虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

自閉症スペクトラム障がいの子 と 論理的に考える力 9

2011-09-24 09:23:09 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

『自閉症のDIR治療プログラム』 S.グリーンスパン S.ウィーダー著 広瀬宏之 訳  創元社

に、論理的思考を身につけていく段階が次のように書かれています。簡単に要約して紹介させていただきます。

 

<第1段階>

五感を働かせて周囲の世界を感じとり、外界のイメージを正確に描くこと。 (0歳3~4ヶ月頃から)

 

<第2段階>

周囲の世界と感情的に意味のある関わりをすること。

自分から進んで周囲の世界と関わり、見聞きするものや情報を与える他人を信頼できるようになること。

 

(自閉症スペクトラム障がいのある子は、感覚が敏感過ぎたり、鈍感過ぎたりするのと、

外の世界と関わる必要性を感じていないために、

そうした世界との感情的な関わりを持つことが難しいです。

情報処理上に問題があって感覚入力を理解する際に混乱が生じているのです。不安から守ってあげ、

周囲と関わることで心地よさを感じることができるような配慮が必要です。)

 

<第3段階>

周囲の世界と目的を持った関わりをすること。自分のしたことに反応が返ってくるような

行為をします。

目的を持った行動は論理的な思考を身につけていく大事なステップです。

 

<第4段階>

目的のある行動をいくつか結び付け、パターンとして認識すること。おもちゃがみつからないとき、お母さんに助けを求めること、

障害物競争で、跳び箱を乗り越え、壁を迂回し、トンネルをくぐってゴールに到着するために、

いくつかの問題を解決し、目的達成のための行動を取ること。

そうしたことがより高度なレベルでの科学的合理性、パターン認識といった能力の始まりです。

 

<第5段階>

考えや概念を実際に使用すること。

「現実世界に根ざした論理的思考」です。

大事なのはイメージトレーニングです。クッキーがー欲しくて家中を探すのではんく、まずありそうなところを思い浮かべます。

冷蔵庫だろうか食器戸棚だろうか、お母さんがよく隠している引き出しだろうかと考えるわけです。

子どもは世の中のことを頭の中にイメージし、それを頭の中に再現して楽しむために、

考えるという能力を身につけるのです。

こうした考えからシンボリックな考え方が生まれてきます。

 

<第6段階>

複数の考えを結び付けます。

「合理的思考法」の始まりです。複数の考え方を結び付け、それらを議論することができる

ようにします。

これをマスターするためには、子どもの創造力を豊かにする関わりが必要です。

「何?」「どこ?」「だれ?」といった会話に応答することから始め、「なぜ?」という

質問にも答えられるようにします。

こうした質問をごっこ遊びや普段の会話に組み込みます。

どのコミュニケーションのやりとりも、会話が持続するように努めます。

(自閉症スペクトラム障がいの子らは、ひとつの考えから無秩序に別の考えに飛び移ること

が多々あります。こうした子らは、自分で考えて何かを身につけていくより

丸暗記で覚える方が得意です。いくらたくさん丸暗記しても、創造的かつ論理的に考える能力は

少しも育ちません。せりふを丸暗記させても、言葉を柔軟かつ論理的に使うことはできません。

それなら、どのような働きかけをすればいいのでしょう?その方法については,

近いうちに記事にさせていただきますね。)

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発達に凸凹がある小学1年生の子たちのグループレッスンでこんなことがありました。

◆くんが、ハムスターのお家にもみじの葉っぱを置いて、「秋だよ」と言っていたので、

わたしは1ぴきのハムスターを手に取って、「ゴホッゴホッ。風邪ひいちゃった。

今はきっと冬だよ。だってぼくが風邪をひいているから。きっと冬だよ。」と言わせました。

すると、子どもたちはハムスターのトンデモ発言に納得してしまって、誰も言い返すことができませんでした。

このグループの子たちは、暗黙の了解として感じ取ることや、論理的に筋道を立てて考えていくことに

困難があるのです。

 

そんな子どもたちの姿を見て、わたしはハムスターたちに、

さらに次々と、トンデモ発言や突っ込みどころ満載の議論をさせながら、

その会話に子どもたちが入っていって、ハムスターの言っている論理のおかしい部分を指摘したり、

ハムスター世界で持ち上がっている問題を解決するように誘いました。

 

すると、もともと純粋で素直な子たちですから、たちまちこの世界に夢中になって、

参加していました。

 

<ハムスター会議1 「◎くんはハムスターか?人間か?」>

 

ハムスターの一匹が教室にいた◎くんのことをうわさしています。

「◎くんってさ、人間なんだって。本当かな?」

すると、別のハムスターが、「ちがうよ。◎くんはハムスターだよ」ときっぱり言います。

「だって見てごらん。ぼくたちと同じように耳がふたつあるじゃないか。

だからハムスターに決まっているよ」

「本当だ。1,2、ちゃんと耳がふたつある。ぼくらの耳も1,2ちゃんとふたつ。きっと◎くんはハムスターだ」

すると、◎くんは笑いながら、「ちがうよ。ぼくは人間だよ。」とお馬鹿ハムスターたちに教えます。

すると、ハムスターはこう言い返しました。

「◆くんと、★くんは靴下を履いているよね。でも、◎くんはぼくたちと同じ。裸足だよ。

◎くんはきっとハムスターだよ」

◎くんはゲラゲラ笑っています。

「じゃあ、◎くんは自分のことが人間だってうそをついているの?」と別のハムスターがたずねます。

 

おじじ先生ハムスターがえらそうに、

「もしもだよ。◎くんがハムスターなのに、人間だって自分のことを言ってるならうそつきだ。

えんま様に舌を抜かれる。

もし◎くんが人間で、自分のことを人間だって言っているのなら、

それはうそじゃない。どっちが正しいのか、◎くんにたずねてみよう。」と言いました。

それからハムスターたちは、◎くんに、

「◎くん、本当にきみが人間だっていうのなら、証拠を見せてよ」と頼みました。

◎くんは笑いながら、足の指をさして、「いいよ。ほら、ぼくは爪があるよ。だから人間じゃんか」と言いました。

すると、小さなハムスターが、「私も爪があるわ。きっと私は人間なんだわ」と言いました。

 

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↑のストーリーはごっこ遊びの最中に自然に展開していたストーリーですが、

◎くんをはじめ、他の子たちも、

ハムスターたちが納得するような説明をすることができません。

それでも一生懸命知恵を絞るうちに、

しっかり考えて発言することもできるようになってきました。

 

次回に続きます。

 

 


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