仁左衛門日記

The Diary of Nizaemon

ファントマ ミサイル作戦

2016年08月22日 | ムービー
『ファントマ ミサイル作戦(原題Fantômas contre Scotland Yard)』(1967年/アンドレ・ユヌベル監督)を見た。
物語は、「スコットランド・ネス湖の湖畔にあるロードエドワード・マクラシュリー卿(ジャン=ロジャー・カーシモン)の元へ、彼の親友ウォルター・ブラウン卿(ジャン・マレー)に変装したファントマ(ジャン・マレー/2役)が現れた。ファントマは、世界中の富豪に"生存権"という税金を課税することにしたので、30億フランもしくは600万ドルを支払え。支払いを拒否したり警察に通報すれば命の保証はしないという。マクラシュリー卿は仲間を集めて対策を協議した。また、ファントマと何度も対決したことがあるパリ警視庁のジューヴ警視(ルイ・ド・フュネス)、新聞記者ファンドール(ジャン・マレー/3役)、エレーヌ(ミレーヌ・ドモンジョ)らをフランスから呼び寄せることにしたのだが・・・」という内容。
原作小説は、1911年から1926年まで全42作が出版された人気作のようだが、アンドレ・ユヌベル監督による1960年代の映画シリーズはこの第3作をもって終了したようである。
それは興業的な理由ではあるのだろうが、(内容的に)ジューヴ警視のキャラクター設定が酷くなりすぎてしまって、もう続けようがなかったのではないだろうかと思えるほどに、劇中のジューヴ警視はすっかり人格が破たんしてしまって、行きつくところまで行きついてしまったような感じだった。
舞台はスコットランドなんだし、スコットランドヤードのトム・スミス警視(アンドレ・デュマ)に幾らかの活躍の場を与えていれば、ジューヴをあれほどの深みにはめる前に落ち着かせることができたのではないかと思えた。
警視があんなじゃ、部下のミシェル・ベルトラン(ジャック・ダイナム)が可哀想だ。
(^_^;)
スコットランドの古城とあって城内を幽霊がうろうろしているらしいのだが、驚くジューヴに対して、執事は「あれはマードック・マクラシュリー卿です。第3回十字軍の時に遠征先で戦死しました」などと冷静に解説するのが面白かったし、キツネ狩りが主要な舞台として描かれていたのも何やらスコットランドぽくて良かった。
ファントマは前2作と同様に非情で、肥満体形のインドの富豪には体重分のダイヤを毎年払えと言い、生存税の話を嗅ぎつけて計画に乗っかろうとしたギャングにも同様の課税をし、「ギャングも大富豪も私にとっては同じだ。まともな社会では税金は平等に課せられる」と言い放つ。
そんなこと泥棒に言われたくはないが、世界の中心はファントマであり、その自信には揺るぎがないようだ。
(^。^)

ファントマ 電光石火

2016年07月29日 | ムービー
シリーズ第2作『ファントマ 電光石火(Fantômas se déchaîne)』(1965年/アンドレ・ユヌベル監督/フランス)を見た。
物語は、「パリ警視庁のジューヴ警視(ルイ・ド・フュネス)は、一年前に怪盗ファントマと勇敢に戦った功績を認められ、政府からレジオンドヌール勲章を授与された。ところが、その授賞祝賀会の最中にファントマからお祝いのメッセージが届いてしまう。ファントマは生きていたのだ。後日、中央科学研究所から科学者のマルシャン教授(アルベール・ダニャン)が誘拐されるという事件が起きた。新聞社ポワン・デュ・ジュールの記者ファンド-ル(ジャン・マレー)は"ファントマがマルシャン教授を誘拐した"とトップニュースで報じたのだが、"いたずらに市民の不安を煽っている"とこの記事に激怒したジューヴ警視は、テレビ番組に出演してファンドールを糾弾する。すると直後にテレビ電波がジャックされ、画面に映し出されたファントマ(ジャン・マレー/二役)本人から誘拐の犯行声明と、教授らに開発させる新兵器による世界征服の野望が宣言されたのだった」という内容。
調べてみると、ジューヴ警視が授与された"レジオンドヌール"という勲章は実在するものらしく、ナポレオン・ボナパルトによって制定されたフランスの最高勲章とのことである。
確かに、警視は祝賀会のスピーチの中で、バヤール、ナポレオン、ジャンヌ・ダルクと並び評されていたくらいだから、フランス最高の評価なのだろう("バヤール"とは武勲詩に登場する魔法の馬)。
(^_^)
ただ、警視の栄光もこの時までで、ファントマが電波ジャックをした際には、椅子に縛り付けられた情けない姿が放送されてしまうという醜態をさらしてしまった。
この放送を見ていたエレーヌ(ミレーヌ・ドモンジョ)がテレビ画面をバシバシとカメラに収めていたのだが、撮影したテレビ画面を新聞紙面に使用するというのは広く当時の新聞で行われていたのだろうか。
現代でいうと、テレビ局がYoutubeなどインターネット上の映像を番組で流すのと同じ感覚で。
(^_^;)
次に誘拐される恐れがあるルフェーヴル教授(ジャン・マレー/三役)は会議のためにイタリアへ出かけるのだが、なんとその交通手段が列車。
この映画が公開された(1965年)当時、ヨーロッパでの移動はまだ飛行機ではなく列車が一般的だったのだろうか。
クルマが空を飛んだり、テレパシー光線だとか海底の秘密基地だとか、ファントマが使いこなそうとする道具は、SFの最先端を行っている設定だったが、その舞台となる社会インフラは全く普通にそのまま使用されているのが面白かった。
ヒット作とはいえ、おそらく大がかりな予算は組まれていなかったのだろう。
特に、ジューヴ警視の新装備ガジェットがしょぼかった。
(^。^)

ファントマ 危機脱出

2012年11月08日 | ムービー
『ファントマ 危機脱出』(1964年/アンドレ・ユヌベル監督/フランス)を見た。
物語は、「パリ警視庁のジューヴ警部(ルイ・ド・フュネス)は、世間を恐怖に陥れている謎の怪盗ファントマを必ず逮捕するので安心してほしいとテレビ番組を使って市民に訴えかけた。それを見た新聞記者ファンドール(ジャン・マレー)はファントマの存在を信用していなかったことから、同僚で恋人のエレーヌ(ミレーヌ・ドモンジョ)と組み、捏造した1面トップ記事を作る。捏造記事とは知る由もない世間は驚いた。しかし、記事は本当に存在していた怪盗ファントマの怒りに触れ・・・」という内容。
怪盗ファントマを題材としたフランス映画が数本あることは知っていたが、今回ようやく、この第1作『ファントマ 危機脱出』、第2作『ファントマ 電光石火』(1965年/アンドレ・ユヌベル監督)を初めて見て、そして第3作『ファントマ ミサイル作戦』(1967年/アンドレ・ユヌベル監督)をたぶん38年ぶりに見た。
一連の題名は"ファントマ"になってはいるが、主役は新聞記者のファンドールのようで、ファントマと関わってしまったことから彼の身の周りに火の粉が降りかかるというのがこれら3本に共通している設定のようだ。
しかし、捏造記事を作っても何とも思わないこの主役の新聞記者にはどうも共感できなかった。
(^_^;)
第3作の『ファントマ ミサイル作戦』についても、初めて見た11歳の時に感じた面白さを今回も同じ様に感じることができたかというと、実はそういうこともなく、代わりにジューヴ警部を演じたルイ・ド・フィネスの演技に少し感心してみたりしたのだった。
同じ映画を何年か後に見治すと、初めて見た当時とは随分受け止め方が変わってくるものなのだろう。