未熟児で生まれた後遺症から
さまざまな面で発達に遅れがあるという5歳の★くんが、初めて虹色教室のレッスンに
来てくれました。
まだ「うーうー、あーあー」という声以外、発することができない★くん。
5歳の今も言葉のない世界で暮らしています。
確かに言葉を話すことはできませんが、★くんと遊ぶうちに、
わたしは★くんの賢さや好奇心の強さに強く心を動かされました。
身体の機能が弱くて、言葉のもととなるような音を発することや、
何かを握る運動をすること、
食べることにすら困難を抱えている★くんですが、
目で物を観察する力は高く、働きかけた結果を確かめながら自分の行動を変えたり、
先を予測して微調整すること、
大人の示す手本を瞬時に取り入れて行動を軌道修正することなどができるのです。
特に空間を把握する力と、
磁石の力などの物を動かす力に対する
好奇心にしろ、探究心にしろ、理解力にしろ
非常に高いものがあって、
諦めずに集中してさまざまな取り組みに参加できるだけでなく
わたしが示す手本や説明に対して、しっかり心を傾けて自分の行動に取り入れることができていたのです。
自分で作ることにも積極的で、
わたしが★くん用に動く見本を作ってあげると、すぐさま真似して
はさみで切ろうとしたり、テープでつけようとしたりしていました。
★くんといっしょに、「巻きあげる」「引っ張る」「重りで動かす」「坂を作って動かす」「磁石の半端tうする力で動かす」
といった活動をしました。
どれも★くんの気持ちを強く引き付けたようで
長い間試行錯誤したり、自分でも作ってみようとしたりしました。
★くんは何よりクーゲルバーンのおもちゃが気に入って
繰り返し熱心に遊んでいました。
また、うまくビー玉が転がらない時には、
自分で工夫して転がるように俸を組みかえようともしていました。
お家にはそうした★くんの熱心さや工夫しようとする気持ちを引き出すような
おもちゃがあまりない、というお話でしたので、
空き箱やペットボトルを使って★くんがお家で遊ぶためのおもちゃを作ってあげることにしました。
箱の穴にビー玉を入れると、内部で滑り台を滑るように転がって
横の穴から出てくるもの。
ビー玉の投入口。
サランラップの空き箱で作るビー玉の滑る部分。
紙コップのエレベーター、などです。
★くんは、大喜び。熱中して遊んでいました。
★くんは機能の面で言葉を発することが難しい子ですが、
だからといって話しかける以外の言葉の発達を促す働きかけを
何もしないことは、
問題があるように感じました。
(★くんは病院や療育等に通っていますが、そうした面での特別な指導は
受けていないのです)
★くんは人が好きで、人と関わりたいという気持ちを十分持っている子ですし、
「あれ取って」「ちょうだい」といった要望は、
相手の手を引いて、「あっあっあっ!」といった言葉で伝えようとしています。
また遊びの世界での理解力を見ていると、
2語文、3語文で表現する内容の
言いたいことがあるのもわかります。
たとえば、こんなことがありました。
ビー玉転がしをして遊んでいた時のこと、
ひとつだけサイズが小さいビー玉を手にした瞬間、
それを掲げて、「あっあっ!」と興奮した様子で声をあげたのです。
「小さいね。本当、そのビー玉は小さいね」と言うと、
納得したように、そのビー玉を転がしました。
次回に続きます。