ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

05/05/06 宝塚月組『エリザベート』観劇、宝塚版もロマンチックでいい!

2005-05-12 00:48:10 | 観劇
宝塚友の会に入っていた友人とご一緒させていただき、B席最前列のセンターで観た。本当にいい席だ。友人に感謝m(_ _)m
『エリザベート』はオーストリアで生まれたミュージカル。ブロードウェイやロンドンのミュージカルともまた違った雰囲気に満ちている。1992年初演、ミュージカルが受けないお国柄にもかかわらず98年までロングラン上演され、他のヨーロッパ諸国でも上演され、現在ウィーンで再々演中の人気ミュージカル。日本では世界各国に先駆けて宝塚歌劇団で1996年に初演。ミヒャエル・クンツェのオリジナル脚本を小池修一郎が男役トップが主役になるという宝塚歌劇に合わせてトート役を主役に置き換えて潤色・演出し宝塚版として上演されて大ヒット。『ベルサイユのばら』『風と共に去りぬ』に続いて全組で上演する代表作にまでになっている。
初演時に雪組トップだった一路真輝がトート役をつとめたが、退団後、東宝での『エリザベート』初演でタイトルロールをつとめて、現在まで再演を重ねている。今年も帝劇で9月に上演され、私も観る予定。この作品はクンツェの脚本が魅力的なことととシルヴェスター・リーヴァイの音楽がよくて何回も観たくなるのだ。
内容は宝塚のHPより概略を転載しておく。
「類稀な美貌の持ち主であると同時に、自由奔放な生き方を求めた少女エリザベートが、オーストリア皇后となったことから辿ることになる数奇な運命。そこに彼女を愛する黄泉の帝王トート(死)という抽象的な役を配した独創的なストーリー」

さて、今回は5組目の月組による『エリザベート』。主演のトップ彩輝直はこれがサヨナラ公演となる。エリザベートには次期トップとなる瀬奈じゅん。男役がエリザベートを演じるのは今回が初めて。ポスターを見た時から従来の宝塚の『エリザベート』のイメージとは違った雰囲気が漂っていた。
観劇してみて...、やはり大きく違っていた。男役に比べて小さく華奢な娘役が演じるエリザベートとは比べ物にならないくらい大きく線が太い。大劇場公演の舞台写真集を先に見た感じでは彩輝直もビジュアル的にはかなり格好のいいトートで期待が膨らんでいたのだが、実際に並ぶと迫力が同等のコンビになっていて、やはり従来の二人のバランスと明らかに違う。2幕冒頭の「私が踊る時」のデュエットの対等感はそれはそれで圧巻だったが。
エリザベートの夫である皇帝フランツ・ヨーゼフ役には専科の初風緑が演じていたが、初風が男役の中ではかなり線が細いタイプなので、瀬奈と並ぶとバランスはあまりよくなかった。
ミュージカル肝心の歌唱力は...初風緑のひとり勝ちだった。それと安心して聞くことができたのは、エリザベート暗殺者で狂言回しのルキーニを演じる霧矢大夢と皇太子ルドルフの大空祐飛だった。霧矢のルキーニはアナーキストというよりも不良のにいちゃん風だったのがちょっと物足りなかったが歌は上手い。
彩輝は前のトップの紫吹淳の退団公演の時に観ているが歌は下手だった。今回のトートはかなり聞かせてくれるようになってはいたが、低音部分があまりにもダミ声になってしまう難があり、今回退団で正解。エリザベートの瀬奈は頑張っているが、やはり高音部がきれいに出ない。一路真輝が東宝でエリザベートとして揺るぎのない地位を築いている偉大さがあらためてよくわかる。今、一路の他に誰が帝劇でエリザベートを演じられるだろうか?トートがダブルキャストになっているだけに、早く一路の負担を減らして長く続けてもらいたいのにと常々思っている。
宝塚版では、ルキーニ中心の場面はなくしたり(ルドルフが危機感を抱くナチスドイツの台頭を表す場面など)、トートとふたりでコーラスを主導したりするような変更もあるが、トートダンサーズも宝塚らしく美しいし、最後はエリザベートとトートが白い衣裳で黄泉の国に旅立つなど、ロマンチックにまとめられているのがよいと思う。

帰宅後、やはり友人に借りた1998年の宙組盤のCDを聞く(その友人にも感謝m(_ _)m)。トートの姿月あさともまあまあ聞かせてくれる。エリザベートの花總まりは声量が足りずに物足りない。フランツの和央ようかはこの頃はまだ今いちだったのねと思った(『ファントム』はさすがだった)。ルキーニの湖月わたるは「もう下手~」と娘もききながらぽつりと言う。トートで聞いたことがないのは麻路さきだけになった。私が上手いと思ったのは春野寿美礼が一番、次が一路真輝だ。
東宝版のトートの歌は山口祐一郎が一番だが、内野聖陽もどんどん上手くなって聞かせてくれるようになった。9月が早や楽しみな私である。
写真は、宝塚歌劇団のHPからのポスター画像。