今回ヴィーのことでグーちゃんの賢さはパッパと乳母やにとっては非常に驚きであった。
グーちゃんがヴィーを看護していたことは以前にも触れた通りである。ヴィーは最期まで自分で餌を食べようとしていたが、ややもすると食べている時にもふっと目を閉じて食べるのをやめてしまうことがあった。そんな時はグーちゃんがヴィーの頭をツイツイと優しくつついて、「ほらほら、ヴィー、食べるんだよ」と促していた。ヴィーが食べ終わると、「さぁ、つぼ巣へ行って休んでおいで」とつぼ巣へいざなった。
夜はグーちゃんは自分のかごへ戻った。それは元気な時からのふたりの習慣なのだけれど、つぼ巣を入れた時にふたりは相談をしていて、夜は別々に休むことになった。それでも朝、目が覚めるや否やグーちゃんはすぐさまヴィーのかごへ行き、ヴィーの面倒を見ていた。かごの戸はそのためにずっと開けたままにしていた。夜の別居は、ヴィーがゆっくりつぼ巣で眠れるようにという配慮と同時に、看護で共倒れにならないようにグーちゃん自身もゆっくり休む必要があったからだったのではないか、と今になって思う。
グーちゃんの看護は本当に見ていて感動的なものであった。トリアタマと呼ばれる鳥がこんなにも愛情を込めて病気のパートナーを看護する様を、コンラート・ローレンツが見たらどう思っただろうか。
最期の日、ヴィーを半日入院させた。どのようなタイミングでヴィーを連れて帰るかは最後の最後まで判断に迷った。インキュベータに入ったヴィーはその後も呼吸困難な状態から回復せず、夕方に見舞いに行った時には、ヴィーは口をパクパクさせ全身で呼吸していた。必死に喘いでいた。
回復の見込みは難しく、いつ死んでもおかしくはないと聞き、生きている間にヴィーとグーをもう一度あわせてやろうと決心した。夜、ヴィーを連れて帰るために病院へ行く前に、グーちゃんに確認を取った。
「グーちゃん、ヴィーのことは後はパッパと乳母やの判断に任せてくれる?」
グーちゃんは「ぎょん…」と返事をした。
酸素化した状態で、つまりケースごと酸素の入ったビニール袋に入れて車で帰った。インキュベーターから出した時に死んでもおかしくはなかった。それが家にたどりつくまでヴィーは頑張った。もう気力のみだったろう。家に帰りたい、グーちゃんに会いたいという意志があったかどうかはわからない。でも、ともかくもふたりは最後の再会をした。
動かなくなったヴィーをグーちゃんはそっと頭を突付いたり、脚の指を噛んだりしてなんとかヴィーを起こそうとしていた。そうしてヴィーが目を覚まさないことを悟ったグーちゃんがどうしたか、もう覚えてはいない。
次の朝もグーちゃんは一番にヴィーのいたかごに行き、しばらくヴィーのつぼ巣で眠っていた。あたかもヴィーの残り香をいとおしむように。そしてそれきり、グーちゃんはヴィーのかごには入らなくなった。
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