虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

自分の世界に没頭している自閉症スペクトラムの子と DIR治療プログラム 1

2011-08-13 16:14:46 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子


今回のユースホステルのレッスンには双方向のコミュニケーション能力が弱く、
すぐに自分の世界に没頭してしまう自閉症スペクトラムの小学1年生の◎くんが参加していました。

最初にココプラザの和室でレッスンをはじめたとき、
◎くんは独り言を言いながら自分の世界に没頭しているとはいえ、
機嫌良く過ごしていました。
が、途中で、「部屋全体を使って街やお店や道路などを作ってみよう」という流れになって
集まった子らが積極的に動き出すと、
「いや~!帰る!」「お家帰る」と不安そうな表情で小声でつぶやきながら、うろうろしはじめました。
そして和室でのレッスンを終えて、いよいよユースホステルへ移動という段になって、
「お家に帰る!帰る!」「帰るよ!お家に帰るよ!」と騒いでパニックを起こしていました。

その時には、他の子らはすっかり打ち解けて手を取り合って移動していましたから、
◎くんのお母さんは肩を落として、「ちょっと無謀な参加だったでしょうか……」と
困惑しきった様子でおっしゃっていました。

先のことはわからないし、
その時の◎くんの拒絶の仕方からすると
とうてい「帰る!帰る!」の騒ぎは収まりそうになかったけれど、
私はなぜだか◎くんと仲良くなれるような予感がしていました。

運よくこの日は個室希望の◎くん親子のために室内に
お風呂がついているツインルームの予約ができていました。
(ツインルームの数が少ないためなかなかこの部屋の予約が取れないのです。)

そこで、◎くん親子には、
ユースホステルに着いた後のオリエンテーリングや学習タイムに
部屋でゆっくりしていただくことにしました。

夕食の前に心配しいしい◎くんの部屋をたずねると、
◎くんはお風呂に入って気持ちが良くなったらしく
ニコニコしていました。

夕食は海老フライにフィッシュフライにハンバーグにポテトサラダに五穀米というこってりメニュー。

◎くんの好物ばかりでした。
私は◎くんの左隣で食事をすることにしました。
◎くんは私が隣に座っているということと、初めてお会いしたとはいえ優しく接してもらっていた
★くんのお母さんが斜めに座っているということが
とても気に入っている様子でした。
双方向のコミュニケーションには発展しないものの、終始ニコニコしています。
◎くんは上機嫌で大人顔負けの量を食べていました。

夕食後のプログラムは7時半から美術工房でスライム作りや工作や学習をして
子どもたちが眠くなったら部屋に戻り、
晩はボランティアの女の子に眠った後の子どもたちの見守りをお願いして親の勉強会をする予定でした。

◎くんのお母さんは、後のプログラムはどちらも諦めて
そのまま休む心積もりでおられたのですが、
◎くんたちの部屋を訪ねて
「◎くん、いっしょにスライムで遊ぶ?」とたずねると、
以前、スライムで遊んで楽しかった経験のある◎くんは、
「スライム、する、スライム、する」とピョンピョンはねながら喜びました。

7時半まで他の親子がお風呂に入っている時間を使って
◎くん親子の個別にレッスンをし、(どうしても参加していただける時間が減ってしまいそうだったので)
7時半から◎くんが疲れるまでの時間に参加してもらい、
晩の大人だけの勉強会も他のお母さん方に協力していただいて、
◎くんのお母さんにも少しでも参加していただけるように
することにしました。

7時半まで、私が◎くんのお母さんの相談に乗っていると、
◎くんははじめのうちは小さな声で
「終わり、おしまい、先生あっち」と私を追い払おうとしていましたが、
少しすると、椅子の隙間から手を出して、
私がそれに応じて手に触れると、嫌がる風でもなく
遊んでいました。

その後は、◎くんが私を拒絶したり追い払ったりする言葉は
皆無に等しくなりました。
◎くんが私を受け入れはじめているのがわかりました。

7時半からの美術工房でのレッスンでは、
グランドピアノの周りをぐるぐる回っているときもありましたが、
かなり長い時間スライム作りに参加したり、
マジックサンドで遊んだりすることができました。





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1 コメント

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ありがとうございました。 (ぺったんまま)
2011-08-14 01:22:16
奈緒美先生、大変お世話になりました。
混乱していた息子と、対応におろおろしていた
私にとてもいろいろな場面で細やかに気を使って頂いたおかげで、なんとか最後まで参加することができました。

kさん、一緒に参加していらした皆さんにもいろいろ助けていただき温かく見守っていただいて本当にありがとうございました。

かなり無謀なチャレンジだったかなと、思っていましたが「やらないの」と言うと思ったスライムづくりに自分から「やる」といったのには
すごく驚きました。
先生がいろんな場面で時間をおいては声をかけてくださって、◎のやってみようというタイミングを
見逃さないでいてくださったからだと思います。

いろいろな場面で出来そうなことを、お手伝いさせてくださるのを見て、◎に出来そうなこと、少しチャレンジすると出来そうなことを探しながら生活することが大事なんだなあと、感じました。

貴重な二日間を過ごさせていただいてありがとうございました。
先生や皆さんとお話したことを反芻して生活の中で活かせるようにしていきます。
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