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同性愛に関するパッカー長老の説教、論争を引き起こす

2011-03-19 21:58:28 | モルモン教関連
 昨年10月の総大会でボイド・K・パッカー長老(十二使徒)が同性愛について語ったことが全米で論争を引き起こした。その後改訂された本文が発表されることになり、また暫くして大管長会のウークトドルフ第二副管長がパッカー長老のトーンを和らげると見られる説教を行っている。

 先ず、パッカー長老が10月3日語った内容はこうである。一部の人々はそのような傾向(同性愛)は人に生まれながらに組み込まれたもので克服することはできない、と考えている。同性に惹かれるこの傾向は不純で自然に反するものである。・・人がそのように組み込まれて生まれてくることはあり得ない。天父がそのような人を造られることはない、という伝統的な立場からの話であった。そのような傾向は変えられないものではないから、悔い改めて元に戻るべきである、というものである。

 パッカー長老の説教はアメリカで若いゲイの間に一連の自殺が相次いでいた時期のただ中に行われたので、同性愛に理解を示す人たちは「もうこれ以上子供たちが死んでいくのを見るに忍びない」とデモを組織して反対運動を起こした。自殺者の中には7月に命を絶ったユタ州の28歳のランサムや11月に亡くなったソルトレークのハンセン(28歳)がいた。二人は他のゲイのモルモンで自殺した38人と共にオンラインの記念名簿に記されている。

 マーガレット・タルボットはニューヨーカー誌に、あの説教は同性婚反対者にきつい言葉を使って攻めてもよいというお墨付きを与えるようなもので、ゲイの若者たちに対するいじめを増長させると懸念を社説に書いた。「不純」とか「自然に反する」という表現は同性愛者たちに憎しみを持っても構わないという方向に誘導すると見る。


「ldsが憎しみを促すのを止めさせよう」

 10月7日抗議する人たちがテンプルスクエアを囲んでデモを行った。主催者発表4,500人(KSL600人、デゼレトニューズ2~3千人)が集まり、前後してオグデン、セント・ジョージでもデモが行われた。また全米人権擁護組織(Human Rights Campaign)は15万人の署名を得て800頁の発言撤回を求める請願書を教会のスポークスマンに手渡した。

 これを受けて教会は改訂されたパッカー長老の説教本文をネットに掲載した。改訂部分はパッカー長老が否定する「不純で不自然に向かう天性の傾向」の部分を「に向かう生まれながらに曝される誘惑」としたもので、生まれながら同性愛になる可能性を若干広げたものと解される。「天父がそのような人を造られることはない」の部分は削除された。

 10月24日、ウークトドルフ第二副管長がある地域大会でパッカー長老の説教を和らげるものと思われる話をした。「同性間で惹かれあう問題など多くの問題は、まだ答えがなく場合によっては来世まで待たないと得られない。その時まで神は真実全ての子らを愛しておられるのである。」この話をBYUの名誉教授ウイリアム・ブラッドショーは歓迎して言った。「究極的に判明することが確実な説明となるのであり、ゲイの兄弟姉妹を他の人々と同様に遇する義務を変えることはない。」ブラッドショーは微生物学者として同性愛の存在を生物学的に説明する立場に立っている。

[付記]
1 同志社大学の小原(こはら)教授「「新約聖書の性倫理――テストケースとしての同性愛」も大変参考になる。近日要約記事をここに掲載する予定。
2 末日聖徒の中に上記ブラッドショー以外にも同性愛に理解を示す会員がいる。例、ハンツマン駐中米大使。

参考資料
サンストーン誌 2010年12月号 “President Packer’s speech prompts national controversy, revisions” pp. 68-70
Bradshawについて、当ブログ 2010/06/09 元BYU教授、「生物進化論 - - 科学と信仰間の調和 - -」について語る: http://blog.goo.ne.jp/numano_2004/e/ff87506f4994d3059cc4ec630ffa762f


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7 コメント

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改訂以外の教団の姿勢 (元モルモン)
2011-03-22 00:50:16
自殺にまで追い詰められた人々と遺族や関係者に教団や幹部が謝罪するのが宗教者としてのあるべき姿勢ではないでしょうか?宗教者以前の問題だと思います。

菊池氏の拙速伝道や拙速伝道を奨励した地方幹部や指導者も、トラブル解決に奔走し疲れ切ってしまった人々や、強引な伝道で有無を言わさずバプテスマを施され、半強制的に教団活動に参加させられた人々にも全く謝罪してません。

在籍中の私自身も宗教や救済(救霊)等を考えてもない友人を勧誘し、友人の義理でバプテスマに至り、その後暫くして様々な戒めや活動や儀式に参加し与ることで救済されるが、それらに反すれば祝福を逃し不運に見舞われると教えられ、友情に亀裂が出来て泪の訴えを直接聴くまで謝罪しませんでした。唯一真の教会であるモルモンは、絶対に正との思い込みや信者であると云う自負心が謝罪など許しませんでした。

信者の多くが、謝罪しない体質を継承しており、休会状態の友人をも4~5ヶ月は時折ですが、電話やメールで従うよう要求し幹部の言葉を用いては悩ましました。
福音とは人間関係に亀裂を生じさせるものではなく、相和するものです。

ローマカトリックは十字軍遠征を謝罪し過ちを認めてます。

管理者様個人を非難するのではありません。
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創造 (落伍者)
2011-03-23 20:18:25
かたつむりを作ったのも神さまです。



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宗教の抱える問題? (NJ)
2011-03-25 22:03:56
元モルモンさん、

宗教(信仰)の持つ負の側面を指摘していただきました。それを克服した地平に至りたいものだと思います。
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保守的 (通行人)
2011-04-02 01:32:44
保守的です。
モルモン教の意に沿わなければ、断罪してモルモン教の正当性を主張したら!
貴殿がモルモン教信者である事を残念に思います。
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缺少说明 (NJ)
2011-04-04 09:36:33
zan-nen nagara imi-fumei... from 北京
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Unknown (Sunshine)
2011-05-22 06:14:43
何回かパッカー長老の説教を読みましたが直接同性愛者への批判と思えないのですがいかがでしょうか。
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確かに読み取りにくい (NJ)
2011-05-22 19:20:33
本ブログの当該記事に記していますように、「同性にに向かう生まれながらに曝される誘惑」(リアホナの文言と予測。今手元にない)という表現になったようですが、このあたりの部分が同性愛を指していて、それは「不純で自然に反する」ものであると説いたため、問題視する人々はこの表現が「同性愛者たちに憎しみを持っても構わない」というお墨付きを与えると懸念したわけです。

英語世界で持つ言葉の影響に私たちはすぐには気づかないことがあると思います。(もちろん私も含めてです)。語りかける社会の情況が異なるからです。
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