即席の足跡《CURIO DAYS》

毎日の不思議に思ったことを感じるままに。キーワードは、知的?好奇心、生活者発想。観る将棋ファン。線路内人立ち入り研究。

遠山雄亮論

2008年06月15日 18時39分25秒 | 将棋
先日の棋聖戦第一局、佐藤棋聖が先勝しました。
梅田望夫さんリアルタイム観戦記
いろいろ取り上げられていますが、素晴らしかったですねえ。

「観戦記」、というものの既成概念が変わりました。(棋聖戦だけに

脈々と続いてきた、観戦記というイメージ、
それが、一気に無限の可能性や広がりを感じさせてくれました。
(観戦記に関する可能性のこと、後日書こうと思っています。)

さて、梅田さんの本。

先日、群集の叡智という記事も書きましたが、今日も取り上げます。

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書 687)
梅田 望夫
筑摩書房

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この梅田望夫さんの本の中でも大絶賛されている若手棋士、遠山雄亮四段

梅田さんは、遠山四段のことをこう評しています。

遠山四段との具体的な関わりの中で、すべて具体例を挙げて

進取の気性に富む・積極性・自己表現欲求・広い問題意識・高速道路の外の世界への関心・情報収集力・行動力・積極性・勇気・スピード感・常識・明るさ・素直さ・人に好かれる性格・コミュニティリーダーシップ・段取り力・コミュニケーション能力・気遣い・優しさ・柔軟性・反射的にものごとを決める力

を備えた人物としています。

そして、この素養のひとつひとつが
「けものみち力」の要素であるとしている。

「けものみち力」とは、高速道路を降りてから、
誰も通ったことのない道標もない道を、
自力で自由にパワフルに切り拓いていく力。
言い換えると、
人間としてごく常識的で、少し積極的に日常を丁寧に生きること、とある。

将棋の事で言えば、
将棋と将棋以外の異質なものを組み合わせる様々な営みにいける「人間の総合力」。

先日の名人戦大盤解説会に行って、初めて遠山四段にお目にかかったわけですが、
すっかりこの人のファンになりました。

まず、(梅田さんが「観戦記」のイメージを変えてくれたように、)
従来の「大盤解説会」というイメージを変えてくれました。

初めてとのことですし、新聞社の解説会はどんな層の人が来てるのか読みにくいということもあったようですが、終始指し手の解説を淡々としていく、という従来の解説会のイメージを完全に打破していました。

こんなにエネルギッシュに、絶え間なくしゃべるものなのか。
そして、わかりやすい。論理的。引き込まれる。楽しい。

ある意味、エンターテインメント。

遠山四段のブログのコメントを見ても、皆さん大好評のようでしたし、今までの解説会と満足度が明らかに違うと思います。

「遠山四段ブランドのスペシャル解説会」ですね。

いや、もっと言えば、「名人戦トークショー」、とも言えるくらい。

シャンハイさんからコメントいただきました。
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私も朝日新聞社の解説会にいました。隣席の人が解説が始まってまもなく、遠山四段に対して「漫才はそれくらいにして、早く将棋に入って」と言ったので、主催者に対しても遠山四段に対しても何て失礼な奴だと思いました。
私もここにあるように、いい解説だったと思います。
---------------------------------------- 

僕はちょっと遅れて行ったので知らなかったんですが、こんなことあったんですね。
まあ、こういうのもある意味今までの解説会のイメージで、インタラクティブ、ということが、カジュアルでもあり、とっつきやすいということもあるのでしょう。

僕が行ってからも、結構ちゃちゃ入れる人はいて、遠山四段はうまーく気を悪くさせないよう、受け流していました。
(以前行った大盤解説会は、かなり話しかけるファンが多くて、そんなの今じゃなく、後で個別にゆっくりやってよ、って感じだった。)

休憩の時、思い切って話しかけてしまいました。
『いつもブログでお世話になっているnanaponです。』
『あー、そうですか。』満面笑みで。『いやあ、うれしいです。いつもありがとうございます。』

そんなに嬉しがってくれるプロ棋士っているでしょうか?

