夢の間に製造した爆弾（夏目漱石）

みなさん、こんにちは☆

今日は日本全国ほとんどの地域が寒気の影響を受けているよう

ですね。富山では昨日、結構雪が降りました。


さて、今日は『無常観』について話をしましょう。

私の父は子供の頃、日曜学校で蓮如上人の「白骨の章」を学び、

以来、この名文のとりこになり、何とも口であらわせぬ無常観に

深い感銘を受けたそうです。

　※関連記事　白骨の章（浄土真宗親鸞会公式ＨＰ）

私自身も浄土真宗親鸞会で白骨の章のお話を聞かせて頂き、

夢幻の如くなる一期なりの一節が胸に響きました。

「人生、夢のごとし」

いろんな人が言葉を変えて、表現しています。

例えば、

　・足利尊氏「この世は夢のごとくに候」 （楠木正成を倒し、京を奪還した後の言葉）
　・足利義政　何事も夢幻と思い知る　身にも憂いも喜びもなし
　・織田信長　人生五十年　下天のうちをくらぶれば、夢幻の如くなり（敦盛）
　・明智光秀　五十五年の夢　覚め来りて一元に帰す
　・豊臣秀吉　おごらざる者もまた久しからず
　　　　　　　露と落ち露と消えにし我が身かな　難波のことも夢の又夢　
　
　「夢の世に　夢見て暮らす夢人が　夢物語するも夢かな」で、

このように「人生は夢」との言葉は枚挙にいとまがありません。
　　
では、夢のような一生で私たちは、なにをやっているのでしょう？


夏目漱石は、次のように言っています。

　　「所詮、我々は自分で夢の間に

　　製造した爆弾を思い思いに抱きながら、

　　一人残らず、死という遠いところへ、

　　談笑しつつ歩いて行くのではなかろうか」　　

　　　　　　　　　　　　　　
　漱石は大変なことを、この短い文章にぶち込んでいると思います。


　「夢の間に製造した爆弾を思い思いに抱きながら」

　ここでいう爆弾とは、罪悪のことでしょう。
　生きるためには仕方がないといいながら、殺生の限りを尽くし、
　また心の中では恐ろしいことを考えています。
　その罪悪は、やがて懐で爆発してしまうものなのかも知れません。

　そして。「一人残らず、死という遠いところへ、
　　　　　談笑しつつ歩いて行くのではなかろうか」
　どんな人も例外なく、最後死んでいかねばなりません。
　死刑囚だけが死んでいくのでもなければ、癌で苦しんでいる人だけが
　死ぬのでもありません。
　１００％確実に死なねばなりません。
　そのことを知りながら

　「談笑しつつ歩いて行くのではなかろうか」
　実はこのことが最も恐ろしいことなのかも知れません。
　一大事を一大事と知ればまだよいのですが、
　一大事を一大事とも知らず、まったく無防備で死の谷底に向かって
　大行進している。これこそ一大事ではないでしょうか。

　そんな大変なことを漱石はこの一文にしたためているのかもしれません。

　　「所詮、我々は自分で夢の間に
　　製造した爆弾を思い思いに抱きながら、
　　一人残らず、死という遠いところへ、
　　談笑しつつ歩いて行くのではなかろうか」　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　夏目漱石

　　　　　　　　　　　　　とてもとても深い言葉だと思います。