虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

自分なりの審美眼 (春休みの算数クラブ ) 2

2014-03-26 16:16:30 | 算数

 

子どもと物作りをしていると、それぞれの子の性質や、

何に対して美意識を持っているのかよくわかります。

 

物を選ぶとき、何を基準にするか。

 

パッと目を引く得しそうなものを選ぶ子。流行に敏感な子。

素材やデザインの美しさで選ぶ子。

自分の中に閃いたアイデア重視の子(白い紙を好みます)。

大人に指示してもらわないと何も選べない子。

ほかの子らはまったく興味を引かないようなものに強い関心を示す子。

最終的な完成形をイメージした目的に添ったものを選ぶ子もいれば、

素材と戯れたり、実験的に素材と格闘したりする目的で、選ぶ子もいます。

選ぶ際に、何を選ぶかよりも、選ぶ活動の中で動く人の感情や人との関わりに

関心が行く子もいます。 

また選ぶ姿には、決断力とか想像力とか計画性とか柔軟性なんかが

見てとれます。

 

 

作る過程で、発揮される能力もさまざまです。

 自分のしていることをモニタリングしながら段取りよく作っていける子。

イメージの世界を広げて、さまざまな意味付けをしながら作る子。

こちらが教える技術を習得するのが上手な子。

模倣するのが上手な子。新しく学習したことを自分で発展させるのが得意な子。

作る過程で、気づいたことを言葉にする能力が優れた子。

  

 前回の記事(6日目)の●ちゃんは、立体の図形に対する感性が優れた子だな、と

感じるシーンがありました。

 

雑誌にあったシルバニアファミリーの写真を使ってゲームを作ることにした●ちゃん。

わたしが駒にする人形の絵を立てるために、細く切った画用紙を折って

上の写真のような形を作ると、●ちゃんが即座にそれを再現しはじめました。

 

その際、わたしがした作業を模倣するのではなく、

細い紙にどのあたりで折ったらいいのか、指を当てて推理しながらテキパキと

仕上げていました。

 

また、最終的にやめてしまったのですが、ゴールの地点に「入学式」と書いた門を

立体にして取り付けようとしていました。

 

シールを5つ貼って、進むマスを作っていたとき、わたしが、「これだと最初の人が

サイコロを振って、6の目が出たら大変なことになるね」と言うと、

「そりゃ、始まったばかりで、ゴールになっちゃう」と言って笑っていた●ちゃんは、

マス目を増やして「1回休み」とか、「○○進む」といった文字も書きこんでいました。

自分で考えて、実行する力を持っている子のようです。

 

ポケモンのカードゲームをコピーしてゲーム作りをすることにした○ちゃん。

ゲーム中、勝った人が計算問題に答えるというルールにしていました。

○ちゃんは、何を素材にしてゲームを作るか考えるとき、ポケモンカードの体重や

身長の数値がややこしそうだったことに惹かれて選んでいました。

また、質問用のカードも、なるべく難しそうな計算の式になるようにしていました。

○ちゃんには、計算式や小数点がついた数を美しく感じるような感性があるんだろうな、

と思いました。

それぞれの子の資質は本当に面白いです。

 

札幌から来てくれていた☆ちゃんは、★ちゃん同様、わたしが最初に提示した見本通りに

作っていて、作った作品を見る限り☆ちゃんらしさというのはわかりにくいのですが、

作るときも遊ぶときも、その場や状況の核心部分をすばやくつかみ、

こちらが伝えることを理解する面で卓越していました。

ちょっとした場面で、☆ちゃんから返ってくるコメントがとにかく的確なのです。

 

たとえば、自分が住んでいる地域のご当地キティーちゃんを探して

みんなに紹介するときも、各県と特産品や行事とのつながりについて

よく理解した上で、さまざまなことを話していました。

 

 

子どもによって、独創的でマイペースな子もいれば、

呑みこみが早く打てば響くような反応をする子もいるのです。

空間図形に強い子もいれば、情報通の子もいます。人の心の世界に敏感な子もいれば、

知的な世界に美しさを感じる子もいます。

記憶力が良い子、洞察力が優れている子、熟考するのが得意な子、頭の回転が速い子、

粘り強い子、言葉について敏感な子。

本当にひとりひとり違います。

 

前回の記事で、東大パパさんの記事を引用させていただきながら、

自分自身が幼かった頃を振り返って、

「自分の中に絶対的なものさしを持っていたものって何だろう?

自分なりの審美眼が利いた分野はどんなものだろう?