びっくりしました。

ほんと、さわやかな好印象。

ざっくり言うと、
「こちら側の人」っていう感じでした。

僕らファンの気持ちをわかってくれる人。
同じ感覚を持っている人。

今までの棋士のイメージは、気難しい、とか、とっつきにくい、とか、敷居が高い、というイメージがあったけど、そんな感覚、つまり、あちら側のイメージがまるでない。(僕が古いかもね。)

解説の中で、
「こんな名棋士二人の戦いというのは、
ダルビッシュと涌井の投げ合いのようなもので、
どこかで一点入れたら勝ちになる。
その一点をどうやって取るか。
それが試合を決めることになる。」

なんていう例を挙げていた。

こういう話、わかりやすいんだよね。
渡辺竜王が『頭脳勝負―将棋の世界』で言ってたように、スポーツと同じように将棋を楽しむ。

ツボが同じ。
比喩のわかりやすさとか、笑いのツボとか、共感、共有できる。

頭の回転がいい(当たり前か!)し、明るいし、腰が低いし、真面目だし。

梅田さんをして、あれだけ本に取り上げたくなった所以がよくわかる。

いろんな人が書いてるけど、何よりも関心したのは、

「サービス精神」、ということ。

いかにして、歴史ある名人戦の大舞台の重みを、熱戦を伝えるか。
伝えられるか。

その事に対して、自分でできる精一杯の戦いを繰り広げている。

対局もそうだろうけど、それと同じくらい(質は違うだろうけど)の真剣勝負

大勢のファンにきちんと十分伝えられれば、遠山四段の勝ち。

消化不良で帰らせたら、負け。

将棋の素晴らしさ、奥深さ、醍醐味を伝えようとする熱意を、こんなに感じさせられた解説会は正直初めてでした。

遠山四段については、過去、ブログを通じていろんなやりとりがありました。
僕の記事を紹介してくれたり、コメントやTBいただいたりもしました。

かなり前ですが、棋界について、当然期待を込めてですけど、こんな記事書きました。
斜陽産業にしないために
棋界への期待
違和感

そして、いろいろ難しい局面に対して、きちんと自分の意見を述べた遠山四段に向けて、ラブレターのような

《親愛なるファニースペース様》
という記事も書きました。

人間としてごく常識的で、少し積極的に日常を丁寧に生きること。
将棋と将棋以外の異質なものを組み合わせる様々な営みにいける「人間の総合力」。

梅田さんが指摘している、この「けものみち力」を備えた遠山四段。

まだまだ様々な課題を抱える将棋界について、
常に問題意識や危機感を持ち、自分の意見を持って(述べて)、
若手の力でしかできないような新機軸を打ち出していってほしいです。

将棋の明るい未来に向かって、誰も歩いたことのない「けものみち」
しっかりと切り拓いて行ってほしいと願っています。
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4 コメント

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どうも私は・・・ (振られ飛車)
2008-06-17 22:12:38
以前コメントをしたら、けんもほろろの対応をされたので、彼のどこが評価できるのやら。
返信する
あらま。 (nanapon)
2008-06-20 16:00:13
振られ飛車さん、こんにちは。

相変わらず、カライですねえ。(笑)

けんもほろろの対応?

そうなんですか。
まあいろんな見方があるのでしょうけどねえ・・・・。
返信する
けんもほろろの訳 (振られ飛車)
2008-06-22 22:43:46
週間将棋には出身市町村まで書かれていて、周知の事実だと思っていたのですが、昨年夏の地震の際に、故郷が心配ではないかと書くと、プライベートに関することは書かないようにと、木で鼻をくくったコメントが帰ってきました。連盟HPにさえ、出身県が書かれているのに。
以来、たかが予断で濃い綱にさまだ、もとい、たかが四段でこいつ何様だ、と思っています。
返信する
予断を許さない (nanapon)
2008-06-29 13:27:13
振られ飛車さん、こんにちは。

そうでしたか。そんなことが・・・。うーん。

>たかが予断で濃い綱にさまだ、
もとい、たかが四段でこいつ何様だ

これ、受けました。
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