しずくな日記

書きたいなあと思ったときにぽつぽつと、しずくのように書いてます。

研究発表の副産物

2013-07-26 22:04:00 | 日記
やっと週末。
学校は夏休みに入ったとはいえ、学習会があったり、美術の補習をやったり、
出張がかなりの頻度で入ってきたりなど、ばたばたしていた。


研究発表の原稿の方はもう大詰めで、日曜には完成版ができている予定。
昨日今日の出張で、もう何度目かもわからないほど赤を入れていただき、
今、修正を終えた。これでたぶんもういいと思う。

赤を入れてくださっている先生は、熱中症で今日37.5の熱があった。
それでも私たちのために来てくれたので、「大変!」とか、不満なんかとても言えない。



次は当日の発表スライドの制作が待っている。
2割ほど手をつけたけど、早めに始めて、早く終わらせたい。
嫌だなーと思っていても、
とりあえず手をつけちゃうのが仕事を終わらせるコツだと思った。
やり始めると意外にできちゃうものだ。



今回、研究に初めて携わって、
授業の進め方や評価の仕方、生徒の良いところの見取り方について学ぶことが多かった。



6人の発表者のうち、私ともう一人を除いて4人は研究の「常連さん」で、
とにかくやることが全て的確でムダがない。
仕事ができる人って、こういう人なんだなーといういい見本だ。
また、優れた教師の見本でもあると思った。
私たちの原稿をチェックしてくださっている20年選手以上のベテランの先生方や指導主事は、
人としてもおおらかで温かい。
美術科の先生にはたくさん会ってきたけど、なぜだか嫌な人はあまりいない。

美術の楽しさ、面白さに気付かせたい、
生徒に豊かな人生を送ってほしい、という切実な願いが、
美術科教員にはあるように思う。



特に、昨日今日と勤務校を会場として貸してくださった先生のところは、
最寄り駅を降りると、あまり所得の高くない集合住宅群がひしめいており、
学校の近くには高圧電線が走っている。
生徒も相当荒れ気味ヤンキーの巣窟らしいのだけど、そんな環境下ですてきな鑑賞の授業をされる。
他の授業はドロップアウトするヤンキーたちも、美術の授業は楽しみにしているらしい。
正直、私はこの学校で、授業をやれる自信はない・・と思ってしまった。
それなのに。


モネの絵の鑑賞だけど、本物の美術館のように環境を整え、
美しい額縁を借りてきて、本物と同じサイズの複製画を作って静かな音楽を流し、
おまけに「森林の香り」を空気清浄機で発生させて、
嗅覚まで総動員しての鑑賞授業。
生徒の書いた振り返りシートの質もとても高かった。

「俺は美術とは縁がない!と思っている奴に、美術の面白さや奥深さを知ってほしいんだよ。」
と、ベテラン先生は言っている。お坊さんのような先生である(外見も)。

すごい先生は、たくさんいる。




自分の頭の悪さ、というか論理的に書くことの難しさを嫌というほど知った。
わりと感情に任せて文章を書く方なので、
しかも文章を書くのは好きなのだけど、
「気持ちや思いはすごく伝わってくるけど、ここは分析的に書いた方がいいよ。」
と指摘された部分は多々あった。
ただ、「教師としての思いが伝わってくるのはとてもいいよね。」と褒められもした。


本当に本当に大変だし、難聴で療休をとらざるを得なくなったのも、
多分、このプレッシャーに寄るところが大きいのだけど、
それでもやって良かったと思っている。
こんなにすごい人たちと、意見の交換をしたり、自分の書いたものに対してコメントをもらえたりした。
考えを語ってもらったりもした。

教えることは今年で8年目だけど、何年やっても「これでいい!」という風にはならない。
いつもいつも、新しい課題が何かどこからか必ずやってくる。


原稿を見てもらって、健康診断も終わってほっとして、
近くのコーヒーショップで1時間ほどのんびりした。
こういう時間のために、旅行雑誌はかならず1冊は持ち歩いている。
今日は、もうすぐ行く「出雲・松江」のことりっぷ持参で。

向こうに着いたら、このチケット買っとこうかなとか、お昼はここかなとか、
脳内旅行に出かけて楽しんでいた。
この時間がとても幸せ。もしかしたら実際に行ったときよりも楽しいのではないか。

そういえば研究に携わっていいことが他にもあった、と思い至った。
それは、意識的に楽しくしよう、という意志が生まれたことだ。




夏の暑い昼間、
クーラーをかけて、妹とふたりでタオルケットにくるまりながら、
怖い番組を見てたとき。
その横で、竹素材の枕で、祖父がうたた寝をしていたとき。
そのまた横の台所で、祖母がスイカを切ってくれていたとき。

