タイトルの自閉症スペクトラムの子たちのレッスンとは別の話題になって申し訳ありません。
★くん(未熟児で生まれた後遺症から言葉を話すことができない5歳の男の子)は
言葉をしゃべることはできないものの、他の子のすることに
興味津津で、いつも背後から覗きこむようにしてよく観察しています。
からくりおもちゃの動かし方や道具の使い方などは、流れを記憶していて、
その通りに再現できます。
一見、さまざまなことを教えやすいように見える★くんです。
しかし、これまで家庭や療育の場での学びは、
停滞していたようです。
その一番の理由は、身体の機能の面で声を出すのが困難なため
言葉がしゃべれないことにあるようです。
発声の困難さから一語文もままならない★くんですが、
遊びや生活面での知力を思うと、二語文、三語文のやりとりをする能力は十分ありそうでした。
音声言語だけに頼るのをいったんあきらめて、
絵カードやベビーサインのような身体を使った言葉や
文字を使って、二語文や三語文のやりとりができるようになることを目指していくのが
大事なんじゃないか、と思いました。
前回のレッスンでそうした話し合いをしてから、
その準備のため、★くんのお母さんは片面が大きなひらがなの文字、片面が★くんの好きな乗り物の写真が
載っている絵本を購入して、読んであげているそうです。
すると、なかなかいい手ごたえがあったようです。人と同じものを同時に見て、感情を分かち合うことができる子ですから、
今後も読み聞かせの世界を広げていくことは大切そうです。
レッスンでも、★くん、●くん、☆ちゃんの3人で教室の理科の箱(今回は本物そっくりの昆虫のおもちゃや魚のおもちゃなどが
入っているものです)を開けて、「どっちが魚でょう?」とあてっこしたり、
布をかけて、上から触れて中身が何か推測するような遊びをしていた時には、
★くんが一番集中してそれに取り組めていました。
こちらが見て欲しいと思うものに、注意を向けることができるからです。
けれどもその一方で、魚と虫を並べて、魚はどちらなのか選べないくらい
物の名前があいまいなこともわかりました。
2,3歳児向けの写真や絵の図鑑を見ながら、「りんごはどれかな?」「猫はどこかな?」
といった指さし遊びや、言葉を確認しあって物に触れる時間なのが大切なのかもしれません。
また、「どっち」とか「どこ」とか「だれ」という質問も
あいまいなまま理解しているようでした。
言葉を発声しなくても、指をさすだけでやりとりできるコミュニュケーションの中で
そうした言葉への理解をうながすといいですよね。
★くんの聞き言葉の理解があいまいなのは、
★くんが「間違い」に鈍感なこと、
つまり「間違い」を「間違い」として意識することが
ほとんどないように見えることにも原因があるのかもしれません。
たとえば、「魚はどっち?」の質問に、
かぶとむしの人形に手を伸ばした後で、「こっちこっち」とお母さんが魚を指すと、
かぶとむしを放り出して、魚を手にはするのだけれど、
その姿からは正誤がわかったのではなく、
ただお母さんの誘導のままに動いているという感じがあるのです。
ですから、そうした時に、「かぶとむし」を触ってみて、「ブッブーちがうね。バツ」と手で大きなバツを作り、
「魚はこっちだね」と魚に触れて、手で丸を作ったり、パチパチ拍手したりして
はっきりわかるように提示することや、
一度わかりかけたものは、何度も何度も、
「ええと……こっちは、さかなかな……ちがうちがうバツだね。こっちだね~」
と正しい、正しくないを判断する遊びを何度も繰り返すようにするのも大事なのでしょう。