郎襲名に「これで播磨屋も安泰」とつくづく感じたとのこと。
これで播磨屋の芸がしっかりと継承されていくシフトが組めたようで、実に頼もしい限りだ。

続けて昼の部の感想も書いていきたい。
9/17秀山祭夜の部①「車引」の感想
9/17秀山祭夜の部②「沓手鳥孤城落月」、「石川五右衛門」の感想


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