また楽しからずや(その2)

午後の講演が始まる前に一番気になっていたことを確認しました。
そう、初日に講演が行われていた「北方ユーラシアの青銅器文化」の中身です。
ことと次第によっては悔しさのあまりその場で悶え死ぬことになるわけですが。

恐る恐るレジュメを確認したところ、前半はChernykhの「ソ連の古代冶金」
Ancient Metallurgy in the USSR: The Early Metal Age
E. N. Chernykh



の要旨紹介、後半が北の草原地帯と金属器出現期の中国とを結ぶ若干の出土品の紹介となっていました。

前半は手元に本があるからいいとはいえ、やはり直接聞いてみたいところではありました。
特にセイマ=トゥルビノ現象(Seima-Turbino Phenomenon)とまで言われ
北ユーラシアにも多大な影響を与えた、モンゴルからフィンランドまでを貫く
考古学的な”事件”の背景について詳しく聞いてみたかったですね。残念。

2月に中近東文化センターで行われる、
 第9回 2月4日(日)
  中央ユーラシア中部の青銅器 
    畠山禎(横浜ユーラシア文化館学芸員)
に希望を繋ぐ事とします。

さて、夜には武藤さんを迎えて「中華街の夕べ」を挙行するので15時半位には
歴博を引き上げなければなりません。必然的に聞けるコマは限られてくるわけで
終電まで呑んでいた昨日のバカな自分に悪態の一つもつきたいところです。結局
聴講できたのは下記の4つ。

◆春秋・戦国時代の燕の青銅器(石川岳彦氏)
◆日韓青銅器文化の年代(藤尾慎一郎氏)
◆朝鮮半島の青銅器(岡内三眞氏)
◆武器系青銅器の流通と地域性(吉田広氏)

中でも興味深かったのは藤尾氏と吉田氏の発表。

くだんの年代測定騒動の震源地で直接話を聞くのは初めてなのですが、
「手法が完璧なものではないことはわかっているし、問題についても
 どの程度の幅があるかを提示した上で議論している」という主張は
うなずけるものでした。

業界の中のことは知りませんし、手法についても専門家じゃありませんから
なんとも言えませんが、頭から否定してしまうとか、黙殺してしまうとか
いうことがないとよいなと。あと普通にPowerPointでOKかなと。QTじゃなくても。

吉田氏の「武器系青銅器の流通と地域性」の中で一番注目したのは、北九州の
武器系青銅器生産において、自分達が使用するものとは別に中国・四国など
東方向けのものが作られ、搬出されていたという指摘。

要は出荷先の市場のニーズを踏まえて生産にフィードバックをかけるという
商業的行為が明確に見られるということだと思うのですが、
このあたり、ヴォルガ=ブルガールとオビ川流域の住民との関係を連想させて
興味深いです。こちらも当地の信仰面などのニーズを踏まえた商品作りが
行われていたわけで。今回の日本の話と違って媒介者の存在が推定されていますが。

4つしか聞けなかった自分に悪態をつきつつ、中華街の待ち合わせ場所へ移動開始です。(つづく)
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