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最近届いたサンストーン誌(158号、2010/3月)に目を引く記事があった。それはブリガムヤング大学で37年間動物学、微生物学、分子生物学を教えたウイリアム・S・ブラッドショーが、進化論を中心に科学と信仰の間の和解をはかろうとしたものである。

 著者のブラッドショーはかつて1971-1974年香港伝道部を管理し、現在夫妻で「LDS家族友愛会」(LDS Family Fellowship)という、同性愛の子供たちを持つ両親を支援するグループを主宰している。

 彼の論点は、先ず進化論が生物界で実際に起こったことで、動かし難いことを丁寧に説明し、次いで信仰との両立が可能であることを説く形を取っている。以下、要点を紹介したい。

I
 先ず、1) 進化論が科学界で確固たる位置を占めるに至っていること、生物学の分野で中心的かつ決定的な原理となっていることを述べる。進化論を支持するデータは無数にあり、また多様である。物が落下する状況を重力が説明するのと同様、進化論は多様な生き物について満足すべき、反論の余地のない説明となっている。

 2) 単なる一つの「理論」(theory)にすぎないと言って軽視することはできない。科学者が「理論」という場合、事実と観察に基づき試験と時間の経過をへて、ある現象を最も良く説明できる普遍的な体系的知識を指す。

 3) 今日生物学者の間に進化論について議論が戦わされ、異論があるのは事実であるが、それは進化が生じたか否かについてではなく、進化の過程・メカニズムについてであり、異論があるからと言って進化論の妥当性を否定することはできない。

 4)「生命は偶然に生じたのか」という問いに対して、それは言葉を換えて「神は、分子の無作為の動きや生化学、生物学上の蓋然性の高い事象に依存する創造の仕組み(メカニズム)を利用されたのだろうか」と問われれば、神は描いた通りの結果に達すると確信してそうされたと信じる、とブラッドショーは言う。分子や細胞、組織、有機体を構成する一連の元素と空気、水、土壌など有機体が生きるための材料と環境が与えられれば、生命は誕生し環境に適応して進化していく。進化は思いがけず偶発的に起こるのではなくむしろ必然的なものである。 

                II
 そして著者は進化論を受け入れても問題はないことをいくつかの点から論じている。
1) 進化論の概念は人類を低めるのではないかという問いに対しては、むしろ人類が地上の有機体と生物学的につながっていると意識することは気高く高揚される方向に働き、地上の諸物を預かる責任観が広がることになる、私(著者)は全ての生き物を尊重し、資源を大事に使う気持ちにさせられる、と語る。

 2) 進化論を受け入れると信仰に疑いを持ち、信仰を失うことになるのだろうか。答えは否である。科学が資料として用いるデータが神の不在を示すわけではなく、生き物を生成する過程を考察するのに神を除外しなければならないわけはない。私の受講生の中に神は有機体が発達していくのに、科学的な方法である進化論を用いられたと信じる、と書いた者がいた。

 3) 教会は公的に進化論を肯定または否定しているのだろうか。否。末日聖徒は人を含めて被造物が神に創造されたと信じているが、大管長会の声明は人の起源についてまた信仰と科学との関係について様々な見解を踏まえたものである。

 4) 末日聖徒は進化論的などのような考えを受け入れることができるだろうか。A 地球の年齢は45億年である。B 生命体の存在した歴史も長期にわたる。C 生き物の身体的特徴は時とともに変化してきた。外形や生き様の異なる有機体も系譜をたどっていくと共通の祖先の系譜にさかのぼる。

                 III
 教会に見られる反進化論的な傾向は、教会にとっても会員個人にとってもマイナスの影響を与える可能性がある。教会外部の人は、教会が真理を探求する理性と科学を遠ざけるという印象を持てば、伝道に対してよい反応を示さないであろう。私にとって科学と聖典は、創造に関して相互に補完し合う関係にあると思う。

ー - -

 以上であるが、私(沼野)は昔天動説が覆ってもキリスト教がなくならなかったように、進化論を受け入れるようになっても信仰は存続していくと見ている。今後若い世代がこの問題について弾力的に対応できて信仰のうちに留まるためには、親の世代が指導できるようにならなければならない。

Source: William S. Bradshaw, ‘BIOLOGICAL EVOLUTION – Toward a Reconciliation of the Science and our Faith.’ Sunstone 158 (March 2010) 25-37
http://www.sunstonemagazine.com/?p=803
参考:本ブログ 2006/01/31「モルモン教徒と進化論」 





コメント ( 7 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
真実か?盲目的従属か? ()
2010-06-11 09:38:05
>教会に見られる反進化論的な傾向は、教会にとっても会員個人にとってもマイナスの影響を与える可能性がある。


