本当の年金問題Vol.4

ではでは。本当の年金問題Vol.3の続きです。

もう一度、示してみますね。民主党マニフェストにある「自称年金改革案」。

危機的状況にある現行の年金制度を公平で分かりやすい制度に改め、年金に対する国民の
信頼を確保するため、以下を骨格とする年金制度創設のための法律を 2013年までに成立さ
せます。
(1)すべての人が同じ年金制度に加入し、職業を移動しても面倒な手続きが不要となるよう
に、年金制度を例外なく一元化する

(2)すべての人が「所得が同じなら、同じ保険料」を負担し、納めた保険料を基に受給額を
計算する「所得比例年金」を創設する。これにより納めた保険料は必ず返ってくる制度とし
て、年金制度への信頼を確保する

(3)消費税を財源とする「最低保障年金」を創設し、すべての人が7万円以上の年金を受け取
れるようにすることで、誰もが最低限の年金を受給でき、安心して高齢期を迎えられる制度
にする。「所得比例年金」を一定額以上受給できる人には「最低保障年金」を減額する

(4)消費税5％税収相当分を全額「最低保障年金」の財源として投入し、年金財政を安定させ
る。

どこからいきましょうか…。まあ、先ずは
Vol.1、Vol.2、Vol.3と通してお伝えしてきたことから。

もうここまで言ってくると、ここで書き記すことすら馬鹿馬鹿しいんですが、先ず、「現行
の年金制度は危機的状況にはない」ということ。この大前提がそもそも誤っていますから、
この法案そのものが意味のない法案だということ。
・・・と言っちゃうと、元も子もありませんね。　

では、先に民主党の法案を図式化したものを引っ張ってきてみます。


問題はこの前提条件となっている項目。

・ 国民は年金制度に大きな疑問と不信。昨年度では約４０％の人が国民年金の保険料を未
納付。
・ 現行制度を維持すると、厚生年金保険料率が３０％を超え、基礎年金保険料も月３万円
近くに。国民負担率が５０％を遙かに上回り生活を圧迫、年金制度自体も存続が困難とな
る。

こちらは、2003年時点での民主党の改革案より引っ張ってきました。もうお解りですね。
「国民年金の未納率約40％」が誤り。実際は５％程度です。
このことから、２番目の項目の数値的な裏づけそのものが崩壊します。基礎年金保険料が3
万円になる、なんてことがあるわけがありません。

その手法として、
・　まずは、５年で基礎年金国庫負担率を引き上げる。（１／３⇒１／２）

これは、麻生さんが総理になった時点で、あっという間に改正してしまいました。既に負担
率は1/2に改正されています。民主党が５年間かけてやる、って言っていたものを、あっと
いう間に改正してしまったんです。一応、そのために必要な財源は２兆５０００億円。制度
としては臨時的なものらしいです。将来消費税を引き上げ、この財源として確保する予定
だったようなのですが・・・。（税率としては２％程度になるのだと思います）
現在の財源には埋蔵金が充てられています。

しかも、最初自分たち民主党が最初推していた案でありながら、麻生さんが持ち出した瞬間
に反対に回る、と。

ちなみに民主党が言う最低保障年金（国民年金部分）の全額税負担に必要な財源が２０兆
円。現在消費税５％による税収が１３兆円。半額は地方財源なので、国庫に納まるのは半額
の７兆円。

ちなみに・・・。「消費税」の使途目的について、今年の２月８日、予算委員会にて、自民
党の野田毅さんが鳩山自称総理大臣に面白い質問をしています。

2010年２月８日予算委員会　野田毅さん質疑
Youtube動画では見つからなかったので、衆議院インターネットから。
時間にして、５４:４６当りから発言が始まります。

「総理は予算総則１７条を読んだことがありますか」

これに対して、鳩山自称首相は答えることができません。そして、野田さんはこう答えま
す。
「答えられないならいいです。これは、ですね。大体やじってるほうが解ってない。
要するに消費税の使い道はどこにでも使える話じゃないんですよ。使い道限定してあるんで
すよ。予算総則で。
いつから入れたか。平成１１年度（１９９９年）予算からですよ。入れさせた張本人だから
私がそう言うんですよ。
消費税の使い道は、基礎年金と老人医療と、介護。この３分野以外には国に入った
消費税は使わないんですよ。最初っから！！　最初っからそれに向けてです。他の予算に
充てて良いってことになってないんです」

ちなみに、前記している2003年の民主党改革案には、こんな文言が含められています。

・ その後、デフレ克服と安定的な経済成長の実現を前提に、消費税の一部目的税化等につ
いて具体的な検討を開始。国民基礎年金の財政基盤を確立し、最低限の年金を保証。

この当り、実際麻生当時自民党内閣と同じようなこと言ってると思うんだけどなぁ・・・。

ただし、解りますよね。既に「消費税の一部目的税化」は1999年の時点でなされているわけ
ですから、あまりに「遅すぎる」改革案だということがよくわかります。

1月24日の記事でのんきは民主党政権のことを、「ドンキホーテ内閣」だと表現しました。

2010年現在。政権交代がされた今になっても尚、民主党の法案は、この2003年当時のままな
んです。

つまり、何も勉強していないんですよ。そして、自分たちと同じ案を自民党側が出してきて
も、難癖をつけて否定する。その案を自分たちが否定したものだから、政権交代をした今と
なってもそれを認めることができない。

いかに野党時代、「批判するための批判」しか行ってこなかったのか。そのことがよくわか
ります。

また、既に現行制度として、消費税５％が基礎年金だけでなく、「老人医療・介護」にも用
いられていることから、仮にこの消費税を全額基礎年金の財源に充てようとすると、この
「老人医療・介護」の分野に大きな負担を強いてしまうこともご理解いただけると思いま
す。

はい。やっと見えてきましたね。「本当の年金問題」の正体。

ってことで、次回は年金制度を「全額税方式」に移行しようとすることの、何が本当に問題
であるのか。そのことをお伝えして、この「本当の年金問題」シリーズを終りにしたいと思
います。




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