仁左衛門日記

The Diary of Nizaemon

デルス・ウザーラ

2017年06月29日 | ムービー
『デルス・ウザーラ(原題Дерсу Узала)』(1975年/黒澤明監督/ソ連・日本)を見た。
物語は、「1902年。ソ連ウスリー地方の地誌的調査のため、軍が踏査に入った。アルセーニエフ隊長(ユーリー・ソローミン)は、途中で出くわしたゴリド人の猟師デルス・ウザーラ(マクシム・ムンズク)に案内を依頼する。身内は皆、天然痘で死んでしまい、天涯孤独になってしまったという彼は、緊急避難した小屋をできる範囲で補修し、次に来るだろう誰かのために塩とマッチを置いていってほしいと隊長に進言するような優しく美しい心の持ち主だった。今回の踏査の最終目的地はハンカ湖。風が足跡を消してしまい、帰る方角が分からなくなってしまうからと早めに引き揚げようとしたものの、時すでに遅く・・・」という内容。
デルスは何にでも人に対するように話しかける。
たき火でパチパチと音を立てる焚き木にも「お前、パチパチとうるさいぞ」という具合だが、これは寂しさゆえのことなのか、萬物に魂を感じ、その存在を尊重しているということなか、その辺りはよく分からなかった。
また、彼はその洞察力が素晴らしく、足跡を見てそれを残した人の年齢を推測したり、「鳥が鳴き始めた。雨はもうすぐやむ」とまるで預言者のようなのだが、当然ながら、その"預言"は見事に的中するのだった。
(^。^)
いつしか、デルスは調査隊にとってなくてはならない存在となり、当然、アルセーニエフ隊長にとっても頼れる存在だった。
そして、ハンカ湖での野営以来、親友と呼べる間柄になった。
デルスの知恵と経験のおかげで、命の危機という状況を何とか乗り切ることができた隊長は当然デルスに対し礼を言うのだが、彼は「礼はいらない。一緒に働いたじゃないか」とだけ言う。
何て素晴らしい、純粋な心の持ち主なのだろうか。
(^_^)
「列車でウラジオストクへ一緒に行かないか。町は便利だ」との隊長の提案に、デルスは「ありがとう。ここから4日歩く。そこにクロテンや鹿がいる。町へ行っても何もできない。食べれない。クロテンを探す」と言って断るのだが、過酷な大自然の中で培ってきた彼の生きる力は、確かに都市では生かしきれないだろう。
隊長は「残りの弾を全部やれ」と部下に命令するのが精いっぱいだ。
広大なシベリアの大地を何日も歩き、厳しい自然環境と対峙し、猟をすることで生計を立てる。
デルス・ウザーラはずっとそうやって生きてきたし、そうやって生きていくのだろう。
これは、1923年に同タイトルで出版されたロシア人探検家ウラディミール・アルセーニエフの探検記録を基としている物語なのだそうで、ナカナカに面白い作品だった。