傾向?
傾向じゃないでしょ?
神の生ける預言者がはっきりと、「進化論は間違いである!」と断言していますから。

もし進化論を受け入れるなら、預言者の言葉が間違いであった事も同時に受け入れる必要が有ります。



>以上であるが、私(沼野)は昔天動説が覆ってもキリスト教がなくならなかったように、進化論を受け入れるようになっても信仰は存続していくと見ている。


進化論を受け入れると言う事は、預言者の言葉を受け入れないと言うことです。

末日聖徒の信仰は、生ける神の預言者が居ると言う事に重きを置いています。
神の預言者が、正しく導いてくれる、と言う信頼関係が末日聖徒の信仰の基本です。

進化論に限らず、これまでの預言者が、「神の御心」と称して話したこと、本に書いた事、テキストとして教えた事、それを、どうするかを論議せずに、「受け入れる」と言う事は、世の中と、自分自身の信仰をバカにしてるんじゃないですか?
 
 
 
著しい傾向ではあっても (NJ)
2010-06-11 12:13:23
「進化論は間違いである」と断言した指導者(預言者と言われる方)は誰でしょうか。

もしいたら、その方は大管長会の公式宣言にもとる発言をしたことになります。

進化論を受け入れることは、受け入れている大勢の末日聖徒(自然科学を学ぶ研究者をはじめ識者)の仲間に加わることであると思っています。現代の社会に適応した、今日の宗教家ではないでしょうか。
 
 
 
信じられない!!! ()
2010-06-11 18:07:33
>「進化論は間違いである」と断言した指導者(預言者と言われる方)は誰でしょうか。

このようなお言葉が、NJさんの口から出る事が、信じられません!!!

ジョセフ・フィルディング・スミス大管長の、著書「救いの教義」第一巻、の、136ページに、「進化論は誤っている」と言う項目が有ります。


「・・・この考えは完全に誤りである。この考えの中にひとかけらの真理も無い」

と書いて有りますよ。

もしこの偉大な著書をお持ちでないのなら、明後日教会に行ったときに、図書室の右上から2段目の棚に入ってますので、確認してください。


こう言う偉大な書物は、たとえ絶版になっても、未来永劫、教会の資料として閲覧できるようにするのが当然でしょ!


>進化論を受け入れることは、受け入れている大勢の末日聖徒(自然科学を学ぶ研究者をはじめ識者)の仲間に加わることであると思っています。現代の社会に適応した、今日の宗教家ではないでしょうか。

私の記憶では、NJさんが支部長の時に、支部長室にこの方の肖像写真が大きく飾られていましたね。

また、この著書は、末日聖徒イエスキリスト教会の、東京ヂストリビューションセンターから発行されています。
NJさんは当時個々の翻訳の仕事をしていたはずですよね。


関西風のボケとしては、面白いですけど・・。
 
 
 
3文字訂正 ()
2010-06-11 18:10:09
>NJさんは当時個々の翻訳の仕事をしていたはずですよね。

個々の・・ではなく、ここの・・です。
 
 
 
豚足(蛇足) ()
2010-06-11 18:26:50
この救いの教義の序文にはこう書いて有ります。

ジョセフ・フィールデイング・スミスは、卓越した福音の学者であり、この代(よ)における最も優れた福音の教師のひとりである。この福音時代に生きた人で、福音の知識の面で彼に匹敵しうる域に達した人、あるいは霊的な洞察力の面で彼を凌駕(りょうが)した人はあまりいない。・・中略・・

福音に関して、しばしば話題にも上るが、神の御心として権威有る回答が示されていない質問も多い。本書はそれらに対する回答ともなるべき事柄を見出す事が出来る。


私は、神の預言者が語った言葉を否定したり、自分勝手に解釈したりするのは、不信仰の始まりじゃないかと・・・。

悔い改めて、心から聖霊に祈れば、「進化論が間違いである」と言う正しい神の導きを受ける事が出来ると思います。

NJさんが、正しい信仰の道にもどられる事を心からお祈りいたします。


 
 
 
17年前MF誌に (NJ)
2010-06-13 06:56:22
豚さん、熱烈なコメントをありがとうございます。

大体すべての答えは、モルモンフォーラム誌11号(1993/秋季)「モルモニズムと科学 -- 地球の年齢と進化論に関連して --」に出ています。

ジョセフ・フィー儿ディング・スミスについてですが、彼はあの本を書いたときはまだ大管長ではなく、序にこの本の内容は彼個人の責任に帰すと断っているはずです。

彼はそれまでタルメージ、ウイッツォーなど科学に理解を示す指導者と対立し論争を繰り広げていて、その後保守的な立場で影響力を独占していきます。

人は絶えず増し加わる情報と自身の研究によって、考え方は昔と現在では異なってきます。数年もたてば変わってきます。ときには半年でも。まして40年も経過すれば違ってきます。いつも悔い改めは必要ですけれども。
 
 
 
終了(主宰者判断で終息) (NJ)
2010-06-14 12:25:58
豚さん、すみません。ここで終了とさせていただきます。
 
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