幸せって思う時間をイメージしたら、いつもこの映像が出てくる。
けど幼い時間も、祖父母も、もう全て失ってしまった。




幸せと思える時間は、意識的に作らなきゃなあ、と最近思う。
情緒にまかせておくと、後ろばかり振り返るから。






















ワクワク夏休み

2013-07-20 20:50:40 | 日記

ついに学校が夏休みに突入!
子どもみたいに38日間の細かい計画表まで立てて。。。
今年ほど夏休みが待ち遠しいことはなかったな。


一日目の今日は、いつもなら5時半起きのところを8時前までゴロゴロ。
もうこれだけで幸せだ!



昨年もやった横浜美術館子どもフェスタの鑑賞サポートボランティア、
今年も3日間だけだけど申し込んだので、研修会の一日目に参加してきた。
プーシキン展は、受付で軽い行列が。
夏休みの宿題っぽい鑑賞レポート用紙を手にした学生もちらほら。
そしてデートっぽい感じの若者カップル多し。なかなかの盛況ぶり。


昨年度はボランティア参加者が少なかったのだけど、今年は多くてびっくりした。
今日は子どもに接するときの心得や作品で使われている画材や技法の基礎知識を学んで、
作品についてまずは知る、という日。次回はもっと詳しく学ぶそう。

若い人から年配の方まで、様々な年齢層が集まってて、
昨年の美術教員だらけの感じとはまた全然異なる雰囲気だった。かえって新鮮かも。




夏休みは大手をふって定時で帰れるのだから、美術館にはたくさん行こう!と計画中。

先日、美術部の生徒に、
東京や神奈川の美術展の中で夏に行きたいところのアンケートを、幾つかの美術展を挙げてとってみたところ、
損保ジャパン東郷青児美術館の「〈遊ぶ〉シュルレアリズム展」が一番人気だったので、
8月末に部活で行くことに。意外に渋いチョイスだった・・・・。

私個人では、レオ・レオニ展は絶対に行きたいし、浮世絵のも行きたいし・・・。
東京に出るなら、ついでに会員になってるところのオープンクラスに行って、
レッスンに参加してから帰ってくることもできるし・・・わお、なんか贅沢。

それにしても遊びのことになると、ものすごくパワフルになる。
ゲンキンなものだ。


今日の研修で、学芸員の方がこんなことをおっしゃっていた。
「子どもって、美術館に来ると走ったりピョンピョン跳ね回ったりするんです。
幼い子どもは心と身体がつながっているから、ワクワクするととにかく動き回るんですよ。」

そこから、子どもの発達年齢における鑑賞の目標についての話になっていったのだけど、
私は、ワクワク=身体を動かしたい!というのに妙に納得。
まあ、私は大人だけど、、、
でも夏になると身体を動かしたくなるのはそれでかー、と腑に落ちたのだった。



生徒の補習もやるし、評価や所見などの仕事、研究発表の準備など、
やることもたくさんあるので、楽しいことばかりしていられないけど、
楽しいこともたくさん加えつつ、ワクワク充実の夏にしたいな。
























会えないお客さん

2013-07-17 00:05:53 | 日記
美術室にてうちのクラス、夏休み前最後の授業だった。
今日は涼しくて、夏場はいつもむんと暑い美術室も過ごしやすかった。


色塗りをしながらも、ある少年が何となく落ち着かない。
「どうしたの?」と聞くと・・・。

ああ、今年もいたか。
夏の風物詩。




 生徒「ドアの向こう側にいるやつが、色塗っているときに目の端に見えるんです。
    そっちを向くと見えなくなるんだけど、目をそらすと目の端に見える・・・。」

と青い顔をしている。

ああ、今年もやってきたのね、「会えないお客さん」。


夏になると、必ず現れる。
これこそが「学校の七不思議」の一つだと思う。
大人には見えないのだ。年によって、姿形は様々異なる。



腹をくくって、とりあえず聞いてみる。


 私「どんな格好のがいるの?」

 生徒「首のないかかし。」

 私「・・・・え?」

 生徒「かかし。」

・・・・それって・・・・・『ハウルの動く城』に出てくるやつみたいな??