それは今の暮らしにどんなふうにつながっているんだろう?」と思いをめぐらせました。

 

すると、ずいぶん小さい頃から子ども時代を通して、あるものについて、

誰に何と言われようと揺るがないほど、その質を見分ける自分のものさしを

信頼していたものがあったことに気づきました。

 

いくつかの短い童話や説話や児童書について、

大した根拠もなく、「これは絶対に素晴らしいもの、質が高いもの」という

自己流の目利きで、愛着を抱いているものがありました。

 

どれも子どもの頃のわたしには、そこに書かれている内容を正確に理解することが

できないものばかりでした。

ですから、どうしてそれが素晴らしいのか、理由を説明する力は皆無だったのです。

それなのに、初めて目にした瞬間から、強く引き付けられて、

よくわからないながらに、何度も何度も読み返していましたし、

どんな賢そうな人がそれらを馬鹿にしたところで、

その質の良さについて微塵の疑いも抱かなかっただろうと思います。

 

そのひとつである『ムギと王さま』という童話はこんな話です。

 

村にひとりのばかがおりました。

その子は、実は校長先生のむすこで、

もとは、その先、何を望んだらいいのかわからないような天才児のひとりでした。

校長先生はあらゆることを望み、むりやり本をつめこみましたが、子どもが十に

なった時、ぜんぜん頭が働かなくなってしまいました。

この子はウィリーという名で、時おり、ふいにつつかれて鳴りだす壊れたオルゴールの

ように、突然、舌がゆるんでとめどなく話をすることがありました。

あるとき、ウィリーは、時計のくさりについているカブトムシ石をさわりながら、

「ぼくがエジプトにいて、まだ小さかったころ……」といった話をはじめます。

最後にウィリーは「エジプトの王さまとムギと、どっちが金色だ?」と問いかけます。

 

この話は、会話のほとんどが禅問答のようなものばかりで、

子どものわたしに何度も読み返させる魅力がどこにあったのか、不思議に感じます。

 

それらのわたしの心を捉えて離さなかった話の数々は、

ニューベリー賞やカーネギー賞やノーベル文学賞を取った作家が書いたもので、

その作者の生きてきた道や伝えたいことが結実したような内容だったことを

大人になって知りました。

 

わたしの両親は、

「○年生用とあるからいい本」とか「分厚くて字が小さいからすごい本」とか

「テレビで誰かが勧めていたから質がいい本」といった評価していました。

一方、子どものわたしは、ただただ活字を追いながら、

「これはいい本」「これはすごい本」と自分の判断に絶対的な確信を抱いていました。

子どもの頃、自分で選んだ話のどれもが、大人になったわたしの心を深く感動させている

ことを思うと、わたしは自分にとって大切な話を見分ける鑑識眼を持っていたのかも

しれません。

それは受験には役立ちませんでしたが、生きていく指針となっているように思います。

 

 

 

 


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4 コメント

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ありがとうございました (ワーキングマザー)
2014-03-27 11:40:10
先日はお世話になりました。子どもたちは家に帰りたがらず困りましたが、よくよく話を聞くと、もっと遊びたかったらしいです。でも帰るとゆったりしていつものそれぞれの子どもらしい遊びが再開しました。おねえちゃんは帰るなり本を読んでいましたが、夕ご飯のときには楽しそうに一緒に勉強したお友達のことやゲームをしたことなどを話してくれました。真ん中の子は帰ってからひとりでワークをひとしきりして、私の時間が開くと一緒にトランプをしました。一番下の子は一時ブームだった折り紙で飛行機を折る遊びを再開しました。レッスンを受けさせていただいたのはおねえちゃんだったのですが、下の二人も刺激を受けたようでした。有意義な時間を本当にありがとうございました。
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オンライン工作について (フムフムチロル)
2014-03-27 15:05:03
なおみ先生こんにちは。
4歳0ヶ月、男児の母です。
オンライン工作を参考にいくつか工作遊びをしたり、日々の生活に算数を取り入れたりしています。

かなり前から気になっているのが、子供の工作にあまり発展性がない、ということです。

ハイパーレスキューと言ってそれなりのものを作る時もありましたが、
折り紙ただ3回おってチューリップを何個も作る、三角を何個も折る、適当に切った形をセロハンテープでひたすら貼り続けコーティングしたようにする(この作業がやたらと多い)という、感じです。

新しい素材があると、すぐにとびついて、興味を示しますが、興味の対象もうつりやすいです。
かなり感覚タイプの子なのかな、と感じています。

セロハンテープコーティング作業など、やりきったら次に進んでいくものなのでしょうか。

もうちょっと、一緒に工作の世界に触れる時間を持った方がよいのでしょうか。
工作を発展させたり、自分で考える力を育めればと思っています。
オンライン工作を楽しんでいく上で、アドバイスがございましたら教えていただけましたら幸いです。

どうぞよろしくお願いします。
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絵本 (いすず)
2014-03-28 08:23:36
先日はありがとうございました。
娘が昨日、急に絵本をかく!と言い出して、5Pの絵本(文書メインで絵が1つだけ)を書いてくれました。
あいさつをするお話で、自分がおじぎしている絵を描いていました。

多分教室で、同学年のお友達&キャラクターの絵を見せて頂いた影響だと思います。


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お世話になりました。 (みかん)
2014-03-28 21:52:14
先日はありがとうございました。
とても楽しかったようで自分で作ったゲームを満足げに父親に話していました。翌日、突然、”先生が出してくれたような算数問題をやりたい!”と言い出し、指人形を使ってやってみるとまるでゲームをしているかのように”はい、次は?”と
せかされ、気が付いたら小一時間もやっていました・・
その後は特に催促されることもなく、やり過ぎたと反省しています・・
今も変わらず、”算数が好き!”と話しており、
今回の算数クラブ講座でよい刺激を与えて頂けたことに
感謝しております。
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