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芥川賞作家・柳美里(ゆう・みり)の『自殺』という本は、
すべてにうなずくことは出来ませんが、
するどい言葉が何箇所も出てきて驚かせれました。
前回に続いて、少しずつ紹介していきたいと思います。
ひとが生殖と切り離されて性の快楽に狂奔しなければ、
エイズはこれほどまでには蔓延しなかったでしょうね。
(中略)
性行為によるエイズ感染は、単に快楽には死がつきものだ
という事実を確認させたに過ぎないような気がします。
生と死はぴったりと寄り添った友人同士だということを
改めて知らしめたと思うんですね。
快楽はやばいんだってこと。
死を隠蔽(いんぺい)しようとする時代感情をエイズが
逆撫で(さかなで)したことだけは確かでしょう。
p123
「快楽には死がつきもの」
と表現されていますね。
普通、『快楽』とは“生の高揚”であり、『死』と真逆なイメージを持たれる
のではないでしょうか?
しかし、欲望は加速度をまし、墓場までつっこむ弾丸列車のようでもあり
ます。
「快楽はやばい」
これは、いい、という意味の、やばい、ではないですね。
“危険”ということでしょう。
『快楽至上主義』で隠蔽しようとしていた『死の現実』が、
エイズという病によって、露出されたのです。
「生と死はぴったりと寄り添った友人同士」
仏教には、【生死一如(しょうじいちにょ)】という言葉があります。
生と死は、コインの表と裏のようなもの。
また、台所と便所のような関係。
便所をきらい、便所を排除した、台所、レストランでは、明るい食事は
出来ません。
同じように、死の準備を全くせずして、真に人生を明るくさせることは
不可能なのです。
この文章を読んで、この仏の教えを思い起こしました。