 私「絵に描いて。」

 生徒「うん。次の休み時間に描いとく。」


絵に描いてくれたそれは、ほんとにかかしだった。
ただし首がないから表情はわからない。


 私「こいつ、なんでここにいるの?」

 生徒「こいつ、廊下のもっと向こうにいたんだけど、だんだん近づいてきてるんだよ。
    先生、見たことないの?」



・・・・ない。23時くらいまで一人でいたことなんてザラだけど、ない。



 生徒「こいつ、怖いよ。」



かかし、ということは、今年は幽霊ではなくて妖怪系のやつだろう。
しかしなぜ、夏にしか出てこないのだろう、1年中いても良さそうなものなのに。


数年前、前任校の美術部の部長が美術準備室にいる!と騒いで、
夜眠れなくなってノイローゼのようになっていた時期があった。
あれはちょっとウソじゃない気がした。
深いクマまでできて、あまりにその子の状態が変だったので、保護者の方を呼んで面談もした。
自分の部屋に盛り塩もしたという。
感じやすい思春期の幻覚だったのだろうか、それとも・・。
あれは未だにわからない事件だ。



信じていないわけではないけど、おそらく9割はウソだろう。
みんなの注目を浴びたい、驚かせたいなど、動機はそんなところだろうけど。

今日の彼は、どうなんだろう。本当に、夏のお客さんを見たのか。




あれからちょっとドアのあたりが気になっている。

生徒が帰ったあと、涼しい風に吹かれて黄昏時、
じっと目をこらしても、私には何にも見えない。
思春期のときだけにしか見えないやつなのかもしれない。

そう思うとちょっとだけさびしい、というか、
つまんないね。
















ちょっとだけワガママに

2013-07-15 22:59:03 | 日記
今回の連休はとても良いお休みになった。

忙しさもあって、しばらく休止状態だった習い事も今日から復活。
前に行ってたところは渋谷で遠かったし、内容がハードだったので、
家の近所で通うことにした。
自転車で走ること8分ほどの場所だから、とても気軽だ。

毎週月曜日、行けるかどうかはわからない。
部活が終わって20分後くらいに学校を出れば間に合うけど、
生徒指導なんかで何かあったら行けなくなってしまうだろうな。

月曜から職場に長いこといるのは、精神的に不健康だ(私の場合)。
月・水曜日あたりは早めに帰って、火・木・金曜日あたりは残業で頑張る。
そんな風にメリハリをつけて、楽しいことも考える。
しばらくそんなことも忘れてしまうほど忙しかった。
学校で残業して、帰宅しても寝るまで仕事しての毎日だった。




初めての場所だけど、やっていることはどこもだいたい同じなので、
ポジションの確認、バーレッスン、センターレッスンなど普通にできた。
同じ時間帯に来ていた6名の方は、とても優しい方だったし、
何より先生が明るくて、とても説明がわかりやすかった。

私は大人になってからクラシックバレエを始めたし、仕事の関係もあってコンスタントには通えていない。
以前行っていた渋谷のところのは、基礎クラスでさえものすごくレッスン内容が高度で、
周囲もうまい人が多くて、大人数で一気にレッスンだからできないと恥ずかしいし、
先生方も現役の方がほとんどで、ピンと張ったような感じの人が多くて、
なんとなくおどおどしてしまっていた。
でも、今回のここは少人数でのんびりとしている。

心底のんびり屋の私には合っていて安心した。
趣味の域を出ないものだから、のんびり楽しく踊っていたい。

しばらくやっていなかったけど、動きはじめるといろいろ身体が覚えていることがわかる。
動けば動くほど思い出して心地よかった。
バレエは外向きの芸術と言われるだけあって、
閉じこもっていた感覚が外側に広がって行く感じがした。

クラシックバレエで最もいいなと思うのは、美しい音楽に共鳴するように踊るのが大切というところ。
自分の容姿が美しくなくても、美しいものと共鳴すると、
心の形を正す感じもして、とてもいい。

身体が少しかたくなってしまっているのは、今からまたやり直せばいい。
少しずつ上達する楽しみもできる。
目指すは、踊れるおばあちゃんだ。


小さい頃から、ずっと綺麗なクラシックバレエに憧れがあった。
「SWAN」とか「牧神の午後」などなど、バレエのマンガも大好きだった。
美しいけど、その裏では血のにじむような努力をしている、
そのストイックさが何より好きだった。


自分にはとてもマネはできないけど、
バレエという芸術の素晴らしさを少しでも体感できるのは嬉しい。
美術部には、毎年、バレエをやっている子が必ず数名入部してくる。
今年は、クラスにも5名いる。人気の習い事なのだろう。
その子たちに話を聴くのも楽しみの一つだし、
誘われれば、花束を持って発表会も観に行っている。


夜風に当たって帰ってきて、アイスコーヒーを飲んだ。
しぼんだように灰色のつまんなかった日々が続いていたけど、
ちょっとワガママして好きなことをやると、とたんに生活が色を持つ。

昼間、街に出たとき、普段はサラリーマンしてるだろう人が、
サークルなんだろう、集まってリーゼントみたいな髪型にして踊っていて、
すごく楽しそうだった。しばらく見てしまった。

楽しく過ごしている人を見ると、こちらも元気になる。
人を元気にできる人でありたいから、私も楽しく過ごしたい。




















出雲、2バージョンの旅

2013-07-15 00:07:04 | 日記
連休なので、仕事があってものんびりできる。

出雲のガイドブックを数冊買って、コーヒーショップで読む。
こういう時の集中力ってすごい。
あまりに集中しすぎて、生徒がいたのに気がつかなかった・・・。

「せんせーい!」と真正面から声をかけられてふと我に返る。
3年の美術部員、塾帰りみたいだった。
地元駅じゃないのに、遠くまで行ってるんだな。


出雲への旅は先日、市の美術研究会があった日に、
友達と横浜美術館の真ん前にできたショッピングモールに入って、
お茶を飲みつつ会議(?)。
こういう会議は何時間やっても楽しいな。

本当は玉造温泉郷に宿泊!がよかったけど、ここは来月からお給料の下がる私たち、
安くて交通の便がいいところにしよう!
と、駅近くのビジネスホテル的なところに決定。
交通手段は飛行機が取れなくて、
「スサノオ」という夜行バスで一路、出雲市駅へ行くことに。帰りは電車。

今日、ガイドブックを詳細に読んでいると、
「サンライズ出雲」という寝台特急が東京から出ていることを知る。
寝台特急・・・乗ってみたかったな。たとえ寝ちゃうにしても!!


出雲大社は絶対として、
あとはどこに行くのかをそれぞれが考えて、また会議をする。


どこもとても魅力的だけど、
私は日御碕に行きたい。
日本海を目の前に白亜の「出雲日御碕灯台」が立っている。
心洗われる風景だな、と写真を見て思う。

日本神話の舞台でもある稲佐の浜にも行きたい。夕日が綺麗なんだって。
宍道湖にも行きたい。

と考えていくと、自分の行きたい場所が水辺ばっかりなことに気づく。
水の音って、人の心を落ち着かせるという。
無意識のうちに求めているのかもしれない。


母がよく電話してくる。
友達と旅行に行くことを告げると、
非常勤講師で夏は収入がないから、あんまり旅行には行けないからいいわねー、
みたいなことをいうので、気の毒になった。

母が行きたいのは北海道だというのは知っているけど、
今年の夏はとにかく忙しい。
北海道なら3泊はしたいけど、下調べの時間も取れない。
なので、
「出雲周辺だったら今、研究中(?)だから、いろいろ案内できるかも。別に一緒に行く?」
というと、母が大喜びだった。
実家からだと、交通費もそんなにかからない。
ちょっといいところに泊まってもいいかも。
(とはいえ、めぼしいところはどこもお盆は予約が既にいっぱい・・・)


というわけで、友達と行くバージョンとは別に、母と行くバージョンも作ることになった。
8月に2回も出雲に行くだなんてーーー!!
楽しみが2倍になった。



友達は、ショッピングの時間も欲しいみたいだ。
でも私は、寺社仏閣とか温泉とか森とか海とかで、ただただじーっとしていたい。
それが自分の一番望んでいる旅のスタイルで、
友達と行くときはどうしてもアクティブなスケジュールになるから、楽しい反面、ちょっと疲れてしまう。

母と行くときのは、のんびりとできるプランを立てようと思う。



そんなわけで、旅行プランに頭を悩ませる贅沢な連休中日。
こんな日が続けばいいけれど、現実は厳しい。
教育課程の原稿締め切りまであと・・・・・17日。
逃げるな、わたし。。。


















幼い日の呼吸は

2013-07-13 21:30:38 | 日記
一ヶ月以上放置されていたブログ。ごめんよブログ。

時間がなかったのと、精神的に余裕がなかったのと、
自分自身のことに思い悩む時期も長く・・・。

6月中旬に突発性難聴の一種で低音障害性感音難聴という、
なんだか念仏みたいな名前の病気で右耳がおかしくなって期せずして帰省、そして療休。
思いもよらぬ事態に、気持ちも何もついて行けず。
ストレスによる病気・・・といっても、内臓が悪いわけでもなく、
どちらかというと神経性のもので、
こんなので休んでいいのかほんとに・・・と自分の中で深く悩みながらのお休みでした。


普段活動している時間帯にずっと眠ったり起きたりしていて、
身体を動かすことが少なかったので、いらないことまでいっぱい悩んで、
変な幻覚みたいのまで見えて、もうダメかも・・・、
って思ったけれど、休む期限は決まっているので、えいや!っと復活。

復活してみれば、これまた極端、忙しい日々が始まったけど、
それはそれでなんとかついていけてる。
三者面談も半分終わり、夏休みまで勤務日あと4日。
そして3連休初日、やっと書く気になれました。

ああ、いつ死ぬかわからないな、いつ身体が動かなくなるかわからないな、
と、ひしひし感じて、
もうちょっとやってみたいことをしっかりやる人生にしようと反省?したのでした。



今日は午前中からステンド制作に勤しんだ後、
WSでお世話になっているアーティスト橋本典久さんの作品展を見に、京橋までいきました。
言葉で説明するのが難しいので、ご本人の解説の言葉をお借りすると・・。




映画は毎秒24フレームで、例えば2時間の映画だと、
24×60×120=172800枚の写真の集合体といえる。
これらの写真をそれぞれ切り分けて、
さらに重ねて画面中央で左右に切り分けると、地層のように見えるものがある。
それがただの縞模様ではなくて、所々に風景や人の姿などが見える像として現れ、
全体を通して見ると、監督が映画に込めた編集のリズムが浮かび上がってくる。

というもの。監督の呼吸のリズムが感じられるものということで、
題名は「Breath」。




映像になっているものと、蛇腹製本されたバージョンがありました。
私としては、蛇腹製本されているものの、絵柄としての面白さにとても惹かれました。
まるで、ダリの絵画のようなものもあったり。
具体のような抽象のような、とても不思議な、そして美しい世界が広がっていました。
この蛇腹製本、1本の映画で7センチくらいの厚みはあった気が・・・もっとあったかな。
ほとんどがご自身の手作業で作られたということで、圧倒的な制作量にも驚き。
となりのトトロの「Breath」をみせていただきましたが、最後、
メイちゃんがトウモロコシを持って満面の笑みでネコバスに乗っているシーン、
メイちゃんの笑顔はしっかりと見えました。
あの幸せいっぱいのシーンは長く長く表現したかったのだなあ。。。と感慨深く。

羊たちの沈黙の「Breath」も見たのですが、
不安そうな人の顔のアップやグロテスクなシーンがなんとなーく見えたり・・・。
見せたいのそこなのねー・・・とか思ったりして(笑)。


こんな風に「映画を見る」っていうのはものすごく新鮮で、
確かに監督の「呼吸」=表現したかったことや感覚的なものが感じられるように思えました。
これはすごい・・・・。
新しいものの見方を提供するのがアートなんだなあとつくづく思いました。
この他にも「Voice」シリーズという小説のリズムを可視化する試みの作品もあり、
宮澤賢治の銀河鉄道の夜が素材になった「Voice」がありました。

心の中に熱いものがあっても、
常に押さえ気味で淡々と文章を綴っているような印象が宮澤賢治にはあったのですが、
橋本さんによって独特の配置に処理された文章のラストの部分、
文章の長さの振幅が大きく変動する様子からは普通に読んだときには見えなかったものが見えていて、
私も含めて宮澤賢治が好きな人にとっても、
彼の感情の動きすら見えるような、興味深い作品だと思いました。





で、その余韻の中、
帰りながら電車の中でふと思い出したことがありました。
関係あるかないか、よくわかりませんが・・・。
自分的にはちょっと関係ある気がしたのです。

小学生の頃というのは、遊ぶ時間も長く、
みんな心の中に現実とかけ離れた不思議な世界を持ってたように思います。
塾も行っていなかった私は、人一倍ぼんやりとしていたのですが、
ある時期、当時、はまっていた星新一のショートショートの影響からか、
「昨日の私と今日の私っておんなじなんだろうか?」と不思議に思っていました。
昨日の私、今日の私、明日の私、明後日の私・・・・。
延々と私が何人も続いていって、
死ぬまで何人もの「私」が毎日毎日重なっていくのだろうか、と不思議で仕方ありませんでした。
私の一生とは、そういう日々の異なる「私」が積もったものなんだ・・・。



今日、「Breath」をみて、その幼いときの忘れていた感覚を引っ張りだされました。
まさか、そういう感覚を呼び起こすとは・・・。

期せずして、自分の人生の呼吸を思い出したのでした。
美術恐るべし!!!



橋本典久さんの作品展「 NOTATION:起譜法」
11:30~19:00 18日(木)まで
Art space kimuraASK?(日曜・祝日はお休み) 
おすすめです